ラヨーン県

ラヨーン県

タイ王国中部、タイランド湾沿岸部に位置するラヨーン県（Rayong, タイ語: จังหวัดระยอง）は、タイ東部の主要県の一つです。県の北部は緩やかな丘陵地帯が広がりますが、その大部分は広大な平地で構成されており、多様な地形を持っています。南部ではタイランド湾に面しており、美しい海岸線と多くの島々を有しています。陸路では、北西にチョンブリー県、南東にチャンタブリー県と接しています。

地理と観光

ラヨーン県の沿岸部には、大小様々な島々が点在しており、その中でも最も有名なのが美しい「サメット島（Ko Samet）」です。白くきめ細やかな砂浜と透明度の高いエメラルドグリーンの海は、国内外から多くの観光客を魅了しています。バンコクからのアクセスも比較的良好なため、週末の小旅行先としても人気があり、海水浴、ダイビング、シュノーケリングなどのマリンアクティビティや、静かなビーチでのリラクゼーションを楽しむことができます。サメット島以外にも、人里離れた静かな雰囲気を残す島々が存在し、隠れたリゾート地として注目されています。

歴史的な意義

ラヨーン県は、タイの歴史において非常に重要な役割を担った地として語り継がれています。18世紀後半、ビルマ軍の猛攻によりアユタヤ王朝が崩壊寸前となった時、後のトンブリー王朝初代国王となるタークシン王（当時は高官）が、アユタヤを脱出し、このラヨーンに拠点を移しました。彼はラヨーンで、崩壊した王朝に代わる勢力として、特に海軍の再組織と兵力の結集を図りました。その後、彼はさらに東のチャンタブリーへ進み、そこで陸軍を増強し、最終的にビルマ軍を破ってアユタヤを奪還し、新しい王朝を開く偉業を成し遂げます。ラヨーン市内には、この救国の英雄であるタークシン王の功績を称え、彼を祀る「タークシン廟」があり、多くの人々が参拝に訪れます。この歴史は、ラヨーン県の人々にとって大きな誇りであり、観光の側面からも歴史的な見どころとなっています。

現代の産業

現在のラヨーン県は、タイ経済、特に東部経済回廊（EEC）の中核を担う重要な工業地帯へと発展しました。県内には、「イースタンシーボード工業団地」や「アマタシティー工業団地」といった大規模な工業団地が集積しており、自動車産業、石油化学、電機、エレクトロニクスなど、多様な分野の国内外の企業が進出しています。これらの工業は、タイの輸出産業を牽引し、多くの雇用を生み出す原動力となっています。工業の発展が進む一方で、ラヨーン県は農業や漁業も盛んです。特にドリアン、マンゴスチン、ランブータンなどのトロピカルフルーツの栽培が有名で、新鮮な魚介類も豊富に水揚げされます。これらの農産物や海産物は、県内の市場やレストランで提供され、多くの人々に親しまれています。

行政区分

ラヨーン県は、行政上、8つの郡（アムプー）に区分されています。さらにその下には58の町（タムボン）があり、最も基礎的な地域単位である388の村（ムーバーン）によって構成されています。これらの行政組織が連携し、地域の開発や住民への行政サービスの提供を行っています。

ラヨーン県は、その歴史的な背景、豊かな自然景観、そして現代的な工業力が融合した、多面的な魅力を持つ地域と言えます。

関連項目

サメット島
タークシン王
イースタンシーボード工業団地
アマタシティー工業団地
ラヨーンFC
ラヨーン・ユナイテッドFC

もう一度検索