マツダ・グランドファミリア

グランドファミリア

グランドファミリアは、東洋工業（現在のマツダ）が1971年9月から1978年10月まで製造・販売していた小型乗用車です。当時好調だった「ファミリアプレスト」の発展形として計画されましたが、トヨタのカリーナや三菱のコルトギャランといった、既存のコンパクトカーとミドルクラスの中間を狙った車種が登場した背景を受け、プレストとひとつ上のクラスにあたる「カペラ」の間に位置するモデルとして独立投入されました。

マツダが「ロータリゼーション」を推進していた時期に開発されたモデルで、エンジン形式によって車名を分けるという戦略のもと、ロータリーエンジン搭載車の「サバンナ」と、レシプロエンジン搭載車の「グランドファミリア」という姉妹車体制で市場に投入されました。両車は基本的に共通のボディ構造を持ちながら、異なるブランドで展開されました。海外市場では、北米、オーストラリア、ニュージーランド向けに「マツダ・808」として、欧州などでは「マツダ・818」として輸出され、北米では後期モデルが「マツダ・マイザー」の名称でも販売されました。

車体と内外装

ボディタイプは、4ドアセダン、2ドアクーペ、5ドアバンの3種類が用意されました。このクラスとしては珍しく、2ドアセダンは設定されていませんでした。クーペモデルでは、後部サイドウィンドウが巻き上げ式であった点が特徴的です。車体自体はサバンナと同一ですが、外観では特にフロント部の意匠が差別化されており、サバンナが丸型4灯式ヘッドライトを採用していたのに対し、グランドファミリアは角型2灯式が標準でした（ただし、輸出仕様の一部には丸型4灯式を採用したグレードも存在します）。テールランプも角形デザインとされていました。

全長はフェリー積載料金を考慮し、4,000mmを切る3,995mmに設定されました。全幅は1,595mmでしたが、フェンダーの張り出しが大きかったため、室内空間は当時のコンパクトカーに比べてわずかに広い程度でした。内装はサバンナとほぼ共通で、ホーンボタンなどの細部を除いて大きな違いはありませんでしたが、サバンナの上級グレードに採用されていたT型インパネは、グランドファミリアではクーペの最上級グレードであるGFにのみ適用され、他のモデルはシンプルなセンターコンソールレス仕様でした。

エンジンと走行性能

当初搭載されたエンジンは、ファミリアプレストにも使われていた1,300cc直列4気筒SOHCガソリンエンジンで、レギュラーガソリン仕様ながら87馬力を発生しました。これにより、同クラスのライバルであるカリーナ1400やコルトギャラン14L、あるいは上級コンパクトカーのカローラ1400などに対抗しました。1,600ccクラスのニーズはサバンナが担っていました。

トランスミッションは4速フロアMTが基本でしたが、セダンには受注生産でコラムシフトも設定され、セダンLX/GLやクーペFX/GFでは3速AT「マツダスーパードライブ」も選択可能でした。サスペンションはフロントがストラット、リアがリーフリジッドという構造でしたが、サバンナとのシャーシ共通化のため、リアショックアブソーバーはバイアスマウントが採用されました。燃料タンクは標準で45Lでしたが、サバンナ用の65Lタンクをメーカーオプションで選ぶことができました。

モデルライフ中の改良

発売翌年の1972年には、ロータリーエンジンを好まない層向けのサバンナ的な位置づけとして、カペラ用の1,500cc直列4気筒SOHCエンジンを搭載する「Sシリーズ」が追加されました。セダンのトップグレードはサバンナGRに準じた装備を持つGLIIとなり、クーペもGFIIが設定されました。

1973年のマイナーチェンジではSシリーズが廃止され、新たに1,600ccエンジン搭載モデルが設定されました。この際に、レシプロエンジン搭載車としては初めて50年排出ガス規制に適合した「1600APシリーズ」が登場し、サバンナの10Aエンジン搭載車には設定がなかった5速MTモデルも追加されました。

1975年9月のマイナーチェンジでは、車両のイメージを一新するため、初期の角型ヘッドライトが丸型2灯に変更され、フロント周りのデザインが改められました。1,600ccモデルは51年排出ガス規制に適合し、翌1976年2月には1,300ccモデルも同規制適合を果たし「1300AP」となりました。

販売終了

1977年に姉妹車のファミリアプレストがハッチバックのファミリアAPへとモデルチェンジし、1978年にはサバンナもRX-7へと刷新された後も、グランドファミリアはトランクを持つ伝統的なセダンとして、保守的な顧客層向けに販売が続けられました。しかし、昭和53年排出ガス規制への対応が困難だったため、1978年10月、カペラのフルモデルチェンジと同時に販売を終了しました。これにより、マツダのラインアップからしばらくの間、ノッチバックの小型セダンが不在となりましたが、2年後の1980年9月には5代目ファミリアのセダンモデルである「ファミリアサルーン」が登場し、この空白期間が埋められました（ただし、この時期にもカペラやルーチェといった上位のセダンモデルは存在していました）。

歴代モデル (STC/SU4/SN3/4A型):

1971年9月 - 販売開始
1972年2月 - 1500Sシリーズ追加
1973年10月 - マイナーチェンジ。1500Sを廃止し、1600および1600APを追加
1975年9月 - マイナーチェンジ。丸型2灯ヘッドライト化、1600APが51年排出ガス規制適合
1976年2月 - 1300が51年排出ガス規制適合（1300APとなる）
1978年10月 - 販売終了

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