リチャード二世 第1部

『リチャード二世 第1部』（Richard the Second Part One）、あるいは『トマス・オブ・ウッドストック』（Thomas of Woodstock）は、エリザベス朝時代に書かれた作者不明の演劇の未完原稿に付けられた名称です。この劇は、リチャード二世の治世下で起こったトマス・オブ・ウッドストックの事件を描いています。シェイクスピアの作品ではないかと推測する研究者もおり、シェイクスピア外典に分類されることもあります。また、この劇がシェイクスピアの『リチャード二世』、さらには『ヘンリー四世 第1部』や『ヘンリー四世 第2部』にも影響を与えた可能性があると指摘されています。

テキストと起源

現存するテキストは、大英博物館に所蔵されており、MS. Egerton 1994としてカタログ化されています。これは、ジェームズ・ハリウェル＝フィリップスによって発見された15の戯曲コレクションの一部です。このコレクションは、17世紀のキングズ・レヴェルズ・メンの俳優で、後に書籍商、イングランド内戦期の戯曲収集家となったウィリアム・カートライト（1606年 - 1686年）によって編纂されました。このコレクションには、一部の研究者がシェイクスピアの作であるとする『エドマンド剛勇王』も含まれています。

シェイクスピアの存命中にこの劇が上演されたという明確な記録はありません。しかし、Egerton写本の使い古された状態、特定の俳優の名前への言及、そして祝典局長による検閲と思われる余白への書き込みなどから、この劇がジャコビアン時代に盛んに上演されたことが推測されています。ただし、どの劇団がこの劇を所有または上演していたかは不明です。

これまでに以下の出版物が存在します。

マローン協会『The First Part of the Reign of King Richard the Second, or Thomas of Woodstock』（1929年）
A・P・ロシター『Woodstock: A Moral History』（1946年）
ピーター・コービン＆ダグラス・セッジ『Thomas of Woodstock: or King Richard the Second, Part One』（2002年）
マイケル・イーガン『The Tragedy of Richard II: A Newly Authenticated Play by William Shakespeare . VOLUME 1』（2006年）

作者

この劇が『リチャード二世』のテーマと密接に関連していることから、作者をシェイクスピアとする説が存在しますが、それを支持する演劇史家は少数です。マローン協会の編者たちは、シェイクスピア説に言及することさえしていません。A・P・ロシターは、「作者がシェイクスピアである可能性はほとんどない」と述べ、韻文の単調さを指摘しています。しかし、ロシターはこの劇の作者が「簡素化したシェイクスピアのようなもの」を目指したことを認めています。

シェイクスピア説以外にも、さまざまな作者説が存在します。2001年、マクドナルド・P・ジャクソンは文体分析を行い、サミュエル・ローリー（Samuel Rowley）が作者であるという説を提唱しました。また、ジョン・フレッチャーやトマス・ヘイウッド（Thomas Heywood）が作者であるとする説も存在します。

ピーター・コービンとダグラス・セッジは、『トマス・オブ・ウッドストック』を「相当幅広く力量のある」作者によって書かれたと主張しています。彼らは「あくまで推測」としつつ、シェイクスピア「とも他の作者とも」考えられると述べています。その上で、「シェイクスピアは、『トマス・オブ・ウッドストック』に近い演劇スタイルを持った1590年代の劇作家であるだろう」と指摘しています。彼らは、この劇のシェイクスピア的な特徴として、年代記の素材の洗練された扱い方、下層階級と宮廷のシーンの巧みな配置、劇全体を通して重要な存在である「イングランド」という概念、簡潔で魅力的でありながら確かな演劇技法、印象的な女性キャラクター（特にアン・オブ・ボヘミア）の繊細な描写、コスタード、ドッグベリー、クイックリー夫人を予感させるニンブルのマラプロピズム、観客の同情をリチャードに向けさせ、ウッドストックを良心的な人物として描き出す劇作術を挙げています。

2006年、マイケル・イーガンは分析の結果、ローリー説ではなくシェイクスピア説を採用しました。彼は、多くのフレーズの類似を根拠として挙げています。イーガンは、イアン・ロビンソンも自身の説を支持していると指摘しています。しかし、バート・ヴァン・エスは「Times Literary Supplement」誌の書評で、イーガンが発見したとされる字句の関連性は微妙なものが多く、その説に疑問を呈しました。これに対しイーガンは、最も重要な証拠は文章の質であると反論しています。

創作年代

マローン協会の編者は、研究者の多くがこの劇を1591年から1595年の間に書かれたと推定していると記しています。一方、ウルとベイカーは1582年頃だと主張しています。彼らは、この劇がクリストファー・マーロウがケンブリッジ大学在学中に書いたものであり、『タイモン』や『ヘンリー五世の勝利』もマーロウの作品だと信じています。コービンとセッジは「文学・演劇の影響から日付を推測することは危険である」と述べつつも、「文学的影響を頼りにわかる範囲で、（『ウッドストック』は）1595年以前のいつかに書かれ、おそらく上演されたようである」としています。イーガンは、この劇が1592年から1593年に書かれ、原稿が1605年に作成されたとしています。マクドナルド・P・ジャクソンは、「『ウッドストック』の構成、言語形式、虚辞、韻律、語彙のすべてが17世紀の最初の10年間に書かれたことを示している」と主張し、『リチャード二世』との関係を、前編にあたる部分を扱った続編であると結論付けました。しかし、他の研究者（特にイーガン）は、その日付と特徴付けに批判的です。

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