ムーンライト (列車)

ムーンライト：夜を駆けた快速列車の軌跡

「ムーンライト」は、かつて日本国有鉄道（国鉄）およびJRグループが運行していた夜行快速列車の愛称です。夜行高速バスとの競争激化を背景に、長距離旅客輸送に特化したサービスとして登場しました。「月の光」を意味する名称は、夜行列車のイメージに合致し、各地で運行された様々な夜行列車に名付けられました。

前史：夜行急行「月光」

「ムーンライト」のルーツを辿ると、夜行急行列車「月光」の存在が見えてきます。「月光」は、「ムーンライト」と同じ趣旨の列車愛称を冠した列車でした。

1953年 - 1965年：東京 - 大阪間を結ぶ夜行普通急行列車として運行。
1967年 - 1975年：新大阪 - 博多駅間（後に岡山 - 西鹿児島駅間）を結ぶ寝台特別急行列車として運行。

歴史：ムーンライトの誕生と展開

「ムーンライト」の名が初めて使用されたのは、1986年の国鉄時代。新宿駅 - 新潟駅間で運行された団体快速列車でした。これは、夜行高速バスに対抗するための試みであり、好成績を収めたことから、JRグループ発足後の1987年には定期列車に昇格。「ムーンライトえちご」へと発展しました。

1988年には、JR西日本が大阪駅 - 広島駅間で臨時夜行快速列車「ふるさとライナー山陽（後のムーンライト山陽）」を運行開始。その後、「ムーンライト高知」「ムーンライト松山」「ふるさとライナー九州（後のムーンライト九州）」「ふるさとライナー山陰（後のムーンライト八重垣）」など、「ムーンライト」の名を冠する列車が各地で運行されるようになりました。

長らく「大垣夜行」として親しまれてきた東京駅 - 大垣駅間を結ぶ夜行普通列車は、1996年に車両の老朽化に伴い特急用車両に変更。全車指定席化されることになり、列車を識別するための愛称が必要となりました。そこで、「ムーンライト」の名が与えられ、「ムーンライトながら」として新たなスタートを切りました。これに伴い、従来の「ムーンライト」は「ムーンライトえちご」に改称されました。

その後も、中央東線夜行急行「アルプス」が「ムーンライト信州」として快速化されたり、「ムーンライト仙台・ムーンライト東京」などの新列車が登場するなど、「ムーンライト」の名は各地の夜行列車で広がっていきました。

臨時列車化と終焉

しかし、2009年3月14日のダイヤ改正により、「ムーンライトながら」と「ムーンライトえちご」が臨時列車に格下げ。これにより、夜行快速「ムーンライト」はすべて臨時列車となりました。

近年では、指定席券を複数購入して座席を占拠する行為が横行し、満席であるにもかかわらず空席が多い状態で運行されるケースも指摘されていました。

臨時化後も運行が続けられましたが、運行期間の減少や運行休止が相次ぎ、「ムーンライト九州」は2009年、「ムーンライトえちご」は2014年、「ムーンライト信州」は2018年をもって運行を終了。最後まで残った「ムーンライトながら」も2020年春の運行を最後に休止となり、2021年1月22日に廃止が発表されました。これにより、「ムーンライト」の名を冠する列車は姿を消しました。

列車一覧

ムーンライトながら （東京駅 - 大垣駅）
ムーンライトながら91号・92号 （東京駅・品川駅 - 大垣駅）
ムーンライト仙台 （東京駅 → 仙台駅: 下り）
ムーンライト東京 （仙台駅 → 東京駅: 上り）
ムーンライト松島 （上野駅 → 仙台駅: 下り）
ムーンライト横浜 （山形駅 → 大船駅: 上り）
ムーンライト山陽（ふるさとライナー山陽） （京都駅 - 広島駅・下関駅）
ムーンライト八重垣（ふるさとライナー山陰） （京都駅・大阪駅 - 出雲市駅）
ムーンライト高知 （京都駅・大阪駅 - 高知駅）
ムーンライト松山 （京都駅・大阪駅 - 松山駅）
ムーンライト九州 （ふるさとライナー九州）（京都駅・新大阪駅 - 博多駅・熊本駅）
ムーンライトえちご （新宿駅 - 新潟駅・村上駅・新井駅）
ムーンライト信州 （新宿駅 - 信濃大町駅・白馬駅）

参考文献

『大垣夜行と快速「ムーンライト」のすべて』天夢人〈旅鉄BOOKS057〉、2022年4月20日。ISBN 978-4635823951。

関連項目

夜行列車
ムーンライト号 (高速バス) - 阪急バス、阪急観光バス、西日本鉄道が運航していた高速バス。
* ムーンライト - 「ムーンライト」「moonlight」の名が付く、その他項目

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