ムーアヘッド (ミネソタ州)

ムーアヘッド：ミネソタ州北西部の魅力的な都市

ミネソタ州北西部、ノースダコタ州との州境に位置するムーアヘッド市は、レッド川の東岸に広がる活気ある都市です。対岸のファーゴ市と共に大規模な都市圏を形成し、ミネソタ州北西部最大の都市として知られています。2020年の国勢調査では、ムーアヘッド市の人口は約44,505人、ファーゴ・ムーアヘッド都市圏全体では約249,843人、さらにワーペトン小都市圏を含めた広域都市圏では約272,878人に達しています。

歴史：禁酒法とドイツ人捕虜

ムーアヘッドの歴史は、1858年にブレッキンリッジ郡（現在のクレイ郡）の設立に始まります。南北戦争後、1871年にノーザン・パシフィック鉄道が開通したことで町の建設が開始され、鉄道取締役であったギャロウェイ・ムーアヘッドの名にちなんで命名されました。1872年にはクレイ郡の郡庁所在地となり、1881年には正式に市制を施行しました。

初期のムーアヘッドは、ミネアポリス・セントポールとカナダ・ウィニペグを結ぶ重要な交通の要衝として発展しました。陸路で運ばれた乗客や貨物は、ムーアヘッドで船に積み替えられてレッド川を北上しました。1890年代には、近隣のノースダコタ州で禁酒法が施行されたため、アルコールが合法だったムーアヘッドには多くの酒場が建ち並び、「罪の街」と呼ばれるほど賑わいをみせました。しかし、1915年にクレイ郡で禁酒法が施行され、その隆盛は終焉を迎えました。

第二次世界大戦中は、農村部の労働力不足を補うため、ドイツ人捕虜が農作業に従事しました。1944年から1945年にかけて、約150人の捕虜が農場で働き、戦後も良好な関係が続いたと言われています。

地理：アガシー湖の遺産と大陸性気候

ムーアヘッドは、北緯46度52分26秒、西経96度46分02秒に位置します。ファーゴからはレッド川を挟んで対岸にあり、ミネアポリス・セントポールからは約350km離れています。市域は、最終氷期に形成されたアガシー湖の湖底に由来するレッド・リバー・バレーと呼ばれる平原地帯に広がっています。この肥沃な土地は農業に適しており、現在もムーアヘッドの主要産業となっています。しかし、平坦な地形と雪解け水によって、レッド川の洪水被害にも悩まされてきました。

気候は、グレートプレーンズに位置することから大陸性で、冬の寒さが厳しいことで知られています。ケッペンの気候区分では亜寒帯湿潤気候（Dfb）に分類され、アメリカ合衆国農務省によるハーディネスゾーンは4aです。

政治と経済：シティー・マネージャー制と多様な産業

ムーアヘッド市は、市長と市議会から成る市憲章に基づくシティー・マネージャー制を採用しています。シティー・マネージャーは市長の任命を受け、市の行政を担います。市議会は市長と8人の市議員から構成され、4年任期で2年ごとに半数が改選されます。

農業はムーアヘッドの主要産業ですが、食品加工業や製造業も盛んです。アメリカン・クリスタル・シュガーの本社や工場、ブッシュ・アグリカルチュラル・リソーシズ（アンハイザー・ブッシュ傘下）の麦芽加工工場、パックティブの食品容器工場などが市内に立地しています。また、コンコーディア大学やミネソタ州立大学ムーアヘッド校の存在は、雇用創出と人材供給に貢献しています。

交通：空路、陸路、バス網

ファーゴ・ムーアヘッド都市圏の空の玄関口は、ヘクター国際空港です。州間高速道路I-94、国道10号線、ミネソタ州道52号線などが市内を通っており、ファーゴ駅にはアムトラックの長距離列車も停車します。市内ではファーゴ・ムーアヘッド都市圏交通局のバス網（MATBUS）が運行されています。

教育：大学と公立学校

ムーアヘッドには、リベラルアーツカレッジであるコンコーディア大学と、ミネソタ州立大学ムーアヘッド校という2つの大学があります。両大学は、ファーゴのノースダコタ州立大学と共にトライ・カレッジ・ユニバーシティ（TCU）という単位互換協定を結んでいます。K-12課程の教育はムーアヘッド公立学区の学校が担っています。

コンコーディア大学は、1891年にノルウェー系移民によって創立されたルーテル教会系の大学で、少人数制教育が特徴です。ミネソタ州立大学ムーアヘッド校は、1887年に創立された州立大学で、幅広い学科を擁しています。

文化と名所：ヴァイキング船と歴史的建造物

ムーアヘッドには、多くの文化施設や歴史的建造物があります。イェムコムスト・センターには、ノルウェー系移民ロバート・アスプによって建造されたヴァイキング船「イェムコムスト号」が展示されています。クレイ郡博物館やスターヴ教会のレプリカも同センター内にあります。

バークウィストの小屋はムーアヘッド最古の家屋で、国家歴史登録財に指定されています。コムストック邸は、かつてミネソタ州知事を務めたソロモン・コムストックが建てたビクトリア様式の邸宅で、博物館として公開されています。ロアーク美術館は、かつての連邦裁判所庁舎を利用した美術館で、多様な芸術作品を展示しています。ブルーステム芸術センターには野外劇場とトロールウッド舞台芸術学校があります。コンコーディア大学のコンコーディア合唱団は、歴史と伝統を誇る合唱団です。

ムーアヘッドは、豊かな歴史と自然、活気ある文化、そして教育機関が調和した魅力的な都市です。農業と工業、そして教育機関が共存するその姿は、アメリカ中西部の発展を象徴する場所と言えるでしょう。

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