ヤシ油

ヤシ油とパーム油：ココナッツオイル、パーム核油、そしてその用途

ヤシ油は、ココヤシの果実から抽出される油脂で、一般的にココナッツオイルとして知られています。ココナッツの種子内部にある胚乳から精製され、独特の風味と香りを持ちます。一方、アブラヤシからも性質の似た油脂が得られます。アブラヤシの種子から抽出されるのはパーム核油、果肉からはパーム油です。これら3種類の油脂は、それぞれ性質や用途が異なりますが、「ヤシ油」という名称で混同されることも多いため注意が必要です。

製造方法：ドライプロセスとウェットプロセス

ココナッツオイルの製造には、大きく分けてドライプロセスとウェットプロセスがあります。

ドライプロセスでは、ココナッツの胚乳を乾燥させてコプラを作り、その後圧搾や溶剤抽出によって油脂を抽出します。この方法では、副産物としてタンパク質と食物繊維が豊富な搾りかす（mash）が得られますが、人間が食用とするには適しません。家畜の飼料として利用されます。

ウェットプロセスは、乾燥させずに生の胚乳をすり潰してココナッツミルクを作り、そこから油脂を抽出する方法です。ココナッツミルクは油と水が混ざった状態なので、遠心分離機や水蒸気蒸留などの技術を用いて水分を除去します。ドライプロセスに比べて収率が低く、大規模な設備投資が必要なため、コストが高くつきます。

パーム核油の製造も、アブラヤシの種子（パームカーネル）を乾燥させてから同様の精製工程を経ます。

性質：飽和脂肪酸の宝庫

ヤシ油とパーム核油の脂肪酸組成は類似しており、ラウリン酸を約50%、ミリスチン酸を15～20%、パルミチン酸を約10%含む飽和脂肪酸が大部分を占めます。このため、両者はラウリン系油脂とも呼ばれます。不乾性油であり、ココナッツオイルは20℃以下で固まる性質があります。パーム油とは性質が大きく異なることに注意が必要です。

用途：多様な産業分野で活躍

ヤシ油とパーム核油は、日本では年間約10万トン消費され、その約6割が洗剤や石鹸などの工業原料、約4割が食用として利用されています。水素添加によってココアバターの代用として、また乳[[脂肪]]に近い性質からホイップクリームやコーヒーフレッシュなどの原料としても使われています。中鎖脂肪酸が多く消化・吸収が良いため、乳幼児食や病人食にも適しています。しかし、独特の臭いが苦手な人もいるため、無香タイプの製品も販売されています。

パーム核油は保湿剤としての効果も期待されており、新生児の皮膚ケアにも用いられています。しかし、使用に際しては、院内感染のリスク増加にも配慮が必要です。また、スチロール容器との相性が悪く、カップ麺などに使用した場合、容器が溶ける可能性があるため注意が必要です。

名称の混乱：ヤシ油の定義

「ヤシ油」という名称は、ヤシ科植物全体を指すため、ココナッツオイルだけでなく、パーム油やパーム核油も含まれる可能性があります。この曖昧さを避けるため、「ココナッツオイル」「パームオイル」といった具体的な名称を使用することが推奨されます。

まとめ

ヤシ油、パーム核油、パーム油は、それぞれ異なる特徴を持つ油脂です。用途や安全性、そして正確な名称の理解が、適切な選択と利用に繋がります。本稿が、これらの油脂に関する知識を深める一助となれば幸いです。

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