リヒャルト・グリュックス

リヒャルト・グリュックス（Richard Glücks, 1889年4月22日 - 1945年5月10日）は、ナチス・ドイツの親衛隊（SS）将官であり、全強制収容所の総監を務めた人物です。最終階級は親衛隊中将でした。

前半生

グリュックスは、火災保険代理店を経営するヨハネス・レーベレヒト・ルートヴィヒ・グリュックスと、その妻ヴィルヘルミーネの息子として、メンヒェングラートバッハで生まれました。1907年にアビトゥーアに合格し、デュッセルドルフのギムナジウムを卒業後、父の保険代理店で働きました。1909年から1910年にかけては、プロイセン陸軍の砲兵連隊に入隊しました。その後、父の会社に戻り、ベルリンやライプツィヒの支店でビジネスマネージャーを務めた後、アルゼンチンやイギリスでセールスマンとして働きました。第一次世界大戦の勃発によりイギリスから脱出し、ノルウェー船籍の船に「スイス人船員」として乗り込みドイツへ帰国しました。

1915年1月、グリュックスは再びプロイセン陸軍に入隊し、ヴェルダンの戦いやソンムの戦い、ガリツィアの戦いなどに参加しました。大戦中には一級鉄十字章と二級鉄十字章を受章し、終戦時には予備役少尉でした。

第一次世界大戦後

第一次世界大戦後、グリュックスは戦闘車両小隊の指揮官となり、義勇軍「Lichtschlag」に参加し、ルール地方で活動しました。その後、ヴァイマル共和国軍に残り、植民地武装解除部門の連絡将校や陸軍平和委員会の副官を務めました。1925年に中尉に昇進しましたが、1926年に軍を除隊しました。その後、銃の販売店を経営したり、国境警備活動に参加したりし、1927年には鉄兜団に入団しました。

ナチ党入党と親衛隊

1930年3月1日、グリュックスは国家社会主義ドイツ労働者党（ナチ党）に入党しました（党員番号214,805）。1932年11月16日には親衛隊（SS）に入隊（隊員番号58,706）し、親衛隊集団「西」の幕僚長や第77連隊の指揮官などを歴任しました。1934年までに親衛隊中佐に昇進しました。

強制収容所での役割

1936年4月1日、親衛隊大佐に昇進したグリュックスは、強制収容所の監督を担当する親衛隊髑髏部隊に配属され、テオドール・アイケSS中将の幕僚長に任命されました。また、生命の泉協会のメンバーにもなりました。1939年11月、アイケが戦地へ移ると、グリュックスは強制収容所総監に就任しました。1940年8月にはアウグスト・ハイスマイヤーSS大将にその地位を譲りましたが、その後も彼の元で収容所監督の業務を続けました。また、1940年から1942年にかけて、親衛隊作戦本部VI部の部長も兼務しました。

1941年4月、グリュックスは親衛隊少将に昇進しました。1942年、収容所監督部隊はオズヴァルト・ポールの経済管理本部のD局に組み込まれ、グリュックスは経済管理本部D局集団長となりました。1943年には親衛隊中将に昇進しました。

自殺

第二次世界大戦末期、ベルリンからフレンスブルクへ逃れたグリュックスは、1945年5月9日、同地の海軍基地で青酸カリを飲んで自殺したとされています。しかし、彼の自殺を裏付ける確たる証拠は残っておらず、一部にはドイツ脱出後、南米で生きているという説も存在します。

グリュックスは、ナチス政権下における強制収容所の運営において、中心的な役割を果たした人物として歴史に名を残しています。

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