ペル・メル (ロンドン)

パル・マル：ロンドンの歴史と風格を語る通り

ロンドン中心部、シティ・オブ・ウェストミンスターのセント・ジェームズ地区に位置するパル・マルは、トラファルガー広場とセント・ジェームズ・ストリートを繋ぐ、歴史と風格に満ちた通りです。その名は、17世紀に盛んに行われていた球技「ペルメル」に由来します。日本語では「ペルメル」と表記されることもありますが、ここでは「パル・マル」を使用します。

歴史：王室と上流階級の社交場から現代へ

パル・マルの歴史は、チャールズ2世の治世にまで遡ります。17世紀、王室の支援のもと、この地区は高級住宅街として開発されました。18世紀には上流階級の買い物客でにぎわい、19世紀には数多くの紳士クラブが設立され、社交の中心地として発展しました。トラヴェラーズ・クラブ、アシーニアム・クラブ、リフォーム・クラブなど、現在も存続する由緒あるクラブは、パル・マルの歴史と格式を象徴しています。19世紀後半には戦争省もこの地に本部を構え、さらに1908年には王立自動車クラブも加わりました。

パル・マルが現在の姿になったのは1661年、それ以前には、ヘイマーケットからセント・ジェームズ宮殿に至る幹線道路がやや南側にありました。歴史的な調査では、この場所にはサクソン人の時代から道があったと推測されており、12世紀には聖ジェームズ病院のハンセン病療養所と関連した記録も残されています。ヘンリー8世がセント・ジェームズ・パークを作った際、道の南側に公園の境壁が建設され、その後、貧しい人々の居住地が撤去され、現在の通りの整備が始まりました。

17世紀初頭、フランスやスコットランドで既に人気だった球技「ペルメル」がイングランドに伝来しました。ジェームズ1世、そしてその息子であるヘンリーやチャールズもこのゲームを楽しんだと伝えられています。1630年にはセント・ジェームズ・フィールドにロンドン初のペルメル競技場が完成しました。チャールズ2世のロンドン帰還後、セント・ジェームズ・パークの南壁沿いに新しい競技場が建設されましたが、通行する馬車の塵などに悩まされた結果、1661年7月には新しい道路が作られ、古い道は閉鎖されました。この新しい道路が現在のパル・マルです。当初は「キャサリン・ストリート」と呼ばれましたが、一般的には「パル・マル・ストリート」や「オールド・パル・マル」として知られていました。

1662年には道路の改修が行われ、古い建物が取り壊され、新しい建物が建設されました。セント・オールバンズ伯爵は、セント・ジェームズ・スクエアや周辺の通りを整備し、セント・ジェームズ地区の発展に貢献しました。パル・マルは、セント・ジェームズ宮殿やホワイトホール宮殿、国会議事堂にも近く、非常に便利な立地であったことから、急速に発展していきました。

17世紀から18世紀にかけて、パル・マルには多くの商店や華麗な住宅が建ち並びました。時計職人であるヴリアミー家、書店のロバート・ドッズリー、作家や芸術家など、著名な人々がこの地に暮らしました。1807年にはロンドンで初めてガス灯が設置され、街を明るく照らしました。1814年から1818年には東端が拡張され、さらに、多くの紳士クラブが設立されました。

19世紀から20世紀初頭にかけて、パル・マルは紳士クラブの街として知られるようになりました。トラヴェラーズ・クラブ、アシーニアム・クラブ、リフォーム・クラブなど、多くの著名なクラブがここに集まりました。これらのクラブは、イギリス社会の上流階級が集う場所として、重要な役割を果たしていました。

パル・マルは、一時、ロンドンの芸術の中心地でもありました。ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ナショナル・ギャラリー、クリスティーズなどが、この通りに集まっていました。しかし、戦争省が移転した後は、芸術の中心地としての役割は薄れていきました。

建物の移り変わり：歴史的建造物と近代建築

パル・マルには、歴史的な建造物と近代建築が共存しています。ションバーグ・ハウス、バッキンガム・ハウスなどの歴史的建造物は、当時の建築様式を今に伝えています。一方で、20世紀には新しい建物も建設され、歴史と現代が調和した街並みを作っています。経営者協会の本部ビルや、ミッドランド銀行の支店など、優れた建築デザインの建物も存在します。

パル・マルの文化：文学作品への登場と現代の生活

パル・マルは、多くの文学作品にも登場します。ウィリアム・メイクピース・サッカレー、ヘンリー・B・ホウィートリー、オスカー・ワイルドなど、著名な作家たちが、パル・マルを舞台にした作品を発表しました。また、イギリス版のモノポリーにもパル・マルが登場し、ゲームを通じて、この通りの知名度をさらに高めています。コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズにも、パル・マルにある架空の紳士クラブ「ディオゲネス・クラブ」が登場します。

今日、パル・マルは、かつての輝きを失うことなく、歴史と現代が共存する洗練された街として、ロンドンの魅力を象徴する通りの一つであり続けています。高級住宅やクラブ、そして歴史的建造物が立ち並ぶ様子は、訪れる人々に、豊かな歴史と洗練された雰囲気を感じさせます。

もう一度検索