マレーヤ (戦艦)

HMSマレーヤ：英国戦艦の軌跡

HMSマレーヤは、クイーン・エリザベス級戦艦の5番艦として、1916年にイギリス海軍に就役しました。艦名は当時の英国領マレー連合州に由来し、その建造費は同連合州の政府によって負担されました。本艦は、第一次世界大戦から第二次世界大戦という激動の時代を航海し、数々の海戦を経験しました。

第一次世界大戦での活躍

1913年に起工されたマレーヤは、1916年に就役すると、ヒュー・エヴァン＝トーマス卿率いる第5戦艦戦隊に配属されました。同戦隊は、当時最強と謳われたQ.E級戦艦5隻を擁しており、マレーヤもその一翼を担いました。1916年5月31日には、ユトランド沖海戦に参加し、ドイツ帝国海軍と交戦。この海戦で、マレーヤは215発の主砲弾を発射し、ドイツ艦隊から7発（または8発）の被弾を受け、60名以上の戦死者を出すという損害を受けました。

海軍休日時代と改装

第一次世界大戦後、マレーヤは1922年にオスマン帝国最後の皇帝メフメト6世をマルタ島へ輸送する任務に就きました。1927年から1929年にかけては、バルジの追加や射撃指揮装置の更新など、大規模な改装を受けました。この時期、Q.E級戦艦は、イギリス海軍の主力として、本国艦隊や地中海艦隊で重要な役割を果たしました。1934年から1936年には、水平防御の強化、航空兵装、対空兵器の強化が図られましたが、徹底的な改装は行われず、主砲の最大仰角は引き上げられなかったため、姉妹艦と比較して射程が劣っていました。

第二次世界大戦での戦い

1939年9月に第二次世界大戦が勃発すると、マレーヤは第1戦艦戦隊に所属し、アレクサンドリアを拠点に活動しました。インド洋への派遣や、ドイツのポケット戦艦アドミラル・グラーフ・シュペーの捜索にも参加しました。大西洋では船団護衛任務に従事し、1940年6月にはイタリアの参戦により地中海戦線が形成されると、地中海艦隊の一員として活動しました。同年7月のカラブリア沖海戦では、姉妹艦とともに後方からの支援に留まり、戦局に直接的な影響を与えることはできませんでした。その後、リビアに駐留するイタリア軍に対する艦砲射撃に参加し、マルタ島への補給船団護衛も行いました。1941年にはH部隊に所属し、イタリア本土のジェノヴァ砲撃作戦に参加、同年3月にはドイツの戦艦シャルンホルスト、グナイゼナウの襲撃を阻止する事にも貢献しましたが、Uボートの攻撃により損傷し、アメリカで修理を受けました。

戦後と最期

修理を終えたマレーヤは、再び船団護衛任務に就き、1943年からは予備艦となりました。その後、新型爆弾の標的艦として使用された後、1948年に解体されました。マレーヤは、第二次世界大戦に参加したクイーン・エリザベス級戦艦の中で、唯一大規模な損害を受けることなく退役・解体された艦となりました。

マレーヤの遺産

マレーヤは、その長い戦歴の中で数々の困難に立ち向かい、多くの人々に勇気を与えました。その船内時鐘は、ロンドンのイースト・インディア・クラブに展示されており、その勇姿を今に伝えています。

創作作品への影響

第一次世界大戦の海戦を描いたドキュメンタリードラマ「コロネル沖海戦とフォークランド沖海戦」では、マレーヤが巡洋戦艦「インフレキシブル」の役として登場しています。

参考資料

岡部いさく著「File no.17　マレーからの贈り物　戦艦マレーヤ　Battleship HMS Malaya」
エドウィン・グレイ『ヒトラーの戦艦　ドイツ戦艦7隻の栄光と悲劇』
酒井三千生『ラプラタ沖海戦　グラフ・シュペー号の最期』
ジョン・ジョーダン『戦艦　AN ILLUSTRATED GUIDE TO BATTLESHIPS AND BATTLECRUISERS』
V.E.タラント『戦艦ウォースパイト　第二次大戦で最も活躍した戦艦』
リチャード・ハンブル「通商破壊」『壮烈！ドイツ艦隊　悲劇の戦艦「ビスマルク」』
レオンス・ペイヤール「7.地中海の潜水艦　一九四〇年～一九四二年」『潜水艦戦争　1939-1945』
国立国会図書館デジタルコレクション
海軍研究社編輯部 編『ポケット海軍年鑑 : 日英米仏伊独軍艦集. 1935年版』
海軍研究社編輯部 編『ポケット海軍年鑑 : 日英米仏伊独軍艦集. 1937,1940年版』

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