ポティファル

ポティファルとは

ポティファルは、旧約聖書の創世記に登場するエジプト王宮の近衛隊長です。彼の名前は、ヨセフとの関わりにおいてのみ言及されます。本記事では、ポティファルの妻についても併せて解説します。この妻は聖書やキリスト教の伝統の中で名前が明示されていません。

物語の概要

ヨセフは、兄弟たちの策略によりエジプトで奴隷として売られ、ポティファルの家で働くことになりました。ポティファルはヨセフの能力を認め、彼を下僕の長に任命します。しかし、ポティファルの妻はヨセフに性的誘惑をかけ、拒絶されると激怒し、彼が自分を犯したという虚偽の訴えをしました。ポティファルは妻の言葉を信じてヨセフを投獄しますが、後にファラオがヨセフの夢解釈の能力を認め、彼を釈放します。その後、ヨセフはエジプトの宰相に任命され、ツァフェナト・パネアという名を与えられ、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトと結婚します。このポティ・フェラは、ポティファルと同一人物であるという説もあり、その場合、ヨセフは冤罪によって投獄された原因を作った女性の娘と結婚したことになります。

中世のトーラーの解説書『セフェル・ハヤシャル』では、ポティファルの妻の名前は「ズレイカ」とされています。この名前は、イスラムの伝統やペルシアの詩『ユスフとズレイカ』でも同様に使われています。

この物語は、ルネサンスやバロック時代に芸術作品の題材として広く用いられました。特に、ポティファルの妻が裸に近い姿でベッドに横たわり、そこから逃れようとするヨセフの姿が頻繁に描かれています。ペルシアのミニチュアでは、ジャーミーの『七つの王座』から『ユスフとズレイカ』を題材としたものが多く見られます。

語源

ポティファル（Potiphar、ヘブライ語: פוטיפר）は、「ラーに与えられし者」という意味を持つ「ポティフェラ」（Potiphera）の短縮形です。これは、「神の贈り物」を意味する「テオドア」（Theodore）のような名前と構造的に似ています。

宗教的影響

ヨセフとポティファルの正確な生きた年代を特定するのは困難ですが、ユダヤ暦ではヨセフが紀元前1544年に買われたとされており、これはエジプト第2中間期の終わりか、新王国の初期に当たると考えられます。この物語が記されているトーラーは、紀元前600年頃、バビロン捕囚中に書かれたとされています。文書仮説によれば、ポティファルと妻の物語はヤハウィスト資料に記録されており、エロヒスト資料では、使用人、パン職人、ファラオの夢に関する記述が対応する箇所に記載されています。

G.J.ウェンハム博士によると、当時、強姦罪に対する刑罰は通常死刑であったため、ポティファルがヨセフを死刑にしなかったことは、妻の証言に疑念を持っていた可能性を示唆しています。

文化的影響

美術の世界では、この物語は女性の権力を象徴する題材として頻繁に用いられます。

ダンテの『神曲』では、ポティファルの妻の魂は地獄の第九圏に存在するとされています。彼女自身は何も語りませんが、ダンテは偽証罪を犯した他の魂から、彼女が永遠に熱に焼かれる罰を受けていることを知ります。

映画『メイトワン』では、ウィル・オールダムが、小さな町でポティファルの物語を説教する若い牧師を演じています。

アンドルー・ロイド・ウェバーのミュージカル『ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』では、ポティファルは古代エジプトの有力者として描かれ、妻は魅惑的な人食い女として登場します。

トーマス・マンの小説『ヨセフとその兄弟』では、ポティファルの妻が性的欲求不満を抱えていた理由として、ポティファルが去勢されていたことが挙げられています。

ギャラリー

ヨセフとポティファルの妻を描いた絵画が多数存在します。これらの作品は、物語のドラマチックな瞬間を捉え、美術史において重要な位置を占めています。

(ギャラリーの画像へのリンクや具体的な絵画のリストは省略)

脚注

(実際の脚注は省略)

参考文献

* The Hebrew Pharaohs of Egypt, Ahmed Osman, Bear & Co. 1987

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