ヨセ

囲碁のヨセとは

囲碁におけるヨセとは、対局の終盤に行われる、自身の地を確定させるための着手のことを指します。布石、中盤を経て、双方の地のおおよその領域が明らかになった後、その境界線を確定していく段階です。ただし、中盤とヨセの境目は明確ではなく、状況によって変化します。

ヨセの進め方

ヨセでは、一般的に価値の大きい場所から順にヨセていき、次第に小さな場所へと移っていきます。最終的には、半コウ（ごく小さなヨセ）を争って終局を迎えるのが一般的な流れです。そのため、どのヨセが何目分の価値があるのかを正確に判断しながら打ち進めることが非常に重要になります。

ヨセ合いの過程では、互いに反発し合い、思わぬところから戦いが再燃し、中盤のような激しい攻防になることもあります。また、石の根拠に関わるような大きなヨセは、序盤から打たれることもあります。

ヨセの名手としては、安井知得、石田芳夫、李昌鎬、朴永訓などが知られています。

ヨセの大きさ

ヨセの価値は、一手打つことによって得られる目数で測られます。例えば、以下の図のような場合を考えます。

例1

黒が1と打つと、aの点はどちらの地でもないダメになります。逆に白が1の点に打つと、aの点は白地1目となります。つまり、黒1の手は白地1目を消す「1目の手」ということになります。

例2

黒が1に打つと、△の白石が取れるため、地1目とアゲハマ1子で2目となります。逆に白が1の点に打てば、▲の黒石が取れ、同様に2目＋アゲハマ1子で4目の価値を持ちます。したがって、1の点に先着した方は2+4で6目の得をすることになり、1は出入り6目の手ということになります。



詳細は、出入り計算の項目を参照してください。

ヨセに関する用語

大ヨセ

一般的に、10目以上の価値がある大きなヨセを指します。例えば、星の定石からできる形における、下図の黒1のような手は、ヨセに入ったら真っ先に打たれるほどの大きな手です。この後、黒はaから符号順にさらにヨセることができます。逆に白から1の点に押さえられると、gの点に打たれて一子が取られる手が残ります。これらを考慮すると、この手はだいたい15目程度の価値があると考えられます。

小ヨセ

一般的に、10目以下のヨセを指します。第一線のハネツギなどがこれに相当します。

先手ヨセ・後手ヨセ

先手ヨセとは、一方のヨセに対して相手が手を抜くと、大きく地を荒らされたり、石を取られたりする手が残るため、相手が対応せざるを得ない手段のことです。さらに次のヨセに手を回すことができるため、価値が高いとされます。一方、ヨセた後に特に大きな手が残らず、相手が他の着点に回れるようなヨセを後手ヨセと呼びます。

例えば、以下の図の場合、黒1から3のハネツギに対して白が手を抜くと、黒から4の点に切られて大きく地を荒らされるため、白は4の受けを省くことができません。これは「黒の先手ヨセ」と呼ばれます。一方、黒5から7のハネツギは、後に黒からの手段もないため、白は他のヨセに先行できます。これは「黒の後手ヨセ」と呼ばれます。


ただし、先手ヨセは絶対的なものではありません。例えば、上記の白4の手で、他にもっと大きな着点があれば、白は手を抜いてそちらへ向かうことになります。つまり、先手後手は、その局面全体を見て判断する必要があります。

両先手

どちらから打っても先手になるようなヨセのことです。例えば、以下の図では、どちらから打ってもコスミからハネツギが先手になります。両先手の場所は、ヨセに入ったら真っ先に打つべき場所となります。

片先手

一方だけが先手となり、もう一方からは後手となるような場所のことです。一般に、先手の側が打つことになります。以下の図では、黒1に対して受けなければ2の点に打たれて全滅するため、ここは黒が先手となります。一方、白から1の点に打つのは1目のヨセですが後手。「黒1は黒の権利」などと表現されます。

両後手

どちらから打っても後手となるヨセです。以下の図の場合、白からのa、b、cと、黒からのc、d、aはどちらも後手です。

逆ヨセ

片先手である場所を、後手の側から打つことです。先手ヨセを防ぐことができるため、両後手の場所の2倍の価値があると計算されます。例えば、以下の図の形は、左図のように白1から6までが白の権利ですが、黒は右図の1に打てば、この先手ヨセを封じることができ、大きな逆ヨセとなります。

参考図書

『新・早わかり ヨセ小事典―碁敵に勝つヨセの順序と手筋』日本棋院
加納嘉徳『新編 ヨセ辞典』誠文堂新光社
『林海峯のヨセに強くなる本』誠文堂新光社
石田芳夫『目で解くヨセのテクニック』誠文堂新光社

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