ユナイテッド航空2885貨物便墜落事故

概要

1983年1月11日、ユナイテッド航空2885便貨物機（ダグラスDC-8-54F型機、機体記号N8053U）は、デトロイト空港を離陸直後に墜落しました。この事故で、3名の乗員全員が命を落としました。事故機は、前日の1月10日にシカゴ・オヘア国際空港を2894便として出発し、クリーブランドを経由してデトロイトに到着。そこで貨物の積み下ろしと燃料補給を行い、ロサンゼルス国際空港に向けて再出発しました。

離陸滑走は正常に見えましたが、機体が滑走路を離れるとすぐに機首が異常に上がり、エンジンのサージが発生。機体は右に傾き、高度1,000フィートで90度バンク状態となり失速、地上に激突して爆発しました。

原因

NTSB（国家運輸安全委員会）の調査により、事故の背景には複数の要因が重なっていることが明らかになりました。デトロイトでの貨物積み下ろし中、機長は副操縦士に対し、セカンドオフィサー（SO）に離陸操作を代わらせることを提案しました。これは、FAA（連邦航空局）の規則およびユナイテッド航空の内規に反する行為でした。副操縦士はこの提案を受け入れ、セカンドオフィサーは当初は消極的でしたが、最終的に離陸タクシング中に席を交代しました。

セカンドオフィサーは、過去にDC-8の副操縦士訓練を受けていましたが、能力不足を理由に訓練を中断されていました。その後、ボーイング737の訓練も受けましたが、やはり能力が不十分と評価され、最終的にはパイロットへの昇進を諦め、セカンドオフィサーとして勤務を続けることに合意していました。

離陸直後に機首が異常に上がった直接の原因は、スタビライザートリムが極端に上昇側に設定されていたことでした。このトリム設定は、直前のフライトで着陸した際に設定されたままで、通常はクルーがリセットする必要がありますが、このトリム設定を失念していました。セカンドオフィサーは、このトリム設定を知らないまま操縦桿を引いたため、機首が異常に上がってしまいました。また、席の交代による混乱のため、離陸チェックリストでトリムの状態を確認できませんでした。

夜間の離陸で目視できる目標物がない中、経験不足のセカンドオフィサーは、迎角過大による空気量の減少によってエンジンをサージさせ、機体はバンク過大に陥りました。機長が修正を試みましたが、セカンドオフィサーが操縦桿を強く握ったまま動けず、有効な操作ができなかった可能性があります。いずれにしても、機長がセカンドオフィサーに離陸操作を任せたことが、事故の大きな要因となりました。

事故調査では、ユナイテッド航空の他のパイロットも、回送便や貨物便でセカンドオフィサーに離陸や着陸をさせていたことが判明しました。これは、安全規則を軽視した慣例的な行為であり、今回の事故の背景にある要因の一つと考えられます。

結論

ユナイテッド航空2885便の墜落事故は、パイロットの判断ミス、規定違反、そして経験不足の操縦士の組み合わせによって引き起こされた悲劇でした。この事故は、航空業界における安全管理の重要性と、規則遵守の徹底の必要性を改めて示唆しています。

脚注

この事故に関する詳細な情報は、NTSB（国家運輸安全委員会）の事故報告書（英文）や、デヴィッド・ビーティ著『機長の真実』(講談社)で知ることができます。

関連項目

民航空運公司10便墜落事故
アエロフロート航空593便墜落事故

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