ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ

ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ（Johann Joachim Quantz, 1697年1月30日 - 1773年7月12日）は、18世紀のヨーロッパにおいて傑出したフルート奏者、作曲家として名を馳せました。彼はハノーファー近郊のオーバーシェーデンで生まれ、ポツダムで生涯を終えました。特に、プロイセン国王フリードリヒ大王のフルート教師としての逸話は、フリードリヒ・ニコライの著書『フリードリヒ大王の逸話集』に収録された『音楽家クヴァンツについて』で広く知られています。

生い立ちと音楽の道へ

1697年に生まれたクヴァンツは、10歳の時に鍛冶屋であった父を亡くし、ライプツィヒ近郊のメルゼブルクに住む楽師の叔父に引き取られました。叔父の指導のもと、ヴァイオリン、オーボエ、チェンバロなど様々な楽器を学び、音楽家としての基礎を築きました。

1716年、19歳でドレスデンの楽隊に入団。作曲家ヤン・ディスマス・ゼレンカに対位法を学び、ウィーンではヨハン・ヨーゼフ・フックスに師事し、音楽の腕を磨きました。1718年には、ドレスデンとワルシャワで活動していたポーランド王兼ザクセン選帝侯アウグスト3世の楽団でオーボエ奏者として活躍しました。

フルート奏者への転身と才能の開花

1719年、クヴァンツはフルートの卓越した名手であったピエール＝ガブリエル・ビュファルダンとの出会いをきっかけにフルートを学び始め、フルート奏者として新たな道を歩み始めました。その後、パリをはじめとする各地で演奏を行い、その才能は高く評価されました。1723年には、プラハでジュゼッペ・タルティーニの演奏会に参加するなど、音楽家としての経験を積みました。

1724年、イタリアへ旅行し、ローマでフランチェスコ・ガスパリーニに対位法を学びました。1726年にはロンドンを訪れ、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルと出会い、音楽的な交流を深めました。1727年には、ドレスデン王宮礼拝堂のオーケストラとフルート独奏で共演し、その才能を披露しました。

フリードリヒ大王との出会いと宮廷音楽家としての活躍

1728年、クヴァンツはフリードリヒ2世（当時は皇太子）にフルート教師として仕えることになりました。1740年にフリードリヒ2世が王位に就くと、クヴァンツは専属の宮廷音楽家として迎えられ、ポツダムに居を構え、残りの人生を王に仕え、演奏と作曲活動に専念しました。

フリードリヒ大王の宮廷には、当時一流の音楽家たちが集まっていました。クヴァンツの他に、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ、ヨハン・ゴットリープ・グラウン、フランツ・ベンダなどがいました。大王はクヴァンツを厚遇し、固定給に加え、フルート曲を作曲するたびに特別な謝礼金を支払いました。

音楽理論家としての功績

1752年、クヴァンツは著書『フルート奏法試論』を出版しました。この著書は、当時の音楽スタイルや演奏法を知る上で貴重な資料であり、現代においても重要な教本として広く読まれています。

1773年7月12日、クヴァンツはポツダムで生涯を閉じました。76歳でした。

作品と影響

クヴァンツは、300曲を超えるフルート協奏曲、約200曲のフルートを含む室内楽曲や無伴奏曲を作曲しました。これらの作品は今日でも演奏され、多くの人々に親しまれています。

外部リンク

ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
フリードリヒ・ニコライ編著　『音楽家クヴァンツについて』

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