ミトラ (インド神話)

ミトラ : 古代インド神話の神

ミトラ（サンスクリット: मित्र mitra）は、古代インド神話において重要な神の一柱です。彼はヴェーダの中で神ヴァルナとしばしば一緒に言及され、一般には「ミトラ＝ヴァルナ」という名前で知られています。この神は契約や条約、さらには太陽神としての側面を持ち合わせています。

ミトラの起源と役割

ミトラの起源は非常に古く、紀元前1400年頃にミタンニ王国から発見された条約にもその名が見られます。この条約では、ヴァルナ、インドラ、ナーサティヤウ（アシュヴィン双神）と共にミトラが言及され、彼が古代の宗教的伝承において重要な役割を果たしていたことが伺えます。特に、アヴェスターに登場するミスラという神は、ミトラと同一視されることから、インドとイランの文化的背景を示す神であると考えられています。

「ミトラ」という名前自体は、契約や盟約を意味しており、他の神々、特にヴァルナとの関係において重要な位置を占めます。ヴァルナは上下関係のある契約を司るのに対し、ミトラは平等な契約を見守る神としての特徴があります。このため、両神はしばしば一緒に取り上げられることが多いのです。

『リグ・ヴェーダ』では、通常ミトラはヴァルナと共に登場しますが、特例として第3章59節ではミトラのみが取り上げられています。この章では、彼が契約や条約、婚約を見守る神とされており、人間社会における組織や協力関係の形成を促進する存在とされています。

ミトラとアーディティヤ神群

ミトラは、単に契約の神であるだけでなく、アーディティヤ建族の一員として太陽の神でもあります。アーディティヤ神群は、アディティを母とし、この神々の役割は、正しい行いによって神々の怒りを買わないことを意味します。また、太陽そのものは、人間の行いを見守る存在とされ、特に『リグ・ヴェーダ』の第1巻115節では、太陽が「ミトラ、ヴァルナ、アグニの目」と呼ばれています。また、供犠が行われることで人々の潔白が求められるのです。加えて、太陽（スーリヤ）はミトラとヴァルナの乗り物とされることもあります。

『アタルヴァ・ヴェーダ』やブラーフマナ文献では、ミトラが昼や太陽を司り、ヴァルナが夜や月の神であると考えられるようになりました。このように、時代が進むにつれ、ミトラは特定の役割を持つ神としての地位を強めていきます。

後の文献におけるミトラ

ヴェーダ以降の世代において、ミトラとヴァルナはその重要性が減少し、あまり顕著に取り上げられなくなりました。しかし、叙事詩として知られる『ラーマーヤナ』の第7巻では、二神がアプサラスのウルヴァシーを見て興奮し、その結果リシのアガスティヤとヴァシシュタが生まれたという逸話が紹介されています。この話の背景には、『リグ・ヴェーダ』の第7巻33節に類似の物語が存在し、ミトラとヴァルナの神話的な役割の持続性が見て取れます。

このように、ミトラは古代インド神話において契約や太陽、組織の形成を見守る神として考えられ、多くの伝承の中にその影響を残しています。

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