ヤロスラヴリ旅客機墜落事故

2011年9月7日、ロシアのヤロスラヴリ近郊で、プロアイスホッケーチーム「ロコモティフ・ヤロスラヴリ」の選手団を乗せたヤク・サービス9633便（Yak-42D）が墜落しました。この事故は、KHL（コンチネンタル・ホッケー・リーグ）の開幕戦に向かう選手団を乗せたチャーター機が、離陸直後に発生した悲劇であり、多くの人々に深い悲しみを与えました。

事故の概要

事故機は、ミンスクで行われる予定だったKHL開幕戦のためにチャーターされたものでした。トゥノシナ空港を離陸滑走中、機体は上昇することができず、滑走路先の進入灯に接触。その後、約1キロメートル離れた地点に墜落しました。

この事故により、選手、コーチ、スタッフを含む乗客36名と乗員7名の計43名がその場で死亡しました。選手のアレクサンドル・ガリモフと整備士の2名が救助されましたが、ガリモフはその後病院で亡くなり、最終的な犠牲者数は44名となりました。

国際アイスホッケー連盟の会長は、この事故を「我々のスポーツ史の中で最も暗い日」と表現しました。ロコモティフ・ヤロスラヴリは、この事故を受けて2011-12シーズンのKHLリーグ参加を取りやめ、代わりにVHL（ロシアン・メジャーリーグ）に参加し、プレーオフに進出することになりました。

事故発生時の状況

事故当日のトゥノシナ空港は天候が良好で、風も穏やかでした。しかし、離陸時、9633便は十分な高度を得ることができず、滑走路末端付近で機首を上げたものの、わずか6メートルしか上昇できませんでした。機体は進入灯に接触した後、左に旋回しながら地面に激突しました。

目撃者の証言によると、機体は障害物に接触後、炎に包まれたとのことです。また、別の目撃者は墜落直前にエンジンの音が静かになったと証言しています。これらの証言は、事故原因の究明に重要な情報を提供しました。

事故原因

国家間航空委員会の調査によると、事故の直接的な原因はパイロットの操作ミスでした。機長と副操縦士はともにベテランでしたが、Yak-42の操縦経験が浅く、訓練も不十分でした。特に副操縦士は神経系の病気を患っており、感覚が鈍くなっていたことが判明しました。

さらに、Yak-40とYak-42ではブレーキペダルの形状が異なっており、副操縦士は誤ってブレーキを踏んだまま離陸滑走を開始。機長は離陸中止を試みましたが、副操縦士が激怒したため、再度離陸を試みました。しかし、機体は十分な揚力を得られず、障害物に接触し墜落に至りました。

事故機について

事故機はヤコヴレフYak-42Dで、1993年に製造されたものでした。複数の航空会社を経て、ヤク・サービスによって運行されていました。事故当時、機体は耐用年数の60％程度を使用しており、オーバーホールの予定があったことが報告されています。

ヤク・サービスは、過去に耐空性や安全面を問題視され、欧州委員会から調査を受けていました。そのため、運行制限や欧州空域の飛行禁止措置が課せられたこともありました。しかし、これらの措置は事故の防止には繋がりませんでした。

乗員・乗客

事故機には乗員8名、乗客37名が搭乗していました。そのうち、選手のアレクサンドル・ガリモフと整備士の2名が生存しましたが、ガリモフはその後死亡しました。生存者2名は救出時にショック状態でしたが意識はあり、治療のためモスクワに緊急搬送されました。

この事故は、プロスポーツチームを巻き込んだ悲劇として、世界中に大きな衝撃を与えました。そして、航空機の安全運行やパイロットの訓練の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

ヤロスラヴリ旅客機墜落事故