ライカミング O-145

ライカミング O-145：小型航空機用エンジンの詳細

ライカミング O-145は、1938年にアメリカのライカミング・エンジンズによって開発された、小型航空機向けの水平対向4気筒空冷レシプロエンジンです。1940年代末まで生産され、小型機の世界で一定の役割を果たしました。本記事では、O-145を中心に、減速機付きの姉妹機であるGO-145についても詳しく解説します。

開発と設計

O-145は、出力の異なる3つのバージョンが設計されました。

O-145-A：55 hp (41 kW)
O-145-B：65 hp (48 kW)
O-145-C：75 hp (56 kW)

実際に生産されたのはO-145-Bが大部分で、AバージョンとCバージョンの生産数は少数でした。各バージョンは、シリンダーのストローク、ボア、容積は共通であり、BバージョンやCバージョンでの出力向上は、圧縮比を増すことと回転数を上げることで実現されました。キャブレターには、ストロンバーグNA-S2またはNA-S2A、マーベルMA-2またはMA-2-Aが使用されています。

後期型では、二重点火方式が採用され、マグネトー式点火装置としてシンティラSF-4L、SN4LN-20、SN4LN-21、スペリオルSMA-4、エディソン・スプリットドルフRMA-4のいずれかが2個ずつ使用されました。

基本となるO-145-Aは、2,300 rpmで55 hp (41 kW)の出力を発揮し、重量は75 kgでした。競合するコンチネンタルO-170エンジンの出力向上に対抗するため、ライカミングはO-145-BおよびCを開発しました。O-145-Bは回転数を2,550 rpmに上げて最高出力を65 hp (48 kW)とし、O-145-Cでは回転数を3,100 rpmまで引き上げて最高出力を75 hp (56 kW)としました。しかし、高回転高出力化により、トルク変動が大きく、神経質な出力特性となってしまいました。

GO-145

GO-145は、減速機を内蔵した姉妹機で、C型系列をベースに1938年に開発されました。減速比は27:17 (1.59:1) で、出力75 hp (56 kW)時にエンジン回転数が3,200 rpm、プロペラ回転数が2,013 rpmとなる設計でした。減速機はエンジン本体の前面にボルトで取り付けられ、総重量は88 kgに増加しました。スターターやジェネレーターは搭載されていませんでした。

GO-145は、減速機関連の不調が頻発し、信頼性が低いという評判が立ちました。パイロットがエンジンの取り扱いを誤ると、巡航回転数が極端に低下し、減速ギアの摩耗を招いたことが原因でした。

1950年11月2日には、1941年8月1日以降生産されていないO-145-B1、C1、GO-145-C1の型式証明が無効となりました。しかし、1949年8月24日以降に製造されたO-145-B2、-B3、-C2、GO-145-C2、-C3の型式証明はその後も有効とされました。ライカミングはO-145の製造終了後、後継機種としてO-235を開発しました。

派生型

O-145-A: 55 hp (41 kW), 単点火方式
O-145-A3: 55 hp (41 kW), 単点火方式, スターター・発電機搭載
O-145-B1: 65 hp (48 kW), 単点火方式
O-145-B2: 65 hp (48 kW), 二重点火方式
O-145-B3: 65 hp (48 kW), 二重点火方式
O-145-C1: 75 hp (56 kW), 単点火方式
O-145-C2: 75 hp (56 kW), 二重点火方式
GO-145-C1: 75 hp (56 kW), 減速機付き, 単点火方式
GO-145-C2: 75 hp (56 kW), 減速機付き, 二重点火方式
GO-145-C3: 75 hp (56 kW), 減速機付き, 二重点火方式

主な搭載航空機

O-145
パイパー J-3L カブ
GO-145
パイパー J-5B カブ・クルーザー
ヴォート・シコルスキー VS-300

主要諸元 (GO-145-C2)

形式：減速機付き空冷水平対向4気筒
ボア：3.625 in (92 mm)
ストローク：3.500 in (89 mm)
排気量：144.5 in³ (2.4 L)
重量：193 lb (87.5 kg)
燃料供給方式：キャブレター式（ストロンバーグNA-S2、NA-S2A、マーベルMA-2、MA-2-A）
燃料：73オクタン以上の航空ガソリン
吸気方式：自然吸気式
弁開閉方式：OHV
最高出力：75 hp (56 kW)/3,200 rpm
排気量対出力比：0.52 hp/in³ (23.3 kW/L)
圧縮比：6.5:1
単位重量当たり最高出力：0.39 hp/lb (0.64 kW/kg)

関連項目

航空用エンジンの一覧

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