モートン・デヨ

モートン・リンドホルム・デヨ：大西洋と太平洋を駆け抜けた提督

モートン・リンドホルム・デヨ（Morton Lyndholm Deyo, 1887年7月1日 - 1973年11月1日）は、アメリカ海軍の中将であり、第二次世界大戦において、大西洋と太平洋の両戦線で重要な役割を果たしました。38年に及ぶ軍歴の中で、彼はその功績を認められ、海軍殊勲章やレジオン・オブ・メリットなどを受章しています。

生涯

前半生

1887年、デヨはニューヨーク州ポキプシーで誕生しました。海軍兵学校（アナポリス）を1911年に卒業。「アナポリス1911年組」と呼ばれたこの世代からは、ジョン・W・リーヴスなど、後の海軍を担う人材が輩出されました。同期には伊藤整一らがおり、太平洋戦争で対決寸前まで至ったのは、歴史の偶然と言えるでしょう。

卒業後、デヨは戦艦「バージニア」での勤務を皮切りに、駆逐艦「ダンカン」、装甲巡洋艦「ワシントン」などを経て、タンピコ事件やベラクルス占領に参加。第一次世界大戦では、駆逐艦「ジェンキンス」乗組として、ドイツのUボートから輸送船団を護衛する任務に就きました。1916年にはマリア・メイヨーと結婚しています。

戦間期

第一次世界大戦後、デヨはボストンの第1海軍区司令官付となり、海軍区の改革に携わります。その後、アメリカが占領していたドミニカ共和国の首都サントドミンゴに派遣され、軍政知事の副官を務めました。1923年からは海上勤務に戻り、戦艦「カリフォルニア」、重巡洋艦「シアトル」に乗り組み、艦隊司令官のスタッフとして勤務しました。1926年から1929年の間は母校アナポリスで教官を務め、駆逐艦の艦長を経て、海軍大学校で学び、後に教官も務めました。その後は軽巡洋艦「ミルウォーキー」の副官、アジア艦隊の作戦計画参謀などを歴任し、1939年に本国へ帰還後は、海軍省でデスクワークを担当しました。

ヨーロッパ戦線

1941年、大佐に昇進したデヨは、アメリカからアイスランドへ向かう輸送船団の護衛部隊を指揮。1942年には輸送艦「モンティセロ」艦長、重巡洋艦「インディアナポリス」艦長を歴任し、アッツ島、キスカ島方面で作戦に従事。1942年から1943年にかけては大西洋艦隊の駆逐艦部隊の総司令官を務めました。

1944年、少将となったデヨは、ノルマンディー上陸作戦における火力支援部隊を率い、シェルブール攻略作戦、南フランスへの上陸作戦を支援しました。

太平洋戦線

ヨーロッパ戦線での勝利が見え始めた1944年、デヨは太平洋戦線に転じ、第13巡洋戦隊司令官として、軽巡洋艦部隊を率いました。1945年、沖縄戦では第54任務部隊を指揮し、慶良間諸島攻略作戦、沖縄本島への艦砲射撃を実施。陸上部隊への火力支援を行いました。

大和との対決を逸する

1945年4月6日、日本海軍は戦艦「大和」を中心とする第二艦隊を沖縄へ向けて出撃させました。この情報を得たスプルーアンスは、デヨ率いる第54任務部隊に迎撃を命じました。しかし、「大和」は第58任務部隊（空母機動部隊）による攻撃を受け、沖縄に到達することなく沈没。デヨは艦隊決戦の機会を逃してしまいました。

この時、スプルーアンスはミッチャーに対しある程度、独自の判断で戦闘を行ってよいという権限を与えており、第58任務部隊の正確な位置を知らなかったことが、デヨではなくミッチャーに「大和」撃沈の栄光をもたらした要因となりました。

沖縄戦

「大和」沈没後も沖縄戦は続き、デヨの部隊は引き続き火力支援を行いました。4月12日には神風特攻を受け、旗艦「テネシー」が損傷するも、デヨ自身は無事でした。沖縄戦終結後、デヨは佐世保に進駐し、西日本地区の占領行政を一時担当しました。

戦後

戦後、デヨは第1海軍区司令官に就任し、海軍の効率化に尽力。1949年に中将として退役しました。1973年11月1日に86歳で亡くなり、アナポリスの墓地に埋葬されました。

彼の功績を称え、スプルーアンス級駆逐艦の一隻に「デヨ」と命名されました。

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