ロバート・M・プライス

ロバート・マクネイア・プライス：宗教とクトゥルフ神話の探求者

ロバート・マクネイア・プライス (Robert McNair Price, 1954年7月7日生まれ) は、アメリカ合衆国を拠点とする神学者、作家、そしてラヴクラフト研究家です。ミシシッピ州出身で、フロリダ州キャロルシティのジョニー・コレモン神学校で教鞭をとった経歴を持ちます。同学校はニューソート系団体であるUniversal Foundation for Better Livingによって運営されていた無認可校でした。

プライスは、正統派キリスト教信仰に対し、宗教的懐疑論の立場をとることで知られています。彼は自身のことを「クリスチャン無神論者」と称することもあります。イエス・セミナーの古参メンバーであり、キリスト教史に関心を持つ人々のためのオンラインコミュニティも設立しています。かつては『Journal of Higher Criticism』という学術誌の編集も務めていました。

宗教に関する著作

プライスは、新約聖書や初期キリスト教に関する多数の著書や論文を発表しています。その著作は、聖書直解主義への批判や、キリスト教へのより懐疑的でヒューマニスティックなアプローチを特徴としています。代表的な著作に『The Incredible Shrinking Son of Man』や『Deconstructing Jesus』などがあります。これらの著作において、プライスは福音書におけるイエスの描写の信頼性や歴史性を検証し、伝統的なキリスト教解釈に疑問を投げかけています。

特に注目すべきは、歴史的イエスの概念に対する彼の批判です。プライスは、ドキュメンタリー映画『そこにいなかった神』にも出演しており、初期キリスト教徒が、ディオニューソスなどの地中海の救済者神話のモチーフをイエスの像に転用したとするキリスト神話説を支持しています。ユスティノスなどの初期教会教父が指摘した類似点を根拠に、福音書がセプトゥアギンタ、ミドラーシュ、ホメロス、エウリピデス、ヨセフスなどの文献からの借用によって形成されたと主張しています。ただし、タキトゥスなどの古代の非聖書文献がイエスの実在を示唆している点も認めています。

ラヴクラフト研究

プライスは、H・P・ラヴクラフトとそのクトゥルフ神話に関する造詣も深く、『Crypt of Cthulhu』誌やクトゥルフ神話アンソロジーシリーズの編集者として活躍しています。彼のラヴクラフト研究は、単なる作品紹介にとどまらず、ラヴクラフトの思想、テーマ、文体などを深く掘り下げた批評的な視点に満ちています。例えば、『The Cthulhu Cycle』ではクトゥルフ神話の起源をテニソンやロード・ダンセイニの作品と関連付けるなど、多角的な考察を行っています。『The Dunwich Cycle』では、『ダンウィッチの怪』におけるアーサー・マッケンの影響を指摘しています。

興味深いことに、プライスの宗教的背景は、彼のラヴクラフト神話批評にも影響を与えています。彼はラヴクラフトの神アザトースにグノーシス主義的な解釈を施し、『インスマウスの影』を一種の通過儀礼として解釈するなど、独自の視点からクトゥルフ神話を分析しています。

その他の活動

プライスは、『The Bible Geek』というラジオ番組を運営しており、リスナーからの聖書に関する質問に答えています。また、彼は『そこにいなかった神』などのドキュメンタリー映画にも出演し、自身の見解を広く発信しています。1994年からは『The Journal of Higher Criticism』の編集者も務めていました。

結論

ロバート・マクネイア・プライスは、宗教と文学、特にキリスト教とクトゥルフ神話という一見異なる領域を繋ぎ合わせる独自の視点を持つ、多才な研究者です。彼の著作は、伝統的な解釈に疑問を投げかけ、新たな視点を提示することで、読者に深い思考を促します。彼の活動は、宗教や文学に対する理解を深める上で重要な貢献と言えるでしょう。

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