リューシディケー

リューシディケー（古希: Λυσιδίκη, Lȳsidikē）は、ギリシア神話に登場する女性の名前で、複数の異なる人物を指すとされています。長母音を省略してリュシディケとも表記されます。主に以下の二つの系譜が知られています。

ペロプスの娘としてのリューシディケー

一つ目のリューシディケーは、エーリスの王ペロプスとヒッポダメイアの娘として語られます。彼女は、ピッテウス、アトレウス、テュエステース、アステュダメイア、ニーキッペーといった兄弟姉妹を持ちます。彼女はミュケーナイの王ペルセウスの子であるメーストールの妻となり、ヒッポトエーを産みました。ヒッポトエーはポセイドーンとの間にタピオスをもうけ、タピオスはタポスの町の創建者となりました。この系譜では、リューシディケーは重要な王家の血筋を引く人物として描かれています。

テスピオスの娘としてのリューシディケー

別の伝承では、リューシディケーはテスピオスの50人の娘の一人ともされています。テスピオスは英雄ヘラクレスの義父としても知られ、多数の娘をもうけたことで有名です。この伝承におけるリューシディケーが、ペロプスの娘であるリューシディケーと同一人物なのか、別の女性なのかは明確ではありません。

その他の伝承

さらに、別の説では、リューシディケーはアルカイオスの妻であり、アムピトリュオーンの母であるとも伝えられています。また、アルクメーネーの母であるという説も存在します。アムピトリュオーンは英雄ヘラクレスの義父として、アルクメーネーはヘラクレスの母として、それぞれギリシア神話において重要な役割を果たしている人物です。このことから、リューシディケーが複数の系譜や伝承の中で、重要な人物たちと関連付けられていることがわかります。

神話におけるリューシディケーの役割

リューシディケーは、その名前が示す通り、ギリシア神話の中で複数の異なる人物を指すことがあります。これらの異なる伝承は、神話が複雑に絡み合っていることを示す一例と言えるでしょう。彼女に関する記述は断片的であり、その人物像を完全に把握することは困難ですが、様々な英雄や王家の系譜に名前が見られることから、神話において重要な位置を占めていたと考えられます。

まとめ

リューシディケーは、ペロプスの娘であり、テスピオスの娘でもあるとされる、複数の伝承を持つギリシア神話の女性です。彼女は、メーストールの妻としてヒッポトエーを産み、タピオスの祖母にあたるという系譜と、アルカイオスの妻としてアムピトリュオーンの母であるとする伝承、そしてアルクメーネーの母であるという伝承など、様々な物語に登場します。これらの異なる伝承は、ギリシア神話の複雑さと多様性を象徴しており、リューシディケーは、その物語の中で様々な形で重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。


参考文献
アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎（1991年）
『プルタルコス英雄伝（上）』村川堅太郎訳、ちくま文庫（1987年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店（1960年）

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