レンサ球菌

レンサ球菌（連鎖球菌）とは

レンサ球菌（Streptococcus）は、ラクトバシラス目に属するグラム陽性球菌の総称です。光学顕微鏡で観察すると、球菌が鎖状に連なって見えるのが特徴で、この配列が名前の由来となっています。乳酸菌の一種としても知られています。

名称の由来

属名のStreptococcusは、ギリシャ語の「よじる」という意味のstreptos（曲げやすい、柔軟な）と、球菌を意味するcoccus（穀物の粒、木の実）に由来します。かつては「連鎖球菌」と漢字で表記されていましたが、近年では「レンサ球菌」と仮名交じりで表記されることが一般的です。

特徴

レンサ球菌は、直径約1µmの球菌で、規則的に鎖状に配列します。通性嫌気性または偏性嫌気性の有機栄養菌であり、カタラーゼ陰性であることが特徴です。エネルギー産生は主に乳酸発酵によって行われ、栄養要求性が高く、血液寒天培地などの特殊な培地で培養されます。

分類

レンサ球菌は、溶血性によってα、β、γの3群に分類されます。さらに、β溶血性レンサ球菌は、細胞壁多糖体抗原の免疫学的差異に基づき、ランスフィールド分類によって細かくグループ分けされています。

α溶血性レンサ球菌

肺炎球菌 (Streptococcus pneumoniae)：ランセット型の双球菌で、肺炎などの呼吸器感染症の原因となります。
緑色レンサ球菌 (Streptococcus viridans)：口腔内に常在する菌で、亜急性細菌性心内膜炎や敗血症の原因となることがあります。

β溶血性レンサ球菌

A群β溶血性レンサ球菌 (Streptococcus pyogenes; GAS)：咽頭扁桃炎（溶連菌感染症）、皮膚蜂窩織炎などの原因菌として重要です。溶連菌感染後急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症を引き起こすこともあります。
B群β溶血性レンサ球菌 (Streptococcus agalactiae; GBS)：消化管内に常在する菌で、新生児の細菌性髄膜炎や敗血症の原因となります。妊娠後期の妊婦に対するスクリーニングが推奨されています。

γ溶血性レンサ球菌

口腔内などに常在する菌で、歯性感染症などの原因となることがありますが、臨床的に重要な菌は少ないです。

臨床像

レンサ球菌が原因となる主な疾患は以下の通りです。

感染性疾患：扁桃周囲膿瘍、丹毒、髄膜炎
毒素性疾患：猩紅熱
免疫性疾患：リウマチ熱、急性糸球体腎炎
食中毒：まれに食中毒を引き起こすことがあります。

治療

一般的にペニシリン系抗生物質が有効です。

口腔内での存在

口腔内には多種類のレンサ球菌（ストレプトコッカス属）が生息しており、口腔フローラの中で大きな割合を占めています。

代表的な菌種：
Streptococcus salivarius：舌表面の最優勢菌種
Streptococcus mitis：頬粘膜および歯牙表面
Streptococcus sanguinis：歯牙表面
Streptococcus mutans：齲蝕（虫歯）の原因菌
Streptococcus sobrinus*：齲蝕（虫歯）の原因菌

利用

レンサ球菌の一種であるストレプトコッカス・サーモフィルス (Streptococcus thermophilus) は、ヨーグルトなどの発酵乳製品の製造に利用されています。ブルガリア菌とともに、ヨーグルトの風味や食感に貢献しています。

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