モンゴル国の国際関係

モンゴルの国際関係

モンゴルの国際関係は、近現代史において複雑な変遷を遂げてきました。特に、中国、ロシアとの関係は、モンゴルの政治、経済、社会に大きな影響を与え続けています。また、チベット仏教を背景としたチベットとの関係や、全方位外交への模索も重要な要素です。

ロシアとの関係

モンゴル人民共和国時代、モンゴルは「ソ連の16番目の共和国」と形容されるほどソ連との関係が緊密でした。ソ連のインターコスモス計画に基づく宇宙飛行士派遣や、キリル文字の採用など、ソ連の影響は社会のあらゆる面に浸透しました。民主化後も、多くの大統領や首相がソ連留学経験者であるなど、その影響は色濃く残っています。

2018年には、ロシア史上最大の軍事演習「ヴォストーク2018」に中国と共に初参加し、ロシアと中国が「同盟国」と見なされたことは、国際社会で注目を集めました。しかし、ソ連崩壊後のモンゴルは、ロシアへの依存を減らすために、他の国々との関係強化を模索するようになりました。

中国との関係

1949年に中華人民共和国と国交を樹立し、当初は友好関係を築いていました。しかし、中ソ対立の激化により、モンゴルはソ連との関係を優先したため、中国との関係は悪化しました。1980年代後半には中ソ関係が改善に向かい、モンゴルと中国の関係も正常化しました。

1990年代以降、中国はモンゴルの最大の貿易相手国となり、経済技術協力協定を結びました。一方で、モンゴル国内では中国資本の進出に対する警戒感も高まり、反中感情が強まっています。特に、資源開発における中国の影響力拡大や、中国人の不法入国、文化的な摩擦などが、その背景にあります。

2010年代には、モンゴルが資源輸出先を中国に依存している現状を改善するために、日本やアメリカのような西側諸国との関係を強化する動きが見られました。モンゴルは「第3の隣国」として西側諸国との外交関係を積極的に展開しています。

反中感情

歴史的に中国からの侵略を何度も受けたモンゴルでは、中国に対する敵対心が根強く残っています。清朝末期から中華民国時代にかけての略奪や、文化大革命期の南モンゴル弾圧は、今でも語り継がれています。

近年では、中国資本の「やりたい放題」な振る舞いや、中国人のマナーの悪さなどが反中感情をさらに強める要因となっています。モンゴル国内では、中国人を標的とした襲撃事件や、極右団体による排斥運動も発生しています。

モンゴル人は、中国を「草原に疱瘡をもたらす植民者」と見なしており、中国人の笑顔の裏に隠された本性を警戒しています。また、利益のために平気で裏切る中国人の思考形態を「中華」思想の特徴だと捉えています。

韓国・北朝鮮との関係

社会主義時代、モンゴルは北朝鮮との関係を重視していましたが、1990年に韓国と国交を樹立しました。現在では、韓国はモンゴル経済にとって重要なパートナーとなっています。韓国企業の進出や、韓国への出稼ぎ労働者からの送金は、モンゴル経済を支える重要な要素です。

一方で、韓国人による買春ツアーや、暴力団の存在、就業詐欺などが社会問題化しており、モンゴル国内で反韓感情も高まっています。また、韓国で開催された国際大会でのモンゴルに対する不当な扱いも、反韓感情を煽る要因となっています。

北朝鮮とは国交を維持し、両国に大使館を設置していますが、これは国際社会での発言チャンネル確保という外交戦略によるものです。

日本との関係

日本との国交樹立は1972年と比較的遅く、本格的な交流は1990年の民主化以降に進みました。モンゴルの民主化後、日本はモンゴルに対して多額の政府開発援助（ODA）を提供し、経済危機からの脱却を支援しました。

モンゴル人の対日感情は伝統的に良好であり、日本は「最も親しくすべき国」として認識されています。2010年には、日本国籍者に対するビザ免除措置が導入されるなど、両国間の関係は良好に発展しています。

多国間条約

1915年には、キャフタ条約（中俄蒙協約）がロシア、モンゴル（ボグド・ハーン政権）、中華民国との間で締結されましたが、ロシア革命により事実上無効となりました。ソ連崩壊後には、多くの国と経済協力に関する二国間条約が締結されています。

まとめ

モンゴルの国際関係は、歴史的経緯、地政学的な位置、経済的依存、国民感情などが複雑に絡み合って形成されています。特に中国との関係は、経済的な結びつきが強まる一方で、国民感情は反中感情が根強く、複雑な様相を呈しています。モンゴルは、こうした複雑な国際関係の中で、自国の独立と発展を模索しています。

もう一度検索