メスリ山古墳

メスリ山古墳：古代日本の謎を秘めた巨大前方後円墳

メスリ山古墳は、奈良県桜井市高田に位置する前方後円墳です。その規模の大きさ、そして数々の貴重な出土品から、古代日本の歴史解明に重要な役割を果たす史跡として知られています。本稿では、メスリ山古墳の構造、埋葬施設、出土品、そしてその歴史的意義について詳細に解説します。

古墳の概要と歴史

初瀬川の左岸、磐余の地に隣接するメスリ山古墳は、桜井茶臼山古墳などと共に鳥見山古墳群に属します。箸墓古墳よりも後の時代に築造されたと推定されています。鉢巻山古墳、東出塚古墳といった別名でも呼ばれており、その歴史の長さと様々な呼び名からも、古くから人々の関心を集めてきたことがうかがえます。

墳丘規模や出土品から、メスリ山古墳は絶大な権力を持った首長の墓であったと考えられています。しかしながら、『古事記』や『日本書紀』、『延喜式』といった歴史書には、陵墓としての記述は見当たりません。この点が、メスリ山古墳を更に謎めいた存在にしていると言えるでしょう。

1950年には盗掘被害を受けており、その後の1959年には発掘調査が行われました。この調査によって明らかになった数々の事実が、メスリ山古墳の重要性を改めて示すこととなりました。そして、1980年には国の史跡に指定され、その歴史的価値が正式に認められました。

壮大な墳丘構造

メスリ山古墳の墳丘長は224メートルにも及び、復元すると250メートルに達するとの説もあります。後円部は3段築成で、直径128メートル、高さ19メートルという巨大な規模を誇ります。各段には円筒埴輪が巡らされ、斜面には人頭大の葺石が施されています。特に後円部頂上には、竹垣を思わせるような独特の埴輪配置が見られ、その内部には長方形の壇が存在したと考えられています。

前方部は2段築成で、幅80メートル、高さ8メートルです。後円部と比較すると規模は小さいものの、その形状は前方後円墳の特徴を明確に示しています。前方部は西向きに位置しており、この方位にも何らかの意味が込められていた可能性があります。

注目すべきは、高さ2.4メートル、直径1.3メートルという日本最大級の器台型埴輪の存在です。また、朝顔形埴輪の出土も確認されています。これらの埴輪は、古墳の築造当時の技術力や文化水準の高さを示す貴重な資料と言えるでしょう。

埋葬施設と出土品

後円部中央には、木棺を納めた主石室が発見されました。盗掘によって遺物はほとんど残されていませんでしたが、わずかに翡翠の勾玉や碧玉の管玉などの玉類、石製の腕輪、櫛、合子などが残っていました。

主石室の横には、副石室が存在していました。こちらは盗掘を免れており、212本の茎式鉄矛、236本の銅鏃、50本の石鏃、鉄弓、鉄矢、漆塗り盾、鉄剣、鉄刀などの武器類が大量に出土しました。これらの武器は、当時の戦闘の様子を知る上で非常に重要な資料となります。

さらに、鉄斧、手鎌、鑿、やりがんななどの農耕具も発見されています。これらの出土品は、当時の社会構造や生活様式を理解する上で貴重な手がかりとなるでしょう。 武器類だけでなく、農耕具の出土は、この古墳の被葬者が政治・軍事だけでなく、農業生産にも深く関わっていた可能性を示唆しています。

国宝級の文化財

メスリ山古墳から出土した遺物は、国の重要文化財に指定されています。これらの遺物は、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館に保管され、一般公開されています。メスリ山古墳とその出土品は、古代日本の歴史、文化、社会を理解するための重要な拠点として、今後も研究が続けられることでしょう。メスリ山古墳は、その規模と出土品から、古代日本の王権や社会構造を理解する上で極めて重要な役割を担う史跡です。今後の研究によって、更に多くの謎が解き明かされることが期待されます。

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