モナコの歴史

モナコ公国の歴史は、その地理的特性に深く根ざしています。現在のモナコ周辺、特に「モナコの岩」と呼ばれる岩山は、古代より人々の避難場所、そして要塞として利用されてきました。この岩山は、都市を保護するだけでなく、軍事戦略上も非常に重要な拠点だったのです。

初期の歴史とリグーリア人

モナコの岩における居住の痕跡は、旧石器時代後期、約40万年前まで遡ります。聖ジュディスト庭園内の洞窟からは、当時の人々が避難場所として利用していた証拠が見つかっています。歴史家のシケリアのディオドロスや地理学者ストラボンによれば、モナコに最初に定住したのは、現在のイタリア、ジェノバから移住してきたリグーリア人だったとされています。

古代リグーリア語はインド・ヨーロッパ語族に属すると推定されていますが、現代のリグーリア地方の住民が話すイタリア語の方言や、現代モナコ語との直接的なつながりはないとされています。

ギリシア人による植民とヘラクレス神話

マッサリア（現在のマルセイユ）から来たポカイア人によって、植民都市モノイコスが建設されました。このモノイコスという名称は、スペインからイタリアへと続く古代の通路を建設したとされる、ギリシャ・ローマ神話の英雄ヘラクレスに由来します。皇帝フラウィウス・クラウディウス・ユリアヌスも、ヘラクレスがモナコの港と海岸沿いの道を建設したと述べています。その道沿いにはヘラクレスの祭壇が点在し、モナコの岩の上には彼のための神殿が建てられたと言われています。

「ただ一つの家」を意味するMonoeciや「一軒家」を意味するMonoikosという言葉は、ヘラクレスやその神殿、そして岩の周囲から孤立した共同体を示すために使われるようになりました。

ローマの支配

ガリア戦争後、モネコスはユリウス・カエサルによってギリシアへの軍事作戦の休憩地として利用され、ローマの支配下に入りました。そして、アルプス山脈の先にある海岸地域として、ガリア・トランサルピナの一部として管理されました。

ローマの詩人ウェルギリウスは、「城のある海のそばの断崖、モネコス」に住んでいたと述べています。また、ヘラクレス神殿では「他の神々は一切同時に祀られていなかった」とも言われています。しかし、岩の多い地形や密集した都市のために発掘が困難であり、ヘラクレス神殿は未だ発見されていません。

港に関しては、ローマの軍人ファビウス・ウァレンスが閉じ込められたことが、ガイウス・プリニウス・セクンドゥスの『博物誌』やタキトゥスの『歴史』に記録されています。

暗黒時代からジェノバ人まで

モナコは、西ローマ帝国が476年に崩壊するまでローマ帝国の支配下にありました。その後、オドアケルによる支配、東ゴート王国による支配、そして東ローマ帝国による奪還を経て、7世紀にはランゴバルド人の支配下に入りました。その後、モナコはランゴバルド人とフランク人の支配を交互に受けることになります。この争奪戦によってモナコの人口は激減しましたが、975年にサラセン人が追放されると、11世紀までには再びリグーリア人によって植民が行われました。

1191年、神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ6世は、リグーリア人の故郷であるジェノヴァにモナコの宗主権を与えました。1215年6月10日、ジェノヴァから派遣された皇帝派（ギベリン）が、フルコ・デル・カッセロの主導のもと、岩山の頂上に要塞の建設を開始しました。この日付は、モナコ近代史の始まりの日としてしばしば言及されます。

皇帝派は、要塞を戦略的な軍事拠点として、地域の支配の中心に据えることを意図していました。そのために、モナコの岩の要塞周辺への移住を促進し、ジェノヴァなど周辺都市からの移住者に対して、払下げ公有地や免税などの優遇措置を提供しました。

グリマルディ家支配

オットー・カネッラの子孫であり、その長男グリマルド・カネッラから名前をとったグリマルディ家は、教皇派（ゲルフ）としてジェノヴァで有力な家柄でした。彼らは教皇派と皇帝派の派閥争いから逃れるため、フィエスキ家など他の教皇派の家々を率いてモナコに移住しました。

1297年、フランチェスコ・グリマルディがジェノバ共和国の主権下でモナコの岩山を掌握し、グリマルディ王朝が始まりました。その後、1346年にマントン、1355年にロクブリュヌ＝カップ＝マルタンへと支配を広げました。

1338年には、カルロ・グリマルディ率いるモナコ軍艦が、フランスやジェノヴァの軍隊と共に英仏海峡での軍事作戦に参加しました。その際、サウサンプトンから得た略奪品はモナコに持ち帰られ、公国の繁栄に貢献しました。

モナコ公オノレ2世は、1633年にスペインから、そして1641年にはペロンヌ条約によってルイ13世統治下のフランスから主権独立を維持しました。それ以来、モナコは1793年から1814年5月17日までのフランス革命期を除き、グリマルディ家の支配下にあります。

近代・現代のモナコ

ナポレオン失脚後、1815年のウィーン会議でサルデーニャ王国の保護領となり、1861年のフランス・モナコ条約でモナコの主権が確認されました。この条約でフランスはモナコ公国の存在を認めましたが、以前のモナコの国土の95％（マントンとロクブリュヌ＝カップ＝マルタン）がフランスに併合されました。条約後、モナコの軍事防衛はフランスの責任となり、国内ではモナコ王が絶対的な権力を保持していました。

1863年には、モンテカルロに有名なカジノが開業し、その税収がモナコのインフラ整備に充てられました。19世紀にはフランスとの鉄道が開通し、モナコの経済は飛躍的に発展しました。第一次世界大戦中の1918年には、フランス・モナコ保護友好条約が締結され、モナコの政策がフランスの政治的、軍事的、経済的利益と歩調を合わせることが定められました。

第二次世界大戦中、ルイ2世は中立を維持しようとしましたが、1942年にはイタリア軍、1943年にはナチス・ドイツ軍によって占領されました。しかし、ルイ2世の秘密の指示により、モナコ警察はゲシュタポの逮捕から住民を救うために奔走しました。戦後、1949年にルイ2世が死去し、孫のレーニエ3世が王位を継承しました。レーニエ3世は2005年に死去し、現在はその息子のアルベール2世が大公としてモナコを統治しています。

1962年にはモナコ憲法が改正され、死刑廃止、女性への参政権付与、基本的人権を保障するための最高裁判所の設置などが定められました。1993年には、モナコは国際連合に正式加盟しました。

2002年のフランスとの条約では、モナコに後継者がいない場合でも、公国がフランスに併合されずに独立を維持することが明確化されました。現在、モナコは温暖な気候、美しい景観、そしてカジノなどの娯楽施設で世界的に有名な観光地として発展しています。

もう一度検索