ホウボウ

ホウボウ

ホウボウ（学名: Chelidonichthys spinosus）は、スズキ目ホウボウ科に属する海水魚で、その独特な外見と動きが特徴です。美味しい食用魚でもあり、特に旬は冬です。

分布・生息域

ホウボウは日本海の北海道南部から南シナ海、さらには東シナ海や黄海に至る広範囲に分布しています。これらの魚は、主に水深100-200メートルの砂泥底を好みますが、時には水深600メートルの深海にも生息することがあります。

形態

ホウボウは、日本近海に生息するホウボウ科の魚の中で最大の種であり、全長40センチメートルに達します。特徴的な円錐形の体を持ち、頭部は大きく、尾に向かって細長くなります。その腹面は白色ですが、背面には灰褐色と赤のまだら模様があります。

頭は堅い骨板に覆われ、先端が尖った鼻の下に大きな口が開いています。この魚の胴体は、細かい鱗で覆われており、触れるとザラザラとした感触があります。

ホウボウの胸びれは半円形で大きく、美しい青緑色をしており、青い縁取りと斑点が飾りつけられています。この胸びれのうちの1対、すなわち下の軟条の3対は赤色を帯び、発達しており、これを脚のように使って砂底を「歩く」ことができます。また、腹びれも三角形で大きいですが、胸びれの直下に位置するため目立たない存在です。

背びれは二つあり、前方のものは尖っており、後方のものと臀びれは長方形をしています。尾びれは三角形で、青い縁取りがあります。ホウボウの体型はまるで飛行機や昆虫のようで、その鮮やかな色合いが魅力的です。

浮き袋の役割を果たす部分からはグーグーという音を発して鳴くことができ、「ホウボウ」という名はこの鳴き声に由来すると言われています。さらに、ホウボウは甲殻類などと同様に脱皮を行うことがあり、脱皮の数日前には絶食することがあります。

生態

ホウボウは遊泳時に胸びれをたたみ、体をくねらせて泳ぎますが、獲物を探す際には胸びれを広げ、変形した胸びれを使って砂泥底を歩きます。胸びれの軟条の先端で味を感じることができ、砂に潜った獲物を捜索します。ホウボウは肉食性で、エビやカニ、小魚などを大きな口で捕食します。

繁殖期は春で、卵はプランクトンとして浮遊する浮性卵を産み、数日後には孵化します。孵化した仔魚も一時的に浮遊し、他のプランクトンを食べながら成長し、その後海底で生活を始めます。幼魚の頃は全身が黒色ですが、成長につれて体は赤っぽく変わり、胸びれは緑色に変化します。

ホウボウに似た魚としてカナガシラがいます。カナガシラの鱗も小さく細かいものが多いですが、ホウボウの鱗と比較してより細かく、胸びれの色彩も異なり、より鮮やかな色合いをしています。

日本での利用

ホウボウは冬に旬を迎え、日本では主に底引網や釣りで漁獲されます。ルアーでも釣ることが可能です。カナガシラなどと比較して歩留まりは少ないものの、頭部が小さく、身の多さで優れています。

その肉は白身魚ですが生で食べると薄いピンク色を呈し、旨味としっかりとした歯ごたえを持つ美味しい魚です。ホウボウは刺身や煮付け、から揚げ、塩焼き、鍋料理、干物など多様な料理法で楽しむことができます。また、身以外にもアラからは良質な出汁が取れ、肝や心臓、発達した浮き袋も食用にされます。

別名

ホウボウには「キミ」や「カナガシラ」といった別名があります。地方によっては「ドコ」とも呼ばれます。体が堅い骨で覆われることから「金頭」という名前もついています。英語では「Searobin」という名称が使われ、中東では「タイヤール」と呼ばれることもあります。

近縁種

ホウボウ科の魚は熱帯から温帯の若干深い海に広く分布し、約140種が存在します。日本近海ではホウボウ属の種類は少ないものの、カナガシラ属やソコホウボウ属の魚が多く見られます。これらの魚も底引網で広く漁獲されており、食用として利用されています。小型のホウボウは蒲鉾などの魚肉練り製品の原料としても重宝されています。

• - カナガシラ（学名: Lepidotrigla microptera）: 全長約30センチメートルで、口先には2本の短い棘が特徴です。
• - ソコホウボウ（学名: Pterygotrigla hemisticta）: 同じく全長約30センチメートルで、口先に棘があり、深い海に生息します。
• - タブ・ガーナード（学名: Chelidonichthys lucernus）: 大西洋東岸の赤道以北に分布しています。

関連項目

• - 魚の一覧

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