ムーティエ

ムーティエ：気性と才能の狭間で生きた名種牡馬

ムーティエは、フランスで生まれ育った競走馬です。7戦3勝という戦績を残し、オカール賞を制覇するなど、その能力の高さを示しました。イギリスダービーやパリ大賞にも出走したものの、思うような結果を残せず、競走馬としてのキャリアを終えます。

しかし、ムーティエの真価は、種牡馬として発揮されました。フランスで種牡馬生活を送った後、1966年に日本へ輸入されます。その背景には、ムーティエの兄であるモンタヴァルが前年に死亡したことがありました。モンタヴァルも日本へ輸出され活躍していたため、その血統を受け継ぐ期待を担っての輸入だったのです。

日本でのムーティエは、想像をはるかに超える成功を収めます。初年度産駒から皐月賞と東京優駿（日本ダービー）を制したタニノムーティエ、2年目には菊花賞を制したニホンピロムーテーを輩出。わずか2年で中央競馬のクラシック三冠をすべて制覇するという快挙を達成したのです。1970年には2歳リーディングサイアーにも輝き、その実力は広く認められました。

その後も、神戸杯を制したニューペガサス、中京記念を制したゼットアロー、小倉記念を制したカーチスなど、多くの活躍馬を輩出。さらに、母の父としてもミホシンザンやテンモンなどの活躍馬に影響を与えました。

ムーティエの成功は、決して順風満帆ではありませんでした。彼は、兄のモンタヴァルと同様に非常に気性が荒く、「気性難種牡馬」の代名詞的存在として知られていました。種牡馬場での担当者は、常に怪我と隣り合わせだったと言われています。その荒々しい気性は、産駒にも遺伝したとされ、多くの産駒が気性面での課題を抱えていたと言われています。

主な産駒としては、前述のタニノムーティエとニホンピロムーテーの他に、アイリッシュ1000ギニーを制したWenduyne、京都大障害（秋）と阪神障害ステークス（秋）を制したムーテイイチ、天皇賞（秋）を制したカミノテシオなどがいます。

ムーティエの父はSicamble（シカンブル）で、ダービー馬を3頭も輩出するなど、優れた血統を持つ種牡馬でした。ただし、シカンブルもまた気性面での問題を抱えていたと伝えられています。ムーティエの近親には、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制したモンタヴァルや、イギリスオークスで2着となったPaimpont、さらに、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、イギリスオークス、ディアヌ賞などを制したPawneeseなど、多くの活躍馬がいます。

ムーティエは、1976年に死亡しました。短く激しい競走生活、そして種牡馬として類まれな成功を収めた生涯は、多くの関係者に深い印象を残しました。気性の荒さという大きな課題を抱えながらも、その才能によって日本の競馬界に大きな足跡を残した名種牡馬として、ムーティエは今も語り継がれています。彼の血統は、現在でも多くの競走馬に受け継がれ、その影響は依然として競馬界に及んでいます。

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