ランプ小屋

ランプ小屋：消えゆく鉄道遺産

明治時代の鉄道駅には、独特の建造物がありました。それが「ランプ小屋」です。この小屋は、客車や駅務、保線作業用の照明ランプや燃料を保管する倉庫として利用されていました。堅牢で耐火性に優れた煉瓦造りが一般的で、主要駅には必ずと言っていいほど存在した、鉄道の歴史を語る上で欠かせない遺構です。

明治時代の灯油ランプとランプ小屋

明治時代、木造客車の車内照明は灯油ランプが主流でした。夕暮れ時に駅に停車すると、係員が各客車の屋根に上がり、作業窓からランプを吊り下げるという作業が行われていました。このランプと燃料を保管するための施設が、ランプ小屋です。ランプ小屋の必要性は、駅業務における照明の重要性と、灯油ランプの可燃性という二つの側面から生じていました。

電気照明の普及とランプ小屋の役割変化

明治時代の末期から、車軸発電機による電気照明が普及し始めました。これにより、車内照明用灯油ランプの需要は減少し、ランプ小屋の役割は業務用の灯油カンテラと燃料の保管へと変化しました。カンテラはランプに比べてサイズが小さいため、ランプ小屋は必要以上に広い空間を持つことになります。そのため、大正時代以降は新規のランプ小屋の建設は少なかったと考えられています。

現代におけるランプ小屋

現代では、灯油カンテラの使用も減少しており、多くの駅ではランプ小屋は一般的な倉庫として使用されているか、解体されています。残っているランプ小屋の中には、資料の散逸により正確な建築年が不明なものや、実際の建築時期と公式記録に食い違いがあるものも少なくありません。特に、駅の開設年と同じ建築年とされるものは、実際には後に設置されたか、建て替え前の建築年を引き継いだ可能性があります。近年まで現存していたランプ小屋の多くは、明治30年代から40年代に建設されたものと推測されています。

珍しい煉瓦積み「フランドル積み」

一部のランプ小屋では、「フランドル積み」（フランス積みとも呼ばれる）と呼ばれる、明治初期の建造物に見られる独特の煉瓦積み工法が用いられています。この工法を用いたランプ小屋は数少なく、その建築時期についても必ずしも駅開業と一致しないケースがあり、詳細については未解明な部分も多いです。

現存するランプ小屋

現在も残っているランプ小屋は、貴重な鉄道遺産です。全国各地に点在しており、それぞれが歴史を物語っています。以下に、現存する（もしくは過去に現存していた）ランプ小屋の例を挙げます。これらのランプ小屋は、建築様式や歴史的背景などから、研究対象としても注目されています。

山部駅
金山駅 (北海道)
山都駅
馬下駅
松川駅
三条駅
甲府駅
小諸駅
東富山駅
津幡駅
市振駅
敦賀港駅跡
原駅 (静岡県)
藤枝駅
木曽川駅
半田駅
柘植駅
加茂駅 (京都府)
稲荷駅 (明治12年築、現存する最古のランプ庫)
新町駅
通津駅
大牟田駅
* 鷹ノ巣駅

これらのランプ小屋は、鉄道の歴史を直接的に示す貴重な存在であり、その保存と活用が強く望まれています。多くのものが老朽化が進んでいることから、適切な保全措置が不可欠です。

まとめ

ランプ小屋は、近代日本の鉄道発展の歴史を物語る重要な遺構です。その多くは消滅しましたが、現存するものは貴重な文化遺産として保護していく必要があります。ランプ小屋を通して、日本の鉄道史の一端に触れてみてください。

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