ロールス・ロイス RB162

ロールス・ロイス RB162ターボジェットエンジン

ロールス・ロイス RB162（Rolls-Royce RB.162）は、1960年代初頭に開発された、軽量かつシンプルな構造を持つターボジェットエンジンです。このエンジンは主に垂直離着陸機（VTOL）用に設計され、後にホーカー・シドレー トライデント旅客機の補助エンジンとしても利用されました。

設計と開発

RB162は、VTOL機向けのリフト・エンジンとして求められる信頼性と軽量化を目的に設計が進められました。開発関連の費用は英国、フランス、西ドイツによって分担され、共同開発の協定が締結されました。特に、重量を減少させるためにグラスファイバー製のコンプレッサー外皮やプラスチック製のブレードが採用されるなど、製造コストを削減する工夫も施されています。

このエンジンはVTOL機市場において非常に期待されましたが、実際の生産は少数にとどまりました。

トライデント機向けの開発

1966年、ブリティッシュ・ヨーロピアン航空（BEA）は長距離航路向けの航空機を求める中で、ボーイング727と737の組み合わせを提案しましたが、英国政府により却下されました。そこで、ホーカー・シドレー社は既存のトライデント機の航続能力を向上させた改良版「トライデント 3B」を提案しました。この新型は、従来の3基のロールス・ロイス スペイ ターボファンエンジンに加え、胴体の中心線上にRB162-86エンジンを装備しました。

この「ブースト」エンジンは、地中海地域の高温な環境下での離陸時や上昇時に使用され、巡航飛行中は停止されます。この改装に伴って垂直尾翼や水平尾翼の取り付けが変更され、RB162を搭載したトライデント 3Bは、元の機体に比べわずか5%の重量増で推力を15%向上させることに成功しました。

RB175およびRB181

RB162を元に開発されたターボファンエンジン版は「RB175」と名付けられました。また、計画された別の小型派生型「RB181」は、RB162の縮小版として約2,000ポンドの推力を発生する設計がなされましたが、実際には製造には至りませんでした。さらに、ロキード F-104のVTOLバージョンであるロキード/ショート・ブラザーズ CL-704には、このRB162エンジンが7基搭載される予定でした。

搭載機

RB162は以下の航空機に搭載されました:

• - ミラージュIII V
• - ドルニエ Do 31
• - ホーカー・シドレー トライデント 3B
• - VFW VAK 191B

要目

RB.162-86の主な仕様は以下の通りです:

• - タイプ: シングルスプール・ターボジェットエンジン
• - 全長: 1,311 mm (51.6 in)
• - 直径: 635 mm (25.0 in)
• - 乾燥重量: 127 kg (280 lb)
• - 燃料供給方式: 噴射式
• - 圧縮機: 6段軸流
• - 燃焼室: 環状
• - タービン: 1段軸流
• - 最大推力: 5,250 lb (23 kN)
• - 推力重量比: 18.75:1

このように、ロールス・ロイス RB162は、その革新的な設計により、特にVTOL機市場において重要な存在となっていました。将来的にはさらなる技術革新が期待される中、このエンジンは多くの航空機の性能向上に寄与することとなったのです。

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