ロイ・フラー

ロイ・フラー：光と影のダンサー、モダンダンスの先駆者

ロイ・フラー（Loie Fuller, 1862年1月15日 - 1928年1月1日）は、アメリカ合衆国出身のダンサーであり、モダンダンスと舞台照明技術の両分野におけるパイオニアとして知られています。彼女の革新的な業績は、「芸術としてのモダンダンス最初のパフォーマー」と称されるほど、ダンス史に大きな足跡を残しました。

キャリアの始まり

フラーは、シカゴ郊外のフラーズバーグ（現在のイリノイ州ヒンズデール）で、メアリ・ルイーズ・フラーとして生まれました。幼い頃から舞台に立ち、子役としてキャリアをスタートさせました。その後、バーレスク、ヴォードヴィル、サーカスのショーなどで、スカートダンサーとして独自の振付とダンスを披露するようになりました。初期のフリーダンスの実践者として、彼女は自然な動きや即興技術を磨き上げ、独自のスタイルを確立していきました。

フラーのダンスの特徴は、自らデザインした多色の照明で照らされた絹のコスチュームと、それを活かす独創的な振付にありました。彼女は、光と影、色彩と動きを融合させた幻想的な舞台を作り上げ、観客を魅了しました。

パリでの成功

1891年、フラーはサーペンタインダンスなどの作品でアメリカ国内で名声を得ましたが、大衆から女優として認識されることに葛藤を抱いていました。そんな中、ヨーロッパツアーでパリを訪れた際、彼女は熱烈な歓迎を受け、フランスに留まって活動することを決意します。フォリー・ベルジェールの常連出演者として、「火のダンス」などの作品を上演し、大きな成功を収めました。

彼女の舞台は、アール・ヌーヴォー運動の具現化として見なされ、芸術家たちに多大な影響を与えました。ジュール・シェレ、アンリ・ド・トゥールーズ＝ロートレック、オーギュスト・ロダン、マリ・キュリーなど、多くの著名な芸術家や科学者と交流し、互いに刺激し合いました。

技術革新と特許

フラーは、舞台照明にも革新をもたらしました。カラーフィルタを作る化学合成物や、照明と衣装を発光させる化学塩の使用など、舞台照明に関する多数の特許を取得しました。彼女の技術的な探求心は、ダンスの表現力を飛躍的に向上させました。また、フランス天文協会の会員でもありました。

後進の育成と影響

フラーは、同郷のアメリカ人ダンサー、イサドラ・ダンカンなど、他の革新的なパフォーマーの支援も行いました。ダンカンのヨーロッパでのキャリアを経済的に支援し、その才能が開花するきっかけを作りました。また、1900年のパリ万国博覧会では、川上音二郎一座を招き、川上貞奴ブームを巻き起こすなど、国際的な文化交流にも貢献しました。

その生涯

ロイ・フラーは、ルーマニア王妃マリアとも親交が深く、二人の間で交わされた書簡は出版されています。第一次世界大戦中には、アメリカ合衆国がルーマニアに資金を貸し出すよう働きかけました。晩年はパリに住み、1928年1月1日、肺炎のため65歳で亡くなりました。彼女の遺灰は、パリのペール・ラシェーズ墓地に埋葬されています。

遺産

ロイ・フラーの作品は、今日においても多くの人々の関心を集めています。彼女の革新的な舞台は、モダンダンスの発展に大きな影響を与え、現代の振付家にもインスピレーションを与え続けています。ジョディ・スパーリングは、フラーのジャンルを現代的な視点から再構成し、フラーに触発された作品を数多く振り付けています。ステファニー・ディ・ジュースト監督の映画『ザ・[[ダンサー]]』では、フラーの人生が描かれ、その芸術と情熱が蘇っています。

ロイ・フラーは、光と影を操り、ダンスの可能性を追求した、不朽のダンサーとして、その名を歴史に刻んでいます。

参考文献
* 山本順二『ロイ・フラー：元祖モダン・ダンサーの波乱の生涯』風媒社、2018年。

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