マリク

マリク：イスラム世界の「王」

「マリク」とは、アラビア語で「王」を意味する言葉です。イスラム圏においては、君主の称号として用いられるだけでなく、人名としても広く使われています。本記事では、「マリク」という称号の歴史的背景や意味合い、そして現代における「マリク」の称号を持つ君主について解説します。

マリクの語源と意味

「マリク」（ملك, malik）は、アラビア語で王を意味する名詞です。複数形は「ムルーク」（ملوك, mulūk）となります。女性形は「マリカ」（ملكة, malikah）で、現代のイスラム圏では主に「王妃」を意味しますが、歴史的には女王（女性統治者）を指すこともありました。また、「アル＝マリク」（الملك, al-Malik）は、アッラーフの99の美名の1つでもあります。

マリクの称号の変遷

マリクは、一般的に支配者を意味する言葉として、中東における君主号の一つとなりました。クルアーンには「神のみが王である」という記述がありますが、イスラム教の預言者ムハンマドの死後、カリフによるアラブ一帯の統治が始まると、マリクは非イスラムの支配者を指す言葉として使われることもありました。

ウマイヤ朝時代には、カリフが非イスラム王権を行使したため、ウマイヤ朝の君主はカリフではなくマリクであると見なされました。9世紀以降のアッバース朝の時代になると、旧サーサーン朝の支配領域に複数の王朝が成立し、それらの君主はマリク、あるいはペルシア語で「大王」を意味する「シャー」などの君主号を用いるようになりました。

11世紀以降に成立したセルジューク朝では、「スルターン」が一般的な君主号となりましたが、マリクの称号も併用されました。20世紀に入り、中東のイスラム圏で多くの王国が樹立されると、国王の称号としてマリクが採用されました。しかし、第二次世界大戦後、中東のイスラム小王国は次々と崩壊し、マリクの称号の地位も低下していきました。

現代のマリク

2016年7月時点で、マリクを称する現役の国王は以下の4名です。

アブドゥッラー2世（ヨルダン国王）：1999年2月即位
ムハンマド6世（モロッコ国王）：1999年7月即位
ハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ（バーレーン国王）：2002年2月即位（1999年3月から2002年2月までは首長（アミール））
サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ（サウジアラビア国王）：2015年1月即位

これらの国王の配偶者は、それぞれ「マリカ」（王妃）となります。

ラニア王妃（ヨルダン王妃）：1999年2月より
ラーラ・サルマ王妃（モロッコ王妃）：2002年3月より
サビーカ王妃（バーレーン王妃）：2002年2月より
サーラ王妃（サウジアラビア王妃）：2015年1月より
ファハダ王妃（サウジアラビア王妃）：2015年1月より



マリクの称号は、イスラム世界の歴史と深く結びついており、その変遷を知ることは、中東の政治や文化を理解する上で重要な手がかりとなります。

関連項目

カリフ
スルターン
シャー
* アミール

もう一度検索