マハン級駆逐艦

マハン級駆逐艦は、アメリカ海軍が建造した駆逐艦の艦級であり、条約型駆逐艦として1935年から1937年にかけて18隻が建造されました。この艦級は、先行するファラガット級駆逐艦の設計を基に、いくつかの改良が加えられています。

概要

マハン級は、ファラガット級の欠点を修正し、1933年に計画されました。基本的な設計はファラガット級を踏襲しており、艦首楼型の船体や、38口径5インチ単装砲5門、21インチ4連装魚雷発射管2基などを装備しています。

船体・兵装・機関

船体はファラガット級よりわずかに幅が広げられ、両用砲の採用が可能になりました。しかし、ファラガット級と同様に、一番砲と二番砲のみが砲塔に収容されました。魚雷発射管は4連装が1基増設され、合計12門となりましたが、舷側に配置されたため、荒天時には使用が困難でした。機関はバブコック&ウィルコックス社製の新型を採用し、重量増を招きましたが、予熱器の装備により、馬力と燃費が改善され、ファラガット級と同等の航続距離を実現しました。

建造は1933年度計画艦16隻と1934年度計画艦2隻の計18隻です。1934年度計画艦は「ダンラップ級」とも呼ばれ、前檣が三脚檣から棒檣に、一番・二番砲の砲塔形状も密閉型に改良されています。

マハン級は性能面では良好でしたが、ファラガット級から続くトップヘビーの傾向は改善されませんでした。しかし、18隻という建造数は、広大な海域を守る必要のあるアメリカ海軍にとって重要な戦力となりました。

戦歴・兵装の変遷

マハン級は全艦が太平洋戦争に参加し、日本海軍との戦闘で多くの損害を受けました。真珠湾攻撃では3隻が損傷し、うち2隻が沈没後に修理され戦列復帰しました。その後、1942年にはタッカーが機雷で沈没、第三次ソロモン海戦ではカッシングとプレストンが撃沈、1943年にはパーキンスが衝突事故で沈没、1944年にはマハンとリードが特攻機により撃沈されました。最終的に6隻を失いました。

兵装の変遷としては、1942年からレーダーの搭載に伴い、三番砲や一部装備が撤去され、20mm機関砲が装備されました。その後、40mm連装機関砲も搭載されました。1944年からは特攻対策として、全ての魚雷発射管や四番砲を撤去した艦も存在します。真珠湾で大破したカッシンとダウンズは、船体を再建して再就役しましたが、兵装は5インチ単装砲4基、4連装魚雷発射管2基となりました。

同型艦

以下にマハン級駆逐艦の各艦名と、その由来となった人物、主な経歴を示します。

マハン (USS Mahan, DD-364): 海軍戦略家アルフレッド・セイヤー・マハン少将に由来。1944年、特攻で戦没。
カミングス (USS Cummings, DD-365): 南北戦争の士官アンドリュー・B・カミングズ少佐に由来。
ドレイトン (USS Drayton, DD-366): 南北戦争の軍人パーシバル・ドレイトン大佐に由来。
ラムソン (USS Lamson, DD-367): 南北戦争の海兵隊将校ロズウェル・ラムソン大尉に由来。クロスロード作戦で沈没。
フラッサー (USS Flusser, DD-368): 南北戦争の海軍士官チャールズ・ウィリアムソン・フラッサー中尉に由来。
リード (USS Reid, DD-369): 星条旗のデザイナー、サミュエル・C・リード提督に由来。1944年、特攻で戦没。
ケース (USS Case, DD-370): 南北戦争の海軍士官オーガスタス・L・ケース少将に由来。
カニンガム (USS Conyngham, DD-371): アメリカ独立戦争の軍人ガスターヴス・カニンガムに由来。クロスロード作戦で標的。
カッシン (USS Cassin, DD-372): 米英戦争の海軍士官スティーブン・カッシン船長に由来。
ショー (USS Shaw, DD-373): 擬似戦争、第一次バーバリ戦争、米英戦争で活躍した海軍士官ジョン・ショーに由来。
タッカー (USS Tucker, DD-374): アメリカ独立戦争、米英戦争で活躍した海軍士官サミュエル・タッカー代将に由来。機雷で沈没。
ダウンズ (USS Downes, DD-375): 1830年代に世界一周遠征を行った海軍士官ジョン・ダウンズ船長に由来。
カッシング (USS Cushing, DD-376): 南北戦争の海軍士官ウィリアム・B・カッシング中佐に由来。第三次ソロモン海戦で戦没。
パーキンス (USS Perkins, DD-377): 南北戦争の海軍士官ジョージ・H・パーキンス中佐に由来。衝突事故で沈没。
スミス (USS Smith, DD-378): 南北戦争の海軍士官ジョゼフ・B・スミス大尉に由来。
プレストン (USS Preston, DD-379): 南北戦争の海兵隊将校サミュエル・W・プレストン大尉に由来。第三次ソロモン海戦で戦没。
ダンラップ (USS Dunlap, DD-384): 米西戦争、義和団の乱、第一次世界大戦で活躍した海兵隊将校ロバート・H・ダンラップ准将に由来。
ファニング (USS Fanning, DD-385): アメリカ独立戦争の海軍士官ナサニエル・ファニング大尉に由来。

登場作品

駆逐艦キーリング：C・S・フォレスターの小説に架空艦「キーリング」として登場。

参考文献

「世界の艦船増刊第15集　第2次大戦のアメリカ軍艦」海人社、1984年
「世界の艦船増刊第43集　アメリカ駆逐艦史」海人社、1984年
M・J・ホイットレー/岩重多四郎（訳）『第二次大戦駆逐艦総覧』大日本絵画、2000年、ISBN 4-499-22710-0
セシル・スコット・フォレスター/武藤陽生（訳）『駆逐艦キーリング〔新訳版〕』早川書房、2020年、ISBN 978-4-15-041466-5

外部リンク

Mahan-class destroyers at Destroyer History Trust

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