ル・マン・デイトナ・h

ル・マン・デイトナh（LMDh）：世界最高峰スポーツカーレースの新たな基準

ル・マン・デイトナh（LMDh）は、北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権と、世界耐久選手権（WEC）のトップカテゴリーを賑わせる、革新的なスポーツプロトタイプカーの規定です。2023年シーズンから導入され、その高い競争力と技術革新によって、モータースポーツ界に大きなインパクトを与えています。

IMSA、ACO、FIAによる三位一体の協力体制

LMDhは、国際自動車連盟（FIA）、IMSA（国際モータースポーツ協会）、そしてACO（フランス西部自動車クラブ）という、モータースポーツを牽引する3つの主要組織による共同開発によって誕生しました。これにより、北米とヨーロッパの主要なスポーツカー選手権が、共通の技術規定に基づいた競争を行うことが可能となりました。これは、世界的なモータースポーツの統一と発展に大きく貢献する取り組みと言えるでしょう。

DPiからの進化とLMHとの共存

LMDhは、IMSA選手権で以前使用されていたDPi（デイトナ・プロトタイプ・インターナショナル）の後継規定として位置付けられています。DPiの経験を活かしつつ、更なる技術革新とコスト効率の向上を目指した結果、この新しい規定が誕生しました。そして、WECのトップクラスであるハイパーカークラスでは、LMH（ル・マン・ハイパーカー）と競い合います。LMHとは異なる設計アプローチを取っているものの、パフォーマンス面では互角に渡り合えるよう、バランス・オブ・パフォーマンス（BoP）システムが導入されています。

コスト効率とメーカー個性の両立

LMDh規定の大きな特徴の一つは、コスト効率の高さです。4社のシャシーコンストラクター（ダラーラ、リジェ、マルチマティック、オレカ）が製造した共通のシャシーを使用することで、開発コストを大幅に削減。メーカーは、独自設計のエンジンとボディワークに注力できるため、自社ブランドの個性をアピールする機会が得られます。これは、多くの自動車メーカーにとって魅力的な要素であり、LMDhへの参入を後押しする要因の一つとなっています。また、共通のハイブリッドシステムを採用することで、開発コストと運用コストの抑制に成功しています。

技術レギュレーションの詳細

LMDhの技術レギュレーションは、性能とコストのバランスを重視して策定されています。内燃機関の最高出力は630hp、これに50kW（67hp）の電気モーターを組み合わせたシステム最高出力は680hp（500kW）と定められています。バッテリーはウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング製、ギアボックスはエクストラック製と、主要コンポーネントは統一された仕様を採用しています。空力性能に関しても、ダウンフォースとドラッグの比が4:1と規定され、車両の性能を均一化しています。

歴史：DPi 2.0からLMDhへの発展

LMDhの誕生には、長年にわたるIMSAとWECの協力関係と、多くの議論が重ねられてきました。当初はDPi 2.0という名称で、既存のDPiを進化させた規定が検討されました。ハイブリッドシステムの導入やスタイリングの自由度拡大などが検討され、IMSAとWEC両方の選手権への参戦を可能にする方向で議論が進められました。

その過程で、トヨタやマクラーレンなどのメーカーからの意見も反映され、LMHとの性能バランス、コスト削減などを考慮した結果、現在のLMDh規定が策定されたのです。当初はメーカー独自開発のハイブリッドシステムが予定されていましたが、共通仕様のハイブリッドシステムに変更され、更なるコスト削減と性能の均一化が図られました。

未来：モータースポーツ界の進化を牽引

LMDhは、単なる新しい規定ではなく、世界的なモータースポーツの未来を形作る重要な一歩です。コスト効率と性能のバランス、そしてメーカーの個性と競争の両立という、難しい課題を見事に解決したこの規定は、今後ますます多くのメーカーやドライバーを惹きつけ、世界最高峰のスポーツカーレースを更に盛り上げていくでしょう。LMHとの競争、そして技術革新は、今後もモータースポーツ界を進化させていく上で重要な役割を果たしていくことでしょう。

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