マカク属

マカク属

マカク属（学名：Macaca）は、哺乳綱霊長目オナガザル科に属するサルの一群です。「マカク」という名称は、もともとアフリカの言葉でサルを指す言葉に由来し、ポルトガル語を経て広まったとされています。

分布

この属に属するサルは、アフリカ大陸の北西部、ユーラシア大陸の南部、そしてインドネシアやスリランカ、日本といった島嶼部にかけて、非常に広範囲に生息しています。バーバリーマカク（M. sylvanus）を除けば、主にアジア地域に分布しているのが特徴です。特に日本に生息するニホンザル（M. fuscata）は、ヒトを除いた現生の霊長類の中では、最も北限に生息している種として知られています。

形態

マカク属のサルは、体つきがしっかりとしており、比較的細長い胴体を持っています。頬の内側には「頬袋」と呼ばれる袋状の構造があり、ここで一時的に食物を溜め込んでから安全な場所で食べるというユニークな習性が見られます。四肢に関しては、前足よりも後足の方が長い傾向があります。また、親指が他の指と向き合う「対向性」を備えており、これは物をつかんだり、木の上を巧みに移動したりする上で非常に有利に働きます。さらに、生まれたばかりのオスの子供は、内部が空洞になった大きな陰嚢を持つという特徴的な形態を示します。

起源と分類

マカク属の起源は、アフリカ大陸北部にあると考えられています。スペインの中新世後期の地層からはバーバリーマカクのものとされる化石が見つかっており、鮮新世にはイギリス南東部を含むヨーロッパの広い範囲に生息していたと推測されています。また、インドネシアの更新世の地層からは、カニクイザル（M. fascicularis）やブタオザル類（M. nemestrina, M. leonina）のものと思われる化石が出土しています。現在の多くのマカクの種は、ユーラシア大陸へ進出した後、東へと移動し、鮮新世以降に多様化・分化したとする学説も存在します。

現生種の分類にはいくつかの見解があります。オスの特定の形態に基づいて、シシオザル-バーバリーマカク群（silenus-sylvanus）、トクモンキー群（sinica）、カニクイザル群（fascicularis）、ベニガオザル群（arctoides）の四つの種群に分類する見解もあります。その一方で、分子系統解析、すなわち遺伝子レベルでの分析からは、バーバリーマカクをアジア産現生種との共通祖先から比較的早い段階で分岐した種とし、ベニガオザルをトクモンキー群に含める考え方がより有力視されています。ベニガオザル（M. arctoides）については、Y染色体とミトコンドリアDNAで異なる種群に位置付けられることから、トクモンキー群とカニクイザル群の雑種が起源となった可能性も指摘されています。

現在、マカク属にはニホンザル、アカゲザル、カニクイザル、タイワンザル、シシオザル、ベニガオザルなど、非常に多岐にわたる種が含まれています。その正確な分類や和名・英名については、専門機関によってリストが作成・更新されています。

人間との関係

マカク属のサルたちは、開発や家畜の放牧による生息環境の破壊、あるいは人間による狩猟、さらに農作物などへの被害を防ぐための駆除といった様々な要因により、数を減らしている種も少なくありません。

日本国内では、このマカク属全体が、人に危害を加えうる危険な動物として「特定動物」に指定されています。ただし、アカゲザル、カニクイザル、タイワンザルについては、日本の生態系へ影響を与える可能性が懸念されることから、「特定外来生物」にも指定されており、これらの種の飼養や保管、運搬などにはより厳格な規制が設けられています。

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