ボンバルディア CRJ

ボンバルディア CRJシリーズ：リージョナルジェットの先駆け

ボンバルディアCRJ（Canadair Regional Jet）シリーズは、カナダのボンバルディア・エアロスペース社が製造していた双発ジェット旅客機のファミリーです。50席から100席程度の小型ジェット機で、地域航空路線向けに開発された初めての「リージョナルジェット」として、航空業界に大きな影響を与えました。ここでは、その開発の経緯、各モデルの特徴、運用の現状、そして近年の動向について詳しく解説します。

開発の経緯：ビジネスジェットからの転換

CRJシリーズの開発は、1980年代後半に、当時のカナディア社（現ボンバルディア社）がビジネスジェット機「チャレンジャー600」の設計を基に、より経済的で実用的な小型ジェット旅客機を製造しようとしたことから始まりました。当初、地域航空路線ではターボプロップ機が主流でしたが、路線の拡大と需要の増加に伴い、より高速で静粛性の高いジェット機の需要が高まっていました。そこで、チャレンジャー600の胴体断面を流用し、新規設計の主翼を組み合わせることで、開発費を抑えつつ、リージョナルジェットとしての性能を備えたCRJ100が誕生しました。1991年5月10日に初飛行し、1992年11月にルフトハンザ・シティーラインで初就航しました。

CRJ100/200：初期モデルの登場

最初のモデルであるCRJ100は、50席の標準座席数を持つ小型ジェット機です。その後、エンジンを改良したCRJ200が登場し、燃費や性能が向上しました。この2機種は、初期のリージョナルジェット市場を牽引し、ボンバルディア社を世界的な航空機メーカーへと押し上げる原動力となりました。

CRJ700：胴体延長による大型化

市場の需要に応え、CRJ100/200の胴体を延長したCRJ700が開発されました。客席数を70席程度に増やし、より多くの乗客を輸送できるようになりました。客室環境の改善や床下荷物室の確保も行われ、より快適な空の旅が提供されるようになりました。

CRJ900：さらなる大型化

CRJ700をさらに大型化したCRJ900は、90席クラスの機体として登場しました。CRJ700と同様に、胴体の延長やエンジンの強化が行われ、より長距離の路線にも対応できるようになりました。

CRJ1000：最大モデルの投入

CRJファミリーの中で最大のモデルとなるCRJ1000は、100席クラスの機体です。CRJ900をベースに、胴体延長や主翼の拡大などが行われ、より多くの乗客を輸送できるようになりました。CRJ1000は、NextGen（次世代）モデルとして投入され、最新の技術が導入されました。

機体の特徴

CRJシリーズは、低翼配置の後退翼とT字尾翼を持つ双発ジェット機で、主翼端にはウイングレットが装備されています。客室は通路が1本のナローボディ機で、エコノミークラスでは2+2席、ビジネスクラスでは1+2席の座席配置です。乗降ドアは機体前方の左舷にあり、階段が内蔵されています。コックピットは、ロックウェル・コリンズ社のシステムを採用したグラスコックピットで、各種操縦システムが搭載されています。

ファミリー構成・派生型

CRJファミリーは、胴体長の長さで4つの主要モデルに分けられます。それぞれに派生型があり、航続距離や座席数などが異なります。

CRJ100/200: 標準座席数50席の小型機。CRJ200には航続距離を延長したER型やLR型、貨物型も存在する。
CRJ700: 70席クラスの中型機。座席数や航続距離に応じて複数のバリエーションがある。
CRJ900: 90席クラスの中型機。CRJ700をベースに胴体延長したモデル。
CRJ1000: 100席クラスの大型機。CRJファミリーで最も大きなモデル。

運用の状況・特徴

CRJシリーズは、主に北米や欧州の地域航空会社で運用されています。小需要路線や短距離路線で活躍し、大手航空会社の路線網を補完する役割を果たしています。特に、アメリカ同時多発テロ事件後、リージョナルジェットの需要が拡大し、CRJシリーズはその市場で重要な地位を占めました。

2018年末時点の統計によると、1,265機のCRJファミリーが運用され、その約7割が北米の航空会社で運用されています。日本でも、ジェイエアやアイベックスエアラインズが導入しましたが、すでに退役しています。

三菱重工業への事業移管とその後

2020年6月1日、ボンバルディアはCRJ事業を三菱重工業に売却し、新会社MHIRJが保守管理及びカスタマーサポートを引き継ぎました。CRJシリーズの製造は2021年2月に終了しましたが、MHIRJはMRO（メンテナンス・リペア・オーバーホール）事業を展開し、CRJシリーズの運航をサポートしています。製造再開の可能性も一部で指摘されましたが、MHIRJは否定的な見解を示しています。

主な事故・事件

CRJファミリーは、2019年6月までに25件の機体損失事故が発生しています。そのうち、死者を伴う事故はCRJ100/200のみで16件発生し、164人が死亡しています。主な事故としては、1993年の訓練飛行中の墜落事故、2004年のピナクル航空3710便の墜落事故、2006年のコムエアー5191便の離陸失敗事故などがあります。

まとめ

ボンバルディアCRJシリーズは、リージョナルジェットの先駆けとして、航空業界に大きな影響を与えました。その開発経緯、各モデルの特徴、運航状況、そして三菱重工業への事業移管に至るまで、様々な変遷を経てきました。現在は製造が終了していますが、その歴史は今後も語り継がれるでしょう。

主要諸元（代表的なモデル）

CRJ200: 座席数：50席、全長：26.77m、全幅：21.21m
CRJ700: 座席数：70席、全長：32.31m、全幅：23.24m
CRJ900: 座席数：90席、全長：36.20m、全幅：24.85m
CRJ1000: 座席数：100席、全長：39.24m、全幅：26.07m

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