西アフリカ、
ブルキナファソを主要な居住地とするモシ人は、独自の文化と歴史を持つ
民族です。彼らを理解するためには、その起源から現代社会における立ち位置までを多角的に考察する必要があります。
歴史:独立を保ち続けた王国
モシ人の起源は、彼らの神話に記されています。それは、ガーナ北部出身のダゴンバの姫とマンデ人の狩人の間に生まれたウエドラオゴという人物が、モシ王朝の始祖であるという物語です。
15世紀半ば、テンゴドゴを都としてモシ王国が成立。強力な騎馬軍を擁し、
マリ帝国やソンガイ王国といった強大な勢力からも独立を維持しました。
その後、モシ王国は北部ワヒグヤ(ワイグヤ)、中部ワガドゥグー、南部テンゴドゴの三国に分裂。
19世紀まで、それぞれの王国が独立を保ち続けました。しかし、
19世紀後半、
フランスの勢力拡大によって状況は一変します。
フランス領スーダン植民地化の過程で、
フランスはモシ諸国に対し、間接統治という手法を取り入れました。これは、既存の王権を利用することで、植民地支配を円滑に進める戦略でした。そのため、モシ諸国の王は、植民地時代においても一定の権力を保持することができました。
1960年、オートボルタ共和国(現在の
ブルキナファソ)が独立。モシ人は多数派
民族となり、現在に至ります。独立後も、特定
民族への富や権力の集中は起こっておらず、モシ人と他
民族間の軋轢は少ないとされています。ただし、
1985年のクリスマス戦争(
ブルキナファソと
マリ共和国の紛争)は、周辺情勢の複雑さを示す出来事でした。
文化:伝統と現代の共存
モシ人は伝統的に農耕を営む
民族であり、
トウジンビエや
モロコシなどを栽培しています。定住民として、散村型の集落を形成し、円筒形の泥壁の上に円錐形の草屋根を乗せた伝統的な住居が特徴的です。家屋内には仕切りがなく、シンプルな構造となっています。
言語や文化、王室の系譜などにおいて、ガーナ北部のダゴンバ人やマンブルシ人との共通点が多く見られ、近縁の
民族とみなされています。このことは、モシ人の歴史や文化を理解する上で、周辺
民族との比較研究が重要であることを示唆しています。
社会構造:近代化への対応
モシ社会は、伝統的な部族社会から近代国家へと移行する過程にあります。独立後、
ブルキナファソ政府は、近代的な教育制度やインフラ整備を進め、モシ社会にも変化をもたらしています。しかし、伝統的な社会構造と近代的な社会構造の両方が共存しており、モシ社会の複雑性を示しています。伝統的な慣習や社会制度が、現代社会の制度とどのように調和し、変化していくのかは、今後の重要な課題と言えるでしょう。
まとめ:多様な視点からの理解
モシ人を理解するには、彼らの歴史、文化、社会構造を多角的に捉えることが必要です。神話から始まる歴史、伝統的な農耕文化、近隣
民族との深い繋がり、そして近代化への対応。これらの要素が複雑に絡み合い、現在のモシ社会を形成しています。今後も、歴史的視点、文化人類学的視点、社会学的な視点など、多様な視点からモシ人を研究し続けることが重要です。