マクシム・ゴーリキー級巡洋艦

マクシム・ゴーリキー級巡洋艦

マクシム・ゴーリキー級巡洋艦は、ソビエト連邦海軍が1930年代後半に建造した軽巡洋艦の艦級です。ソ連海軍の計画名は「26-bis型軽巡洋艦」であり、前級のキーロフ級の設計を基に、様々な改良が施されました。

概要

本級は、ソ連海軍の1937年度計画に基づき、「マクシム・ゴーリキー」と「モロトフ」の2隻が最初に建造されました。その後、1938年の第三次五カ年計画において、「カリーニン」と「カガノーヴィチ」の2隻が追加され、計4隻が建造されました。前級であるキーロフ級の運用経験で明らかになった問題点を解消するため、大小様々な設計変更が加えられています。

外観

船体形状は、前級と同様に短船首楼型を採用しています。バルト海での運用を考慮し、砕氷構造を持つ艦首が特徴です。これは、冬に流氷に閉ざされる海域での航行を可能にするための設計です。主砲は、18cm速射砲を三連装砲塔に収め、艦首甲板上に背負い式で2基配置されています。2番主砲塔の後方には、司令塔を組み込んだ操舵艦橋があります。この艦橋は、前級で問題となった冷気流入を避けるため、近代的な円筒形の塔型に改設計されました。艦橋の上部には2段の見張り所が設けられ、頂上部には測距儀と射撃方位盤が配置されています。艦橋形状の変更に伴い、前部マストは簡素な三脚式に変更され、1番煙突の前に立てられています。

機関配置は、ボイラーとタービンを交互に配置する「シフト配置」を採用しています。これにより、2本の煙突の間隔が広くなりましたが、このスペースは水上機施設として活用されています。中央部には水上機射出用のカタパルトが1基、両舷には艦載艇と53.3cm三連装魚雷発射管がそれぞれ1基ずつ配置されています。水上機と艦載艇は、1番煙突の左右に設置されたクレーンによって揚収されます。副武装として搭載された10cm高角砲は、爆風避けのカバーが付いた単装砲架で、2番煙突の脇に片舷3基ずつ、計6基が配置されています。2番煙突の後方にはシンプルな三脚式の後部マストが設置され、後部甲板には3番主砲塔が後向きに1基配置されています。

武装

主砲

主砲には、前級に引き続き「B-1-P Pattern 1932年型 18cm（57口径）速射砲」が採用されました。この砲は、97.5kgの砲弾を仰角45度で37,800mまで届かせることができます。3門の砲を1つの砲塔に収めた三連装砲塔に搭載されています。全門を同時に発射する全門斉射しかできませんでした。砲身の間隔が狭いために、砲弾同士が干渉し、散布界が広がるという欠点がありました。砲塔の俯仰能力は、仰角48度、俯角4度であり、3門同時に上下します。旋回角度は、船体首尾線方向を0度として左右180度ですが、実際には上部構造物によって射界が制限されていました。発射速度は毎分5.5発です。

高角砲、その他の備砲

高角砲には、新設計の「1934年型 10cm（56口径）高角砲」が採用されました。この砲は、15.6kgの砲弾を仰角45度で24,000m、最大仰角85度で高度14,000mまで到達させることができました。旋回と俯仰は電動と人力で行われ、左右方向に176度旋回、仰角85.5度、俯角5.5度が可能で、発射速度は毎分16発でした。単装砲架で片舷4基、計8基搭載されました。ただし、「カリーニン」と「カガノーヴィチ」は、「8.5cm（52口径）高角砲」を単装砲架で8基搭載していました。高角砲を補助するために、「1941年型 4.5cm（46口径）高角機関砲」も採用されました。この砲は、3.45kgの砲弾を仰角45度で9,500m、最大仰角85度で高度6,000mまで到達させることができます。旋回と俯仰は人力で行われ、仰角85.5度、俯角10度で360度旋回が可能でしたが、実際には射界に制限がありました。発射速度は毎分25～30発でした。これを単装砲架で6基装備しました。さらに、新設計の「1939年型 3.7cm（67口径）機関砲」も採用されました。この砲は、1.8kgの砲弾を仰角45度で8,000m、最大仰角85度で高度6,000mまで到達させることができました。旋回と俯仰は人力で行われ、仰角85.5度、俯角10度で360度旋回が可能でしたが、実際には射界に制限がありました。発射速度は4.5cm機関砲の約3倍となる毎分100発でした。これを単装砲架で10基搭載しました。さらに、主砲では対処できない敵に対して、53.3cm三連装水上魚雷発射管を2基装備していました。また、水路閉鎖用に機雷を60～96個搭載することもできました。

機関

機関配置は、前級と同じくシフト配置です。ヤーロウ式重油専焼缶6基とアンサルド式ギヤード・タービンを組み合わせ、機関出力は127,750hp、速力は36ノットを発揮しました。航続性能は、17ノットで4,880海里と計算されています。

同型艦

マクシム・ゴーリキー：名称はソ連の作家マクシム・ゴーリキーに由来します。
モロトフ：名称はソ連の政治家ヴャチェスラフ・モロトフに由来します。
カリーニン：名称はソ連の革命家ミハイル・カリーニンに由来します。
ラーザリ・カガノーヴィチ：名称はソ連の政治家ラーザリ・カガノーヴィチに由来します。

脚注

関連項目

ソ連・ロシア海軍艦艇一覧
軽巡洋艦
重巡洋艦

参考文献

『世界の艦船』、1986年1月増刊号「近代巡洋艦史」、海人社

外部リンク

* Cruiser light 'Molotov' 26 бис (1937) 「モロトフ」のスペックがあるページ。

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