ポリオワクチン

ポリオワクチンとは

ポリオワクチンは、ポリオウイルスの感染によって引き起こされる急性灰白髄炎（脊髄性小児麻痺）を予防するためのワクチンです。ポリオウイルスは、主に小児に感染し、麻痺を引き起こす可能性があります。重症化すると呼吸困難となり、生命に関わることもあります。

ポリオワクチンの種類

ポリオワクチンには、以下の2種類があります。

不活化ポリオワクチン（IPV）: 不活化されたポリオウイルスを注射するワクチンです。免疫を獲得し、ポリオウイルスによる感染を防ぎます。
経口生ポリオワクチン（OPV）: 弱毒化された生きたポリオウイルスを投与するワクチンです。腸管免疫と全身免疫を誘導し、集団免疫の獲得に優れていますが、まれにワクチン株による麻痺を引き起こす可能性があります。

ポリオワクチンの歴史

1952年、ジョナス・ソークによって初のポリオワクチン（IPV）が開発され、1955年に実用化されました。その後、アルバート・サビンによって経口生ポリオワクチン（OPV）が開発され、1962年に認可されました。これらのワクチンによって、世界中でポリオの患者数が激減しました。

ポリオウイルスの特徴

ポリオウイルスは、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に属するRNAウイルスです。経口感染し、咽頭や小腸で増殖した後、リンパ節を介して血液中に入り、脊髄の中枢神経系に達して運動ニューロンを破壊することで麻痺を引き起こします。

ポリオワクチンの接種対象と方法

日本では、不活化ポリオワクチン（IPV）が定期接種として推奨されています。生後3か月から接種を開始し、4回の接種を行います。海外では、経口生ポリオワクチン（OPV）が使用されている地域もあります。

ポリオ根絶に向けた取り組み

ワクチン接種の普及により、世界のほとんどの地域でポリオは根絶されました。1988年には35万件発生していたポリオ患者は、2012年には223件にまで減少しました。現在も、世界保健機関（WHO）を中心に、ポリオ根絶に向けた取り組みが続けられています。

日本におけるポリオ

日本においては、1960年代にポリオが大流行しましたが、ワクチン接種の普及により患者数は激減しました。1980年以降、国内での野生株ポリオウイルスの感染は確認されていません。

ポリオワクチン接種の注意点

ポリオワクチン接種後、まれに発熱や注射部位の腫れなどの副反応が起こることがあります。経口生ポリオワクチン（OPV）の場合、まれにワクチン株による麻痺を引き起こす可能性があります。

まとめ

ポリオワクチンは、ポリオウイルス感染による麻痺などを予防する効果的なワクチンです。ワクチン接種の普及により、世界中でポリオ根絶が進んでいます。日本においては、不活化ポリオワクチン（IPV）が定期接種として推奨されています。

参考資料

加藤 達夫『『予防接種マニュアル』』株式会社新興医学出版社、2006年。ISBN 4-88002-481-3。
神谷茂、高橋秀実、林英生、俣野哲朗、池田 和博『『ブラック微生物学 第3版』』丸善出版、2014年。ISBN 978-4-621-08813-5。

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