ローヌワイン

ローヌワイン：多様なテロワールが生み出す南フランスの銘酒

ローヌワインは、フランス南部のローヌ渓谷で生産されるワインの総称です。アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ（AOC）の厳格な規定に基づき、多様なワインが造られています。生産量で最も多いのはコート・デュ・ローヌAOCです。

ローヌ地方の区分とワイン造りの特徴

ローヌ地方は大きく北部と南部に分かれ、それぞれ異なるワイン造りの伝統があります。

ローヌ北部: シラー種を主体とした赤ワインが中心で、白ブドウ品種を少量ブレンドすることもあります。白ワインは、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエなどの品種を使用します。
ローヌ南部: 赤、白、ロゼと多様なワインが造られます。複数のブドウ品種をブレンドすることが多く、シャトーヌフ・デュ・パプはその代表例です。

ローヌワインの歴史

ローヌ地方でのブドウ栽培は、紀元前600年頃に始まったと考えられています。シラーとヴィオニエの起源については諸説ありましたが、近年のDNA型鑑定により、シラーはローヌが原産であることが判明しています。

ローマ時代後、ワイン造りへの関心は薄れましたが、13世紀にローマ教皇がアヴィニョンに移ると、教会の需要によりワイン生産が拡大し、ローヌはワイン産地として再興しました。ローヌワインは盛んに取引され、ブルゴーニュ公がブルゴーニュ産以外のワインの輸出入を禁じたほどです。

コート・デュ・ローヌという名称は、中世の行政組織に由来します。17世紀にはワインの偽造を防ぐため、原産地を保証する法律が制定され、1737年にはワインの樽にC.D.R.の焼き印を押すことが義務付けられました。

ローヌワインの生産

ローヌは、フランスのAOCワインとしてボルドーに次ぐ生産量を誇ります。ローヌ渓谷には6000以上のブドウ畑、1837の生産者、103の組合が存在します。生産者は収穫したブドウを組合やネゴシアンに販売し、ネゴシアンはワインのブレンド、流通、輸出を行います。

年間生産量はおよそ400万ヘクトリットルで、その約半数がコート・デュ・ローヌおよびコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュです。ローヌ北部の高級AOCワインの生産量は、全体の5%未満です。

ローヌ北部：シラー主体の個性的なワイン

ローヌ北部は大陸性気候で、冬は厳しく、夏は温暖です。ミストラルと呼ばれる冷たい風の影響もあり、南部よりも冷涼な気候が特徴です。シラーはローヌ北部で認められている唯一の黒ブドウ品種で、コルナスではシラー100%のワインが義務付けられています。コート・ロティなどでは、白ブドウ品種をブレンドすることも認められています。

ローヌ北部のAOCは以下の通りです。

コート・ロティ（赤）
コンドリュー（白）
シャトー・グリエ（白）
サン・ジョセフ（赤・白）
クロース・エルミタージュ（赤・白）
エルミタージュ（赤・白）
コルナス（赤）
サン・ペレイ（白・白スパークリング）

ローヌ北部の赤ワインは、グリーンオリーブやベーコンの燻製香が感じられることがあります。

ローヌ南部：多様なブドウ品種が生み出す豊かな味わい

ローヌ南部は地中海性気候に近く、冬は温暖で夏は暑いです。旱魃が問題になることもありますが、灌漑も行われています。地形が複雑なため、ミストラルが遮られ、多様なミクロクリマが存在します。畑には大きな石が点在し、昼間に太陽熱を吸収し、夜間にブドウの木を保温する役割を果たします。

シャトーヌフ・デュ・パプは、ローヌ南部を代表するワインで、最大19種類のブドウ品種をブレンドすることができます。ジゴンダスでは、グルナッシュを主体としたワインが造られています。ローヌ南部の赤ワインでは、グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、カリニャン、サンソーなどがよく用いられ、GSMと呼ばれるブレンドが一般的です。

ローヌ南部のアペラシオンは以下の通りです。

コート・デュ・ヴィヴァレ
コート・デュ・ローヌ
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ
シャトーヌフ・デュ・パプ
グリニャン・レ・ザデマール
ヴァケラス
ラストー
ケランヌ
ジゴンダス
ヴァンソーブル
リラック
ボーム・ド・ヴニーズ
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ
タヴェル

ローヌ南部の白ワインは、複数のブドウ品種をブレンドして造られるのが一般的で、ユニ・ブラン、ルーサンヌ、マルサンヌ、ピクプール、クレレットなどが使われます。タヴェルは、優れたロゼワインの産地として知られています。

コート・デュ・ローヌ：ローヌ地方を代表する広域AOC

AOCコート・デュ・ローヌは、ローヌ地方全体に広がるAOCです。より上位のAOCに見合わないワインが用いられることが多く、ローヌ南部で生産されるものがほとんどです。ネゴシアンが様々な地域のブドウを購入し、大規模に瓶詰め、流通、輸出を行うワインにも用いられます。そのため、コート・デュ・ローヌはローヌで最も知名度が高く、生産量も多いAOCです。

ローヌワインの格付け

ローヌには、ボルドーやブルゴーニュのような公式な格付けは存在しませんが、AOCの地理的特性や命名の慣例から、以下の4つのカテゴリーに分けられます。

1. コート・デュ・ローヌ: 地域名を表示する最も一般的なAOC。
2. コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ: より限定された地域で、ブドウの熟度など、より厳しい基準を満たしたワイン。
3. 村名付きコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ: 特定の村名を表示できる、より高品質なワイン。
4. クリュ: エルミタージュやコート・ロティ、シャトーヌフ・デュ・パプなど、特に優れた16のアペラシオン。各々のクリュ名を名乗ることができます。

これらのクリュ間には公式な格付けはありませんが、市場での評価は異なり、高値で取引されるものもあります。

ローヌワインは、その多様なテロワールとブドウ品種から、幅広い味わいのワインが生まれる魅力的な産地です。

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