メガターミナルオペレーター

メガターミナルオペレーターとは

メガターミナルオペレーターとは、世界各地の港湾ターミナルを運営する巨大な港湾運営会社のことです。特に海上コンテナ貨物を扱うコンテナターミナルにおいて、コンテナ船の施設利用調整、荷役作業、船会社誘致など、ターミナル運営全般を担います。これらの業務を行う民間企業の中でも、特に規模が大きい企業をメガターミナルオペレーターと呼びます。

ターミナルオペレーターの種類

ターミナルオペレーターには、港湾会社系と船会社系の2種類が存在します。

港湾会社系:
香港のハチソン（Hutchison Port Holdings: HPH）
シンガポールのPSAインターナショナル
アラブ首長国連邦のDPW

船会社系:
オランダのAPMターミナルズ(APM Terminals) (世界最大の海運会社A.P. モラー・マースクグループに属する)

これらの企業は、世界中で港湾ターミナルの運営権を取得し、グローバルなネットワークを構築しています。

公共性と民間性

メガターミナルオペレーターは民間企業として活動していますが、港湾事業は公共性が高く、多くの国で港湾公社や港湾局が管理しています。シンガポールのPSAやドバイのDPWも、もとは港湾局を民営化したものであり、国家戦略の一環として位置づけられています。したがって、これらの企業は公益企業としての側面も持っています。

メガターミナルオペレーターの歴史

1960年代後半に始まった国際海運のコンテナリゼーションは、海陸一貫輸送を可能にする「物流革命」でした。コンテナターミナルは、当初から海陸を結ぶ重要な拠点として機能していました。

黎明期には、コンテナターミナルは船会社にとってコストセンターに過ぎませんでした。しかし、コンテナ輸送の拡大とともに、船舶の大型化が進み、コンテナターミナルの取扱量も飛躍的に増大しました。1980年代後半頃から、コンテナターミナルは荷役作業収入や施設使用料収入を生み出す「プロフィットセンター」として注目されるようになります。

このターミナルビジネスの拡大に伴い、港湾運営会社は世界のターミナル運営権の買収を繰り返し、船社の物流戦略と連動して世界規模のターミナルネットワークを構築しました。これがメガターミナルオペレーター誕生の背景です。

メガターミナルオペレーターの利点

メガターミナルオペレーターが世界各地の港湾を運営することで、以下のような利点が生まれます。

物流コストの削減: 国際的なネットワークを構築することで、効率的な物流が可能になり、コスト削減につながります。
誘致の優位性: 船会社の誘致に有利であり、一国に偏ることによるリスクを回避できます。
情報収集の利点: 各地の情報を収集しやすく、迅速な対応が可能です。
効率的な運営: 大規模ターミナルを単一会社が運営することで、岸壁利用の最適化やクレーン稼働の効率化が図れます。
波動リスクの抑制: 港湾労働の変動リスクを最小限に抑制できます。
収益性の向上: 近隣の中小港からの積み替え貨物を集めることで、収益性を高めることができます。

日本への導入と現状

世界的なメガターミナルオペレーターの台頭に対し、日本の港湾はこれまで対応が遅れていました。その要因として、日本の船会社がターミナルビジネスに積極的に関与しなかったことや、国内の港湾会社に世界展開するだけの力がなかったことが挙げられます。

神戸港の衰退

メガターミナルオペレーターが主導する国際的な港湾間競争において、最も大きな影響を受けたのが神戸港でした。1980年代まで世界トップクラスのコンテナ港湾として繁栄していましたが、近隣アジア諸港のターミナル拡充や、阪神・淡路大震災の影響で、トランシップ貨物が激減しました。

日本の港湾改革

こうした状況を受け、日本でもメガターミナルオペレーターによる港湾経営の必要性が認識されるようになりました。国土交通省は2002年にスーパー中枢港湾政策を打ち出し、コンテナターミナル運営の統合・大規模化を図る方針を示しました。その結果、2004年に横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港にそれぞれターミナル運営会社が設立されました。

日本の「メガターミナルオペレーター」の課題

しかし、これらの会社は海外のメガターミナルオペレーターと比較して規模が小さく、また法規制により収益に直結する中核業務において主体性を持てていません。さらに、世界的なネットワークの一部を構成できていないため、実態としては海外のメガターミナルオペレーターとは異なるものとなっています。

日本の「メガターミナルオペレーター」一覧

横浜港：横浜港メガターミナル株式会社（YPM）
名古屋港：飛島コンテナ埠頭株式会社（TCB）
大阪港：夢洲コンテナターミナル株式会社（DICT）
神戸港：神戸メガ・コンテナターミナル株式会社（KMCT）

北九州港の試み

スーパー中枢港湾とは別に、北九州港では、ひびきコンテナターミナルにおいてメガターミナルオペレーター育成の試みが行われました。シンガポールのPSAコーポレーションが参入し運営会社を設立しましたが、取扱貨物の不振により業務を縮小しました。

まとめ

メガターミナルオペレーターは、世界的な物流を支える重要な存在です。日本においても、港湾改革を通じて、世界標準のターミナル運営会社を育成していくことが求められています。