レントゲン (単位)

レントゲン（röntgen / roentgen）とは

レントゲンは、[放射線]]、特にX線やγ線の照射線量を表すために、かつて用いられていた単位です。現在では国際単位系]への移行が進んでいますが、[[計量法では暫定的に使用が認められています。この単位は、放射線が空気中でイオン化を起こす現象を利用して定義されています。

レントゲンの定義

1レントゲンは、[標準状態]]（STP）の空気1立方センチメートル]に[[放射線を照射した際に、1静電単位(esu)のイオン電荷が生じる放射線の総量と定義されます。ここで、1静電単位のイオン電荷は、約2.08×10⁹個の正負イオン対に相当します。つまり、レントゲンは、放射線によってどれだけのイオンが生成されるかを基準に定義された単位なのです。

CGS[[単位系]]と非SI単位

レントゲンは、CGS[[単位系]]（CGS静電単位系）に属する単位であり、SI単位ではありません。日本においては、1989年4月の国際単位系への切り替え以降、使用は推奨されていません。ただし、JIS Z8203:2000には、「当分の間、使用することがCIPMで認められている」と記載されており、完全に廃止されたわけではありません。

単位記号

レントゲンの単位記号は「R」です。これはX線を発見したヴィルヘルム・レントゲンにちなんで名付けられたものです。当初は小文字の「r」が用いられていましたが、人名由来の記号は大文字で始めるという原則に従い、1962年に「R」に変更されました。

SI単位との換算

SIにおける照射線量の単位は、[クーロン]]毎キログラム]です。1静電単位は約3.3356×10⁻¹⁰[クーロン]に相当し、[[標準状態の空気1 cm³の質量は約1.29×10⁻⁶kgです。これらの値を基に計算すると、1レントゲンは2.58×10⁻⁴C/kgとなります。この換算値は、計量法やNIST（アメリカ国立標準技術研究所）でも正式に採用されています。

被曝量の単位としての利用

レントゲンは、[X線]]やγ線の照射線量を測るだけでなく、様々な放射線に対する被曝量を測定するためにも用いられてきました。放射線の種類によって人体への影響が異なるため、その影響を考慮した「röntgen equivalent man」（rem、レム）という単位も使われていました。現在では、レムはSI単位の[[シーベルト]に置き換えられています。

レントゲンの値の例

自然界における放射線量は場所によって異なり、低い場所では17 µR/h、高い場所では1100 µR/hに達します。一般的に、都市部では放射線量が高くなる傾向があります。人が一生のうちに浴びる自然放射線の量は、約16レントゲン（160ミリシーベルト）と計算されています（寿命を60年、自然放射線量を30 µR/hと仮定した場合）。

また、人が短時間（約5時間）に500レントゲンの放射線を浴びると、致命的な影響を受ける可能性があります。このことから、放射線は人体にとって非常に危険なものであることがわかります。

計量法における位置づけ

計量法では、現在でも放射能の計量単位として、キュリー、ラド、レントゲン、レムの4単位が法定[[計量単位]]として認められています。しかし、これらの単位は計量制度審議会の資料（2005年）において、「暫定的使用」と位置づけられています。これは、国際単位系への移行を推進する中で、これらの単位の使用が段階的に縮小されることを意味しています。レントゲンは、放射線に関する理解を深める上で、重要な歴史的単位である一方で、現代の科学技術においては、より正確で国際的な基準であるSI単位の利用が推奨されています。



※脚注

この文章中の番号は、計量法第2条第1項第1号における物象の状態の量の列挙順の番号です。

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