リダー・アッバースィー
リダー・アッバースィー（Āqā Riżā Kāshānī、1565年頃 – 1635年）は、サファヴィー朝のシャー・アッバース1世時代に活躍した細密画家です。彼は、美しい若者たちを繊細に描いた作品を集めた「ムラッカ」と呼ばれる画集で特に有名です。
リダー・アッバースィーは、アーカー・リダー・カーシャーニーという別名から、カーシャーンの出身であると推測されています。しかし、父親のアリー＝アスガルが細密画家であり、マシュハドを治めていたイブラーヒーム・ミールザー王子の画房で働いていた記録があるため、マシュハド生まれであるという説もあります。アリー＝アスガルは、イブラーヒーム王子が殺害された後、首都ガズヴィーンのシャー・イスマーイール2世の画房に移りました。リダーも父親から細密画の技術を学び、若い頃からシャー・アッバース1世の画房に入ったと考えられています。
この時代、王室からの依頼による装飾写本の挿絵の仕事は減少しており、シャーお抱えの画家たちに雇用を与えるため、かつての装飾写本制作の代わりに、細密画を画集として制作するようになりました。リダー・アッバースィーは、他のペルシアの画家たちとは異なり、作品に必ずサインを入れ、日付などの詳細な情報を書き込むことも多くありました。しかし、サイン入りの作品の中には、研究者によって贋作と判断されたものも存在します。
リダー・アッバースィーは、現在ダブリンのチェスター・ビーティ図書館が所蔵している未完成の『シャー・ナーメ』の写本の制作にも携わった可能性があります。この写本には、リダーの作品とされる4点の細密画が含まれています。また、同写本の制作からかなり後の1628年、アッバースの治世末期に制作が始められた同写本の細密画と構図が類似する絵が、様式は異なるものの、リダーの作であると考えられています。この絵は現在、大英図書館が所蔵しています。1601年の日付が記された、トプカプ宮殿所蔵の絵画が確認されている最も古い作品です。また、ロシア国立図書館が所蔵する1601-2年制作の細密画集の作者もリダー・アッバースィーに帰属されており、この画集の中には、リダーの父アリー＝アスガルの作品であるとされる絵も含まれています。1631-2年の『ホスロウとシーリーン』に収録された19葉の細密画も、リダー・アッバースィーの作品とされることがありますが、その真偽については疑問が残されています。
ペルシア語版のウィキペディアによると、リダー・アッバースィーはマウラーナー・アリー＝アスガル・カーシーの息子であるとされています。シャー・アッバース1世の時代には、ヨーロッパ諸国との政治経済的な関係が深まり、イスファハーンのバーザールではイタリア絵画への関心が高まりました。サファヴィー朝の芸術への庇護も、この時代の画家たちが注目された理由の一つです。さらに、サファヴィー朝がムガル帝国やオスマン帝国からの脅威にさらされていたことも、画家たちに注目が集まった背景にあります。そのような状況下で、リダー・アッバースィーはイスファハーンの芸術家、画家の中で最も傑出した存在となり、シャー・アッバース1世の寵愛を受け、「リダー・アッバースィー」の名で知られるようになりました。なお、画家リダー・アッバースィーと、同時代にアッバース大王の宮廷に仕えていた書家のアリー＝リダー・アッバースィーを混同してはなりません。
イスファハーンでは、シャー・アッバース1世の時代に多くの建物が建設され、新しい技法が生まれました。シャー・イスマーイールやシャー・タフマースブの時代には、キャマールッディーン・ビヒザードのような偉大な画家が手写本を制作していましたが、アッバース朝の時代には、壁面への絵画や建築装飾のための大規模な絵画が制作されることが一般的になりました。
リダー・アッバースィーは、1618年から1639年の間に、単独あるいは2人の美しい人物が宮廷内の様々な場所にいる様子を描いた作品を多く制作しました。これらの作品では、鮮やかな色彩の衣服、その襞、登場人物の表情、そして豪華な装飾品が特徴的です。
Brend, Barbara. Islamic art, Harvard University Press, 1991
Canby, Sheila R. (ed). Shah Abbas; The Remaking of Iran, 2009, British Museum Press
Canby, Sheila R, Rebellious Reformer: The Drawings and Paintings of Riza Yi-Abbasi of Isfahan, 1996, Tauris IB.
