ルノー・フルエンス

ルノー・フルエンス（Renault Fluence）は、フランスの自動車メーカーであるルノーによって展開されたセダンタイプの乗用車です。主にトルコにあるオヤック・ルノー工場で生産が行われましたが、アラブ首長国連邦やクウェート、サウジアラビア、オセアニア、中国といった特定の市場向けモデルは、ルノー傘下の韓国ルノーサムスンが製造を担当し、各地へ輸出されていました。この項目では、標準モデルに加えて、フルエンスを基に開発された電気自動車であるフルエンスZ.E.についても簡潔に解説します。

概要

フルエンスの名は、2004年に発表された2ドアクーペのコンセプトモデル「フルエンスコンセプト」に由来します。このコンセプトカーはルノーが描く未来のデザインを示唆するものでしたが、後にメガーヌの4ドアセダンの後継モデルの名称として採用されることになりました。

車両の基本構造は、ルノーサムスンが製造していた2代目SM3に採用されていたCプラットフォームを基盤としています。外観では、特にフロントフェイスやエンブレム類がルノーのブランドに合わせてデザインされています。ボディサイズは全長4,620mm、全幅1,809mm、全高1,479mm、ホイールベース2,702mmと、ベースとなったSM3とほぼ同寸です。このサイズは、欧州におけるCセグメントとDセグメントの間に位置し、ルノーのラインナップの中では、ワゴンのメガーヌ・スポーツツアラーよりは大きく、上級モデルのラグナよりは小さいというポジションでした。日本車では、スズキ・キザシ（全長4,650mm×全幅1,820mm×全高1,480mm）と寸法が最も近いモデルでした。

仕向地によっては、フロントマスクのデザインが2種類存在しました。ブラジル、オセアニア、中国など向けに製造されたモデルは、ベース車両であるSM3に近いデザインが採用されています。

歴史

初代（2009年-2019年）

2009年8月31日、ルノーは2代目メガーヌセダンの後継モデルとしてフルエンスを発表し、同年9月15日にフランクフルトモーターショーで正式披露されました。その後、同年秋からの発売が予告され、11月にはトルコ市場での販売が開始されました。続いてロシアやルーマニアなどでも順次投入されました。

エンジンはガソリンとディーゼルが設定されており、いずれも日産自動車と共同開発されたユニットです。ガソリンエンジンは1.6Lの直列4気筒「H4M」（最高出力110PS）と、2.0Lの直列4気筒「M4R」（最高出力140PS）の2種類が用意されました。ディーゼルエンジンは全て1.5Lの直列4気筒コモンレール式「K9K型」（通称dCi）で、出力特性に応じて85PS、90PS、105PS、110PSの4つの仕様が存在しました。

2009年11月27日：フランス市場での販売を2010年1月より開始すると発表し、その後販売を開始しました。フランス仕様に設定されたのは、85PSと105PSのK9K型ディーゼルエンジンのみで、いずれも6速マニュアルトランスミッションが組み合わされました。販売価格は85PS仕様が19,750ユーロ、105PS仕様が23,800ユーロでした。
2010年11月1日：オーストラリア市場で販売が始まりました。このモデルは前述の通り、韓国のルノーサムスンで生産されており、フロント部分は欧州市場向けのモデルとは異なるデザインが採用されていました。導入されたグレードは全てガソリン2.0Lエンジン搭載車で、Dynamique（6速MTまたはCVT）、Privilege（CVT）が設定されました。
2011年4月：オーストラリア仕様と同等のモデルがニュージーランドでも発売されました。こちらはCVTのみの展開でした。

フェイスリフト

2012年にはフェイスリフトが実施されました。

9月25日：メキシコ市場でフェイスリフトモデルが発表されました。ベースとなったSM3の改良内容に準じており、電子式パーキングブレーキ、新しいデザインのメーター、ブラックインナータイプのヘッドライト、新形状のフロントバンパーとグリル、アルミホイールなどが変更点として挙げられます。搭載エンジンは1.6Lガソリンと1.5Lディーゼルの2種類でした。
11月：イスタンブールモーターショーでもフェイスリフトモデルがお披露目されました。ただし、こちらのフロントマスクはメキシコで発表された仕様とは異なり、当時の新型クリオと共通するデザインテイストが導入されていました。

2016年：欧州市場におけるフルエンスの生産および販売が終了しました。欧州での後継モデルはメガーヌⅣセダンとなります。
* 2019年：その他の市場でも販売が終了し、フルエンスの生産は完全に終了しました。

フルエンスZ.E.（電気自動車版）

フルエンスZ.E.は、フルエンスをベースにした電気自動車（EV）モデルです。フルエンスがフランクフルトモーターショーで発表されたのと同じ2009年9月15日に、量産仕様のフルエンスとともにそのコンセプトモデル「フルエンスZ.E.コンセプト」が発表されました。このコンセプトモデルは、モーターやリチウムイオンバッテリーを搭載するために、ベースとなるフルエンスに対して全長が200mm延長されていました。ルーフにはソーラーパネルも備えられ、バッテリーへの電力供給に利用されていました。車名の「Z.E.」は「Zero Emission」（ゼロエミッション）の略です。

2010年4月15日には、フルエンスZ.E.コンセプトを市販向けに修正した「フルエンスZ.E.」が正式に発表されました。

標準フルエンスからの主な変更点として、EVであることを識別するための専用デザインが与えられました。具体的には専用グリルやクリアタイプのテールランプなどが採用され、内装のメーターも専用デザインに変更されています。

メカニズムのスペックもこの際に公表されました。モーターは最高出力95PS、最大トルク23kg・mを発生します。蓄電容量22kWhのリチウムイオンバッテリーはトランク部分にコンパクトに配置され、車両重量は1,543kgに抑えられています。これにより、最大航続距離160km、最高速度135km/hの動力性能を実現しています。このスペックは、同時期のライバルであった日産・リーフ（最高出力108PS/最大トルク28.5kgm、リチウムイオン容量24kWh、最大航続距離160km、最高速度140km/h）とほぼ互角の性能でした。

生産は2011年前半から、標準フルエンスと同様にトルコのオヤック・ルノー工場で行われ、欧州の一部の国で販売される計画でした。

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