メッカ包囲戦 (692年)

692年メッカ包囲戦：第二次内乱の終焉

692年のメッカ包囲戦は、ウマイヤ朝に対抗してカリフを称したアブドゥッラー・ブン・アッ＝ズバイルの本拠地であるメッカを、ウマイヤ朝の将軍アル＝ハッジャージュ・ブン・ユースフが率いる軍が占領し、イスラム世界の第二次内乱を終結させた重要な戦いです。

背景：第二次内乱の勃発

683年にウマイヤ朝のカリフ、ヤズィード1世が死去すると、アブドゥッラー・ブン・アッ＝ズバイルがイスラム国家の大部分でカリフとして認められました。しかし、ウマイヤ朝はシリアの一部に勢力を縮小し、684年にマルワーン1世をカリフとして擁立します。マルワーン1世の死後、息子の アブドゥルマリクがウマイヤ朝の支配を再確立することになります。

包囲戦の展開

691年、アブドゥルマリクはイラクを制圧した後、将軍アル＝ハッジャージュをメッカへ派遣し、イブン・アッ＝ズバイルの制圧を目指します。ハッジャージュはメッカでの流血を避けるため、都市を包囲して物資を遮断する戦略をとります。692年3月に始まった包囲は数ヶ月に及び、カタパルトによる砲撃と物資の欠乏により、イブン・アッ＝ズバイルの支持者たちは次々と降伏しました。10月または11月、イブン・アッ＝ズバイルは残されたわずかな支持者とともに決死の覚悟で出撃しますが、戦死し、ここにメッカはウマイヤ朝の手に落ちます。

戦いの影響とカアバの再建

メッカの占領は、12年に及ぶ内乱に終止符を打ち、イスラム国家はアブドゥルマリクのもとで再統一されました。戦火で損傷したカアバは、預言者ムハンマド時代の設計に基づいて再建されました。この再建は、イスラム世界におけるウマイヤ朝の正統性を象徴する出来事となりました。

詳細

第二次内乱の複雑な背景

ムアーウィヤ1世の死後、カリフの座を巡る争いが激化し、フサイン・ブン・アリーなどが反乱を起こしました。カルバラーの戦いでフサインが戦死した後も、イブン・アッ＝ズバイルはメッカを拠点に抵抗を続けました。ヤズィード1世によるメッカ包囲では、カアバが炎上し、聖なる黒石が損傷を受けるなど、大きな被害が出ました。

ウマイヤ朝の再興と内乱の終結

マルワーン1世の登場により、ウマイヤ朝は勢力を回復し、アブドゥルマリクの時代には、イラクの奪還やイブン・アッ＝ズバイル派の討伐が進められました。マスキンの戦いでムスアブ・ブン・アッ＝ズバイルが戦死したことで、イブン・アッ＝ズバイルの勢力はヒジャーズに限定され、最終的にメッカ包囲戦でその生涯を閉じました。

メッカ包囲戦の激戦

ハッジャージュは当初、イブン・アッ＝ズバイルに降伏を促しましたが、交渉は決裂し、包囲戦へと発展しました。アブー・クバイス山からのカタパルトによる砲撃は、メッカの街を破壊し、住民を苦しめました。イブン・アッ＝ズバイルは最後まで抵抗しましたが、衆寡敵せず、戦死しました。

カアバの再建をめぐる議論

イブン・アッ＝ズバイルはカアバを改築し、出入り口を増やしましたが、アブドゥルマリクはムハンマド時代の設計に戻すように命じました。この決定は、イスラム教徒の間で議論を呼び、アブドゥルマリク自身も後に後悔したと伝えられています。しかし、カアバは現在に至るまで、この時の構造を保っています。

メッカ包囲戦は、イスラム世界の歴史における重要な転換点であり、その後のウマイヤ朝の繁栄とイスラム文化の発展に大きな影響を与えました。

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