ミュールハイム/オーバーハウゼン市電

ミュールハイム/オーバーハウゼン 路面電車

ドイツのルール地方に位置するミュールハイム・アン・デア・ルール市とオーバーハウゼン市は、共通の路面電車ネットワークによって結ばれています。この公共交通システムは、ミュールハイム側の運営を担うルールバーン社（Ruhrbahn GmbH）と、オーバーハウゼン市の公営企業であるシュタットベルケ・オーバーハウゼン社（Stadtwerke Oberhausen GmbH、略称：STORG）によって運営されています。

歴史

ミュールハイム

ミュールハイム市における軌道交通の始まりは、1888年に隣接するデュースブルクとの間に開通した蒸気鉄道に遡ります。現在の路面電車の基礎が築かれたのは、1897年 7月9日で、この時点での路線総延長は約12.5キロメートルでした。市の発展に伴い路面電車網は拡大を続け、1928年には営業キロが44キロメートルに達し、エッセンやオーバーハウゼンといった近隣都市との直通運転も行われるようになりました。

第二次世界大戦中、ミュールハイムの路面電車は空襲により深刻な被害を受け、1945年の終戦直後には一時運行が停止しました。しかし、アメリカ軍の進駐を経て復興が進み、1950年代以降は当時最新鋭であったデュワグ社製の路面電車車両が導入されました。1960年代に入るとモータリゼーションの影響で一部路線の廃止が進みましたが、1970年代からは路面電車を高規格化したシュタットバーン（地下鉄）の計画が進行し、1977年からはエッセンのシュタットバーン（U18号線）がミュールハイム中心部に乗り入れるようになりました。1979年のシュタットバーン延伸に伴い、並行する路面電車路線は廃止されています。

その後、1996年には後述のオーバーハウゼン市内への延伸が実現した一方、市内中心部を走行する路面電車用の地下トンネル建設が進められました。2022年現在、このトンネル区間はミュールハイム市電の102号線に加え、デュースブルクからの901号線（かつての蒸気鉄道を起源とする路線）が経由しています。一方で、2010年代には路線の老朽化や系統の合理化に伴う一部区間・系統の廃止も行われ、2012年には104号線の一部が、2015年には110号線がバスに置き換えられ営業を終了しました。

車両面では、1995年以降、乗降性の高い超低床電車の導入が継続され、2015年からは運行される全列車が低床構造を持つ車両に統一されています。運営については、2017年 9月1日まではミュールハイム交通会社（MVG）が担当していましたが、エッセン交通（EVAG）との合併により、以降はルールバーンとして運営されています。

オーバーハウゼン

オーバーハウゼン市内で初めて路面電車が運行を開始したのは1897年 4月4日のことでした。これはジーメンス・ウント・ハルスケ社の協力のもと、市営路線として導入されたものです。市内の住宅地や商業地を結ぶ主要な交通手段として路線網は拡張され、1924年にはエッセン市電と、1928年にはミュールハイム市電との直通運転が始まりました。1928年時点での年間利用者数は1,200万人を記録し、車両数も事業用を含め105両に増加しました。

第二次世界大戦中の1943年 6月23日の空襲で甚大な被害を受けましたが、他の都市からの車両借用などにより運行は維持されました。終戦直後の1945年時点でも6系統が運行されており、破壊された橋梁の復旧遅れや物資不足により復興は時間を要しましたが、1940年代後半には新型車両が導入されるまで回復しました。

戦後も路線網の延伸が続き、1950年代後半にはオーバーハウゼン市内の路面電車網は最盛期を迎え、線路総延長は66.3キロメートルに達しました。1959年以降は多数の乗客を輸送可能な連接車も導入されました。しかし、この頃からモータリゼーションが進展し、自動車交通量の増加による併用軌道の損傷や交通渋滞が問題視されるようになります。その結果、1965年 7月にオーバーハウゼン市議会は公共交通機関をバスに統一することを決定し、1968年 10月13日をもって市営路面電車は全て廃止されました。その後も市域に乗り入れていたヴェスティシェ路面電車会社の路線も1974年に廃止され、オーバーハウゼン市内から路面電車はいったん姿を消しました。

路面電車廃止後、オーバーハウゼンの公共交通は主に路線バスが担っていましたが、1990年代にヨーロッパ最大級のショッピングモール「CentrO」の建設計画が持ち上がった際、予測される公共交通利用者の膨大さ（1日約7万5千人）に対し、路線バスでは輸送力が不足する懸念が生じました。これに加え、環境意識の高まりも背景となり、1994年 2月、オーバーハウゼン市議会は路面電車の再導入を決断しました。

新たな路面電車路線は、ミュールハイム市電からの延伸として計画され、一部区間ではドイツ鉄道の廃線跡が再利用されました。そして1996年 6月1日、オーバーハウゼン市内に路面電車が復活を果たしました。車両はミュールハイム市電の車庫で整備を行う関係から、同市電と同形式の超低床電車が導入されました。また、かつてオーバーハウゼン市電で使用されていた車両の復元も行われています。この新規路線は2004年にはノイマルクト方面への延伸も行われ、現在はシュタットベルケ・オーバーハウゼンが運営する路線バスも一部区間を走行するという特徴的な運用が見られます。

運行と系統

2022年現在、ミュールハイムとオーバーハウゼンには複数の路面電車路線が存在します。そのうち104号線の一部区間は隣接するエッセン市まで乗り入れています。

また、ミュールハイム市内の区間は、デュースブルクから直通するデュースブルク市電の901号線と線路を共有しています。さらに、ミュールハイム中央駅にはエッセンのシュタットバーンであるU18号線が乗り入れています。ミュールハイム市電の軌間は1,000 mm（メーターゲージ）ですが、デュースブルク市電やエッセンのシュタットバーンは1,435 mm（標準軌）であるため、これらの路線が共有する区間は、両方の軌間を走行できるよう三線軌道となっています。

車両

2021年時点でミュールハイムとオーバーハウゼンの路面電車で使用されている主な車両形式は以下の通りです。これらに加え、両都市で使用されていた歴史的な車両の一部が動態保存されています。

M8S・M6S・M6D: デュワグ社製の3車体連接式両運転台車両。1976年から1992年にかけて合計24両が導入されましたが、2021年時点で現存するのは、中間に低床車体を組み込んだ改造車であるM6NFが2両のみです。
NF6D: デュワグ社（後にアドトランツ社）が展開した部分超低床電車。1996年に10両が導入されましたが、うち6両はシュタットベルケ・オーバーハウゼンが所有しており、ルールバーン所有の4両とは異なる塗装が施されています。
* M8D-NF2: ボンバルディア・トランスポーテーション社（現：アルストム社）製の部分超低床電車「フレキシティ・クラシック」シリーズの一つ。車内約70%が床上高さ300mmの低床構造を持つ両運転台式3車体連接車で、2014年以降15両が導入されています。

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