Gray, Basil, Persian Painting, Ernest Benn, London, 1930
Canby, Sheila R., Riza [Riżā; Reza; Āqā Riżā; Āqā Riżā Kāshānī; Riżā-yi ‛Abbāsī], in Oxford Art Online
Titley, Norah M., Persian Miniature Painting, and its Influence on the Art of Turkey and India, 1983, University of Texas Press
* イスファハーン派
生涯
リダー・アッバースィーは、アーカー・リダー・カーシャーニーという別名から、カーシャーンの出身であると推測されています。しかし、父親のアリー＝アスガルが細密画家であり、マシュハドを治めていたイブラーヒーム・ミールザー王子の画房で働いていた記録があるため、マシュハド生まれであるという説もあります。アリー＝アスガルは、イブラーヒーム王子が殺害された後、首都ガズヴィーンのシャー・イスマーイール2世の画房に移りました。リダーも父親から細密画の技術を学び、若い頃からシャー・アッバース1世の画房に入ったと考えられています。
この時代、王室からの依頼による装飾写本の挿絵の仕事は減少しており、シャーお抱えの画家たちに雇用を与えるため、かつての装飾写本制作の代わりに、細密画を画集として制作するようになりました。リダー・アッバースィーは、他のペルシアの画家たちとは異なり、作品に必ずサインを入れ、日付などの詳細な情報を書き込むことも多くありました。しかし、サイン入りの作品の中には、研究者によって贋作と判断されたものも存在します。
リダー・アッバースィーは、現在ダブリンのチェスター・ビーティ図書館が所蔵している未完成の『シャー・ナーメ』の写本の制作にも携わった可能性があります。この写本には、リダーの作品とされる4点の細密画が含まれています。また、同写本の制作からかなり後の1628年、アッバースの治世末期に制作が始められた同写本の細密画と構図が類似する絵が、様式は異なるものの、リダーの作であると考えられています。この絵は現在、大英図書館が所蔵しています。1601年の日付が記された、トプカプ宮殿所蔵の絵画が確認されている最も古い作品です。また、ロシア国立図書館が所蔵する1601-2年制作の細密画集の作者もリダー・アッバースィーに帰属されており、この画集の中には、リダーの父アリー＝アスガルの作品であるとされる絵も含まれています。1631-2年の『ホスロウとシーリーン』に収録された19葉の細密画も、リダー・アッバースィーの作品とされることがありますが、その真偽については疑問が残されています。
ペルシア語版ウィキペディアからの情報
ペルシア語版のウィキペディアによると、リダー・アッバースィーはマウラーナー・アリー＝アスガル・カーシーの息子であるとされています。シャー・アッバース1世の時代には、ヨーロッパ諸国との政治経済的な関係が深まり、イスファハーンのバーザールではイタリア絵画への関心が高まりました。サファヴィー朝の芸術への庇護も、この時代の画家たちが注目された理由の一つです。さらに、サファヴィー朝がムガル帝国やオスマン帝国からの脅威にさらされていたことも、画家たちに注目が集まった背景にあります。そのような状況下で、リダー・アッバースィーはイスファハーンの芸術家、画家の中で最も傑出した存在となり、シャー・アッバース1世の寵愛を受け、「リダー・アッバースィー」の名で知られるようになりました。なお、画家リダー・アッバースィーと、同時代にアッバース大王の宮廷に仕えていた書家のアリー＝リダー・アッバースィーを混同してはなりません。
絵画作品
イスファハーンでは、シャー・アッバース1世の時代に多くの建物が建設され、新しい技法が生まれました。シャー・イスマーイールやシャー・タフマースブの時代には、キャマールッディーン・ビヒザードのような偉大な画家が手写本を制作していましたが、アッバース朝の時代には、壁面への絵画や建築装飾のための大規模な絵画が制作されることが一般的になりました。
リダー・アッバースィーは、1618年から1639年の間に、単独あるいは2人の美しい人物が宮廷内の様々な場所にいる様子を描いた作品を多く制作しました。これらの作品では、鮮やかな色彩の衣服、その襞、登場人物の表情、そして豪華な装飾品が特徴的です。
参考文献
Brend, Barbara. Islamic art, Harvard University Press, 1991
Canby, Sheila R. (ed). Shah Abbas; The Remaking of Iran, 2009, British Museum Press
Canby, Sheila R, Rebellious Reformer: The Drawings and Paintings of Riza Yi-Abbasi of Isfahan, 1996, Tauris IB.
Gray, Basil, Persian Painting, Ernest Benn, London, 1930
Canby, Sheila R., Riza [Riżā; Reza; Āqā Riżā; Āqā Riżā Kāshānī; Riżā-yi ‛Abbāsī], in Oxford Art Online
Titley, Norah M., Persian Miniature Painting, and its Influence on the Art of Turkey and India, 1983, University of Texas Press
関連項目
* イスファハーン派
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。