マレーシアとベトナムの関係

マレーシアとベトナムの関係は、15世紀にまで遡る長い歴史を持っています。1973年に外交関係が樹立されて以来、両国は経済、貿易、安全保障など多岐にわたる分野で関係を深めてきました。しかし、過去にはカンボジア紛争や難民問題など、緊張関係にあった時期も存在しました。

歴史

初期の接触（15～18世紀）

15世紀には、ベトナムの黎朝がマラッカ王国の使節を捕らえ、一部を殺害するという事件が起こりました。これは、ベトナムがマラッカ王国を征服しようとする意図があったことを示唆しています。15世紀後半には、チャンパ王国の王子がマラッカに避難し、その後、ジョホール王国の軍事支援に協力したという記録も残っています。17世紀には、チャンパ王国の一部であったパンドゥランガとクランタンの間で、マレー文化やイスラム教を学ぶための外交使節団が派遣され、密接な関係を築きました。

英領マラヤ時代（18世紀～20世紀中頃）

18世紀末、ペナン島がイギリスの港湾拠点として整備されると、ベトナムのジャンク船が貿易のために訪れるようになりました。ベトナムの阮朝の商船がサトウキビを積んでペナン島に入港した記録も残っています。初期の安南からの訪問者は商人が多く、ペナンを「檳榔嶼」と呼んでいました。また、ベトナムのカトリック教徒が神学を学ぶためにペナンに渡ることもありました。19世紀には、ホア族がコーチシナからトレンガヌ王国へ貿易のために訪れ、一部が定住し現地の華人と同化しました。

20世紀には、ホー・チ・ミンが南洋共産党（後のマラヤ共産党）の結成に関わり、英領マラヤを何度か訪問しました。マラヤ共産党とベトナム共産党の間には協力関係があり、第二次世界大戦中には、ベトミンとマラヤ人民抗日軍（MPAJA）が共同で日本軍に抵抗しました。ベトミンはマラヤ共産党に対し、物資や訓練などの支援を行っていました。

ベトナム難民（1975～2005年）

ベトナム戦争終結後、多くのベトナム人がボートで国外に脱出しました。マレーシアには、1975年5月に最初の難民が到着しました。当初は小規模でしたが、南ベトナムの私有財産没収政策によって難民の数は急増しました。マレーシア政府は、難民流入を制限するために連邦タスクフォースを設立しましたが、難民たちは入国許可を得るためにボートを故意に沈めるなどの手段を取りました。ビドン島に難民キャンプが設置されましたが、1987年には難民が再び押し寄せ、マレーシア政府はベトナム政府に対し不満を表明しました。

1988年、マレーシアとベトナムは、難民の帰還に関する協定を結びました。1989年には難民の地位を制限する選別が行われ、自発的な帰還プログラムが開始されました。1990年代初頭には、ベトナムの経済成長により難民の流入は減少し、1991年にはビドン島の難民キャンプは閉鎖されました。2005年には、最後の難民がベトナムに帰還しました。

外交上の結びつき

1973年にマレーシアはベトナム民主共和国（北ベトナム）と外交関係を結び、1976年には大使館を相互に開設しました。しかし、1970年代後半には、ベトナムのカンボジア侵攻や難民問題により両国関係は一時的に悪化しました。1988年以降、両国関係は改善し、経済協力や貿易が活発化しました。マレーシアは1991年にホーチミン市に領事館を開設し、1995年にはベトナムのASEAN加盟を歓迎しました。2000年代には、情報技術、教育、国防など、様々な分野での協力が進められました。

南ベトナムとの関係（1959～1975年）

マレーシア（マラヤ連邦）は、1959年に南ベトナムとの公的な関係を確立しました。マレーシアは、共産主義の脅威を恐れ、ベトナム戦争においてアメリカを支持しました。1975年のベトナム戦争終結に伴い、マレーシアはサイゴン（現ホーチミン市）の大使館を閉鎖しましたが、短命に終わった南ベトナム共和国を承認しました。

大使館

マレーシアはハノイに、ベトナムはクアラルンプールに大使館を設置しています。マレーシアはホーチミン市にも領事館を置いています。両大使館は、幾度かの移転を経て現在に至っています。

経済と貿易

1975年の終戦時、二国間の貿易額は220万米ドルでしたが、その後、経済協力によって徐々に拡大しました。1990年代には、両国間の貿易額は大幅に増加し、マレーシアの企業がベトナムでホテルを開業したり、石油・ガス田の共同探査計画が合意されたりしました。マレーシアはベトナムへの投資を行い、ベトナムも銀行部門の発展のためにマレーシアの支援を求めました。1994年には、マレーシアはASEANで二番目のベトナムへの投資国となりました。マレーシアは機械や化学製品を輸出する一方、ベトナムはコメやゴムなどを輸出していました。1990年代後半には、マレーシアで働くベトナム人労働者の数が増加しました。

社会開発

マレーシアでは、外国人女性との結婚が増加しており、その中でもベトナム人女性との結婚が少なくありません。特に年配のマレーシア華人男性の間で人気があります。このような結婚は、言葉の壁、文化の違い、家庭内問題など、様々な問題に直面しています。マレーシアには、約10万人のベトナム国民が居住しており、多くが工場労働者として働いています。一部のベトナム人労働者は、雇用主から搾取されたり、劣悪な環境で働かされたりしています。また、一部のベトナム人女性は売春に従事しているという報告もあります。

まとめ

マレーシアとベトナムは、歴史的に複雑な関係を経験してきましたが、近年では経済、貿易、安全保障など多岐にわたる分野で関係を強化しています。両国は、ASEANの一員として、地域の安定と発展に貢献しています。

この文章は、マレーシアとベトナムの関係に関する重要な出来事や現在の状況を網羅的に記述しています。歴史的な背景から経済、社会的な側面まで幅広く理解することができます。

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