ユーロスター・イタリア

ユーロスター・イタリア：イタリア高速鉄道の先駆け

ユーロスター・イタリア（Treni Eurostar Italia, ES*）は、かつてイタリアで運行されていた高速列車のブランド名です。旧イタリア国鉄（Ferrovie dello Stato）および、民営化後のトレニタリアによって運行されていましたが、2012年に後継サービスである「レ・フレッチェ」（フレッチャロッサ、フレッチャルジェント、フレッチャビアンカ）に完全に置き換えられ、その歴史に幕を閉じました。

概要

ユーロスター・イタリアは、現在の高速鉄道サービス「レ・フレッチェ」の前身であり、英仏間を結ぶユーロスターよりも歴史が古い列車でした。運行開始当初は、日本の新幹線0系電車を彷彿とさせる振り子式車両のETR450が使用されていました。主要都市から地方都市まで、イタリア全土に広がる路線網を有していました。

1996年頃には、一等車と二等車ともに飲み物や軽食のサービスがありましたが、その後、茶菓のサービスは一等車のみとなりました。また、一等車では無料で新聞が配布されていました。2001年頃までは自由席も連結されていましたが、その後は全車指定席となりました。座席等級は一等車と二等車の2種類で、一等車と二等車の間に予約制の食堂車が連結されていました。

鉄道時刻表では「ES」と表記され、他の列車と区別されていました。ETR500の登場時には、名称を巡って英仏間のユーロスターと対立がありましたが、結果的にイタリア側が譲歩し、「ユーロスター・イタリア」という名称に落ち着きました。

2008年12月には、ミラノ・ボローニャ間の高速新線が開業し、トリノ、ミラノ、ヴェネツィア、パドヴァから、ボローニャ、フィレンツェ、ローマ、ナポリを結ぶ区間を走行する列車には「ユーロスター・イタリア・アルタ・ヴェロチタ（Eurostar Italia Alta Velocità）」という名前が与えられました。この列車は従来のユーロスター・イタリアよりも高額な専用料金が設定され、高速新線上では最高300km/hで運行されていました。

アルタ・ヴェロチタには、ミラノ・ローマ間をノンストップで結ぶ列車も存在し、「AV FAST（アルタ・ヴェロチタ・ファスト）」と呼ばれていました。2009年12月にはボローニャ・フィレンツェ間の高速新線も開業し、ミラノからローマに至る高速新線がほぼ完成したことで、AV FASTは同区間を約2時間59分で結ぶことが可能になりました。

その他にも、インターシティで使用される客車を、かつてユーロスター・イタリアで使用されていた機関車（ETR500の第一世代）で挟んだ編成があり、「ユーロスター・シティ（Eurostar-city）」としてミラノ・ヴェネツィア間などで運行されていましたが、後にフレッチャビアンカに置き換えられました。

2012年、ユーロスター・イタリアのブランド名は正式に廃止され、列車は「フレッチャロッサ」と「フレッチャルジェント」という2つの新しい運行種別に振り分けられました。

車両

ユーロスター・イタリアでは、1988年に登場した振り子式車両ETR450を皮切りに、ETR460、470、480と後継の振り子式車両が続々と登場しました。1996年には、動力集中方式のETR500が導入され、最高速度300km/hでの営業運転が実現しました。ETR500のデザインは、イタリアの工業デザイナーであるピニンファリーナが手掛けました。

2008年には、内外装が更新され、車体外装は赤を基調としたシルバーグレーとのツートンカラーとなりました。この改装後の車両には「フレッチャロッサ（Frecciarossa）」という愛称が与えられ、後にこれが正式な列車種別名となりました。

フレッチャロッサでは、2015年6月14日から、ミラノ・ローマ間で新型車両ETR400を使用した「Frecciarossa1000」の営業運転が開始されました。ETR400の開発・製造はアンサルド・ブレーダ社とボンバルディア社が担当し、デザインはベルトーネが手掛けました。新型車両の営業最高速度は360km/hで、ミラノ・ローマ間の所要時間も最短2時間20分に短縮される予定です。

まとめ

ユーロスター・イタリアは、イタリアの高速鉄道の発展に大きく貢献した列車でした。その技術やサービスは、現在のフレッチャロッサなどの高速列車に引き継がれています。

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