ユグル族

ユグル族：歴史、文化、そしてアイデンティティ

中国に暮らすユグル族は、複雑で魅力的な歴史を持つ少数民族です。人口は約14,000人と少なく、甘粛省の粛南ユグル族自治県を中心に、一部は酒泉市にも居住しています。モンゴロイド系民族に分類され、そのルーツはテュルク系とモンゴル系の両方にまで遡ります。

複雑な歴史の織りなす民族

ユグル族の起源は、ウイグル可汗国の崩壊後にモンゴル高原から甘粛地方へ移動してきた回鶻の一派にまでさかのぼると考えられています。彼らは「サリク・ウイグル（黄色いウイグル）」と呼ばれ、中国の史書には「黄頭回鶻」や「撒里畏兀児」といった名称で登場します。

9世紀には甘州ウイグル王国を建国し、仏教やマニ教が栄えた盛況を極めました。しかし、11世紀には西夏王国に征服され、その後もモンゴル帝国、そして明朝といった強大な勢力の下で歴史を歩みます。元朝時代にはチャガタイ系のバイダカンの子孫が「安定王」としてこの地を支配し、明朝においても安定衛などの衛所が設置されました。

16世紀にはトゥメト部のアルタン・ハーンによる征服なども経験し、モンゴル諸語を話すユグル族の一部は、モンゴル人の後裔、もしくはモンゴル化された集団である可能性が指摘されています。最終的には17世紀、清朝に組み込まれることとなりました。

言語と文化の多様性

ユグル族の言語は、テュルク諸語に属する西部ユグル語と、モンゴル諸語に属する東部ユグル語の2種類が存在します。しかし、現代では多くのユグル族が中国語を話し、独自の言語を失いつつあります。どちらも文字を持たないため、歴史記録には主に漢字やチベット文字が使用されてきました。

ユグル族の文化は、遊牧生活に根差した独特のものです。伝統的には畜産業が中心であり、信仰面ではチベット[[仏教]]（ゲルク派）とシャーマニズムが融合した信仰体系が特徴的です。

名前とアイデンティティ

「ユグル族」という名称は、彼らの自称に由来します。テュルク系では「Yogïr」や「Sarïg Yogïr」、モンゴル系では「Yogor」や「Šera Yogor」と自称しており、「Sarïg」や「Šera」は「黄色い」を意味します。歴史上は「撒里畏兀児」や「西喇堯乎児」といった名称でも呼ばれてきました。

結論

ユグル族は、複雑な歴史的経緯と、テュルク系とモンゴル系の両方のルーツを持つ、ユニークな少数民族です。独自の言語と文化を維持しながら、現代中国社会の中でそのアイデンティティを模索し続けています。彼らの歴史と文化を理解することは、多様な民族が共存する中国社会を理解する上で重要な鍵となるでしょう。 今後の研究により、ユグル族の言語や文化、歴史に関する更なる知見が得られることが期待されます。

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