ワード (駆逐艦)

USSワード (DD-139/APD-16)

USSワード (USS Ward, DD-139/APD-16) は、アメリカ海軍の駆逐艦であり、ウィックス級駆逐艦の1隻です。艦名は、南北戦争で戦死したジェームズ・H・ワード中佐にちなんで命名されました。

艦歴

真珠湾攻撃まで

ワードは、1918年5月15日にカリフォルニア州のメア・アイランド海軍造船所で起工され、同年6月1日にドロシー・ホール・ワード夫人によって進水、同年7月24日にミルトン・S・デイヴィス中佐の指揮下で就役しました。建造日数はわずか70日でした。

竣工後、ワードは訓練を経て1918年12月2日に西海岸を出発し、大西洋側に回航されました。第一次世界大戦後には、アメリカによる大西洋横断飛行計画の支援艦艇として参加し、1919年5月15日にはニューファンドランド島からアゾレス諸島への飛行を支援しました。その後、太平洋方面に移動し、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州の港町を歴訪、1919年9月13日にはシアトルでウッドロウ・ウィルソン大統領の巡閲を受けました。1920年7月17日には DD-139 の番号が割り当てられましたが、1921年7月21日に退役し保管されました。

1930年代に入り、枢軸国の台頭に対抗するため、海軍は退役艦艇の再就役を計画し、ワードもその一環として再就役することになりました。1941年1月15日、サンディエゴでハンター・ウッド・ジュニア少佐の指揮下で再就役し、2月28日に真珠湾へ向かいました。3月9日に真珠湾に到着後は、湾口の警戒任務に従事しました。

最初の攻撃

太平洋艦隊司令長官ハズバンド・キンメル大将は、ハワイ周辺のパトロールに加え、水中からの攻撃に警戒するよう指令を発しました。12月6日、ウィリアム・W・アウターブリッジ大尉が艦長に就任し、ワードは哨戒任務のため真珠湾を出港しました。12月7日午前6時40分、ワードは真珠湾周辺の航行制限区域において、日本海軍の特殊潜航艇甲標的を発見し、砲撃と爆雷攻撃を行いました。これは、日本海軍による空爆開始の少なくとも45分以上前の出来事でした。ワードは4インチ砲を命中させ、海上に重油が流出したのを確認したため、標的を撃沈したものと