ラ・ガリソニエール級軽巡洋艦

ラ・ガリソニエール級軽巡洋艦：フランス海軍の誇り高き軽巡洋艦

第二次世界大戦前夜、フランス海軍は地中海を挟んで対峙するイタリア海軍に対抗するため、新たな軽巡洋艦の建造に着手しました。その結果誕生したのが、ラ・ガリソニエール級軽巡洋艦です。本級は、フランス海軍が同大戦前に就役させた最後の軽巡洋艦であり、高速性と防御力を兼ね備えた、当時としては優秀な艦艇でした。

概要：イタリア海軍への対抗と高速機動部隊

1931年と1932年の建造計画に基づき、6隻の建造が承認されました。本級は、フランス海軍の新鋭戦艦「ダンケルク級」に随伴し、汎用性の高い軽巡洋艦として運用されることを想定して設計されました。先行艦である軽巡洋艦「エミール・ベルタン」を基に、イタリア海軍のコンドッチェリ級軽巡洋艦に対抗できる性能が求められました。

ラ・ガリソニエール級は、フランス軽巡洋艦として初めて舷側装甲を備え、自艦の主砲弾にも耐えうる防御力を有していました。フランス海軍は、ダンケルク級戦艦1隻、本級3隻、大型駆逐艦6隻を組み合わせた高速機動部隊を編成し、敵の通商破壊艦の追撃・撃破、あるいは敵輸送船団への攻撃を想定していました。第二次世界大戦開戦時には、この高速機動部隊を基幹とした襲撃部隊（ジャンスール提督指揮下）が編成されました。

艦形：フランス近代巡洋艦の伝統を受け継ぐ洗練されたデザイン

本級の船体形状は、フランス近代巡洋艦の特徴である船首楼型を採用していました。高い乾舷と、わずかにシアの付いた艦首甲板は、優れた凌波性能を示唆しています。艦首には、新設計の15.2cm（55口径）速射砲を三連装砲塔に収めた主砲塔が2基、背負い式に配置されています。艦橋構造物は軽量な三脚型の前部マストとともに、船首楼の後方に配置されています。

2本の煙突は船体中央部に広く間隔をあけて配置され、その間には艦載艇揚収クレーンが片舷1基ずつ設置されています。舷側には9cm（50口径）高角砲を連装砲架で4基、55cm連装水上魚雷発射管を2基装備。2番煙突の後方には箱型の水上機格納庫があり、簡素な後部マストと水上機揚収クレーンが配置されています。水上機格納庫のシャッターは3番主砲塔に向かって左右に別々に開き、その上に水上機射出カタパルトが設置されていました。艦尾は切り落としたような形状で、艦尾上端部には、着水した水上機を回収するためのハイン・マットと呼ばれる装置が内蔵されていました。

武装：強力な主砲と充実した対空火器

主砲には、「エミール・ベルタン」から引き継いだ15.2cm（55口径）速射砲を採用しました。重量54～58.8kgの砲弾を、最大射程26,960mまで到達させることが可能な高性能砲です。この砲を三連装砲塔に収め、俯仰能力は仰角45度、俯角10度でした。発射速度は毎分5～8発でした。高角砲には、9cm（50口径）高角砲を連装砲架で4基搭載しました。9.51kgの砲弾を、最大仰角80度で10,600mの高度まで到達させることが出来ました。発射速度は毎分12～15発でした。その他、37mm機関砲、13.2mm機銃、55cm魚雷発射管も装備していました。

大戦中は、対空火器の強化が図られ、ボフォース4cm機関砲やエリコン2cm機関砲が追加搭載され、レーダーも搭載されました。

機関：優れた高速性能

機関配置はフランス近代巡洋艦伝統のシフト配置で、アンドレ式水管缶4基、ギヤード・タービン2基2軸の構成でした。最大出力は84,000hpで、公試では計画速力31ノットを大幅に上回る35.9ノットを記録しました。燃料搭載量は1,559トンで、12ノットで7,000海里、15ノットで5,440海里の航続距離を誇りました。

防御：フランス軽巡洋艦初の舷側装甲

本級は、敵通商破壊艦からの攻撃に備え、フランス軽巡洋艦として初めて舷側装甲を装備しました。舷側装甲帯には105mm装甲板、主甲板には38mm装甲が、主砲塔には最大100mmの装甲がそれぞれ施されていました。

航空施設：ハイン・マットによる水上機の安全な回収

本級は、艦尾にハイン・マットと呼ばれる水上機回収装置を搭載していました。これは、着水した水上機を航行しながら安全に回収するための装置で、荒れた海面でも安定して水上機を回収することができました。

同型艦：6隻の栄光と悲劇

ラ・ガリソニエール級軽巡洋艦は6隻が建造されましたが、そのうち3隻（ラ・ガリソニエール、ジャン・ド・ヴィエンヌ、マルセイエーズ）は1942年11月27日、トゥーロン港で自沈処分されました。残る3隻（グロワール、モンカルム、ジョルジュ・レイグ）は自由フランス海軍に所属し、大戦を生き延び、戦後も運用されましたが、後に解体されました。

ラ・ガリソニエール級は、その優れた性能と、激動の時代に翻弄された運命によって、フランス海軍史にその名を刻む艦艇となりました。

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