リッチー・ヘイワード

リッチー・ヘイワード（Ritchie Hayward）は、1946年2月6日にアメリカ合衆国アイオワ州クレアレイクで生まれた、卓越したドラマーであり作曲家でもあった人物です。彼は特に、ルーツ・ロックの分野で高い評価を得ているバンド、リトル・フィートのドラマーとして、2009年まで長きにわたりその活動を支えました。また、バンド活動と並行して、数多くの有名アーティストとのセッションワークでも知られています。2010年8月12日に64歳で亡くなりました。

彼の音楽キャリアは、故郷アイオワ州を離れ、サウスカロライナ州を拠点とする小規模なバンドでの演奏から始まりました。その後、フラターニティー・オヴ・マンというグループを経て、運命的な出会いを果たしたローウェル・ジョージと共にザ・ファクトリーを結成します。ザ・ファクトリーは1967年にコメディ番組「Fトループ」に出演し、当時の人気バンドであるビートルズを模したスタイルで演奏を披露するなどしましたが、シングルを一枚リリースした後、残念ながら短期間で解散に至ります。一時的に別々の道を歩みますが、ほどなくしてヘイワードは再びローウェル・ジョージと合流し、ここに後のルーツ・ロックを代表するバンドの一つとなるリトル・フィートが誕生しました。彼はリトル・フィートの核となるメンバーとして、バンドのサウンドを確立し、ローウェル・ジョージが1979年に早世した後もバンドに留まり、その存続と発展に大きく貢献しました。

リトル・フィートでの活動に加え、リッチー・ヘイワードは多忙なセッション・ミュージシャンとしても活躍しました。そのドラミングは幅広いジャンルに適応し、多くの著名なアーティストから依頼が寄せられました。彼がレコーディングやライブで共演したミュージシャンのリストは非常に長く、エリック・クラプトン、ドゥービー・ブラザーズ、デラニー・ブラムネット、キム・カーンズ、ライ・クーダー、ジェイムズ・コットン、ボブ・ディラン、ロバート・パーマー、ジョン・ケイル、アル・クーパー、トム・ウェイツ、ウォーレン・ジヴォン、ウォーレン・ヘインズ、ヴァン・ダイク・パークス、スティーヴン・スティルス、ロバート・プラント、カーリー・サイモン、ポール・ロジャース、ボブ・シーガー、バディー・ガイ、ピーター・フランプトン、タジ・マハールといった、ロック、ブルース、フォーク、AORなど、多岐にわたる分野の伝説的なアーティストたちの作品に、その確かなリズムを刻んでいます。これらのセッションワークは、リトル・フィートという枠を超えた彼のリズムに対する深い理解と、卓越した適応能力を証明するものと言えるでしょう。

しかし、彼の輝かしいキャリアは、病魔によって終焉を迎えることになります。2009年8月、彼は肝臓癌を患っていることが明らかとなり、治療に専念するため、長年籍を置いていたリトル・フィートでの活動を休止せざるを得なくなりました。バンドのドラマーの代役はゲイブ・フォードが務めることになりました。この厳しい状況に直面したヘイワードを支援するため、リトル・フィートのメンバーや関係者らは、彼の治療費を捻出するためのチャリティーコンサートを開催し、彼の回復を願いました。

惜しくも、その願いは叶いませんでした。翌年、2010年の8月12日、ヘイワードは肝臓癌に加え、肺疾患との合併症を引き起こし、入院先のカナダ、ブリティッシュコロンビア州ヴィクトリア市内の病院で息を引き取りました。享年64歳でした。彼の訃報は多くの音楽ファンやミュージシャンに深い悲しみをもたらしました。彼の死後、リトル・フィートが行ったライブにおいては、残されたメンバーによって、偉大なドラマーであり友人であったリッチー・ヘイワードへの追悼の意が捧げられました。彼の独特なグルーヴと洗練されたドラミングは、今もなお多くのリスナーや後進のドラマーに影響を与え続けています。

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