モリヤ (聖書)

モリヤ（Moriah）は、旧約聖書に登場する重要な地名であり、ヘブライ語では「ヤハウェが見る」という意味を持ちます。この地名は、新改訳聖書や新共同訳聖書で「モリヤ」と表記され、口語訳聖書では「モリア」とされています。一般的に、モリヤは今日のエルサレムの付近にあったと考えられています。

聖書におけるモリヤ

聖書本文では、『創世記』22章2節と『歴代誌下』3章1節の2箇所にモリヤに関する記述が見られます。

• - 創世記: 神はアブラハムに対し、息子イサクを「モリヤの地」へ連れて行くよう命じます。そこで、神はアブラハムに息子を犠牲として捧げることを求めますが、最終的には天使が現れてこれを制止します。この時、アブラハムはモリヤ山を「ヤハウェ・イルエ（ヤハウェがそなえる）」と名付けました。
• - 歴代誌下: ソロモン王が「エルサレムのモリヤ山」で神殿の建設を開始したことが記されています。この箇所から、モリヤ山はソロモンの父ダビデの前に神が現れた場所であるとも解釈できます。

モリヤは、ベエル・シェバから徒歩で約3日の距離にあったとされています。この記述から、モリヤが地理的にどのような位置にあったのかを推測することができます。

伝承におけるモリヤ

ユダヤ人の伝承では、ソロモン王が神殿を建てたエルサレムのシオン山が、聖書に記述されるモリヤであるとされています。歴代誌下には「エルサレムのモリヤ山上」という表現があることから、この考えが裏付けられます。さらに、アブラハムがイサクを捧げようとした場所は、オルナンの打ち場であったとされており、現在では「聖岩」として知られる場所がその地であると伝えられています。イスラム教徒は、この聖岩を「アブラハムの場所」と呼んでいます。

一方、サマリア五書ではモリヤを「モレ」と呼び、「シェケムの場、モレの樫の木」と関連付けています。そして、シェケムの南側に位置するゲリジム山を「モリヤ」であるとみなしています。この解釈は、聖書の記述とは異なり、モリヤの位置に関する別の見解を示しています。

ウルガタ訳（ラテン語訳聖書）では、「モリヤの地」を「幻の地」と訳し、七十人訳（ギリシア語訳聖書）では「エモリ人の地」と訳しています。これらの翻訳は、モリヤの解釈や位置に関して複数の可能性を示唆しています。

モリヤは、聖書における重要な出来事の舞台であり、信仰の試練、神の御臨在、そして神殿建設といった、重要なテーマを象徴する場所として、多くの人々に記憶されています。

参考文献

• - 『新聖書辞典』いのちのことば社、1985年
• - 中村妙子『旧約聖書ものがたり』日本キリスト教団出版局、2012年

関連項目

• - イサクの燔祭
• - 神殿の丘
• - エルサレム神殿

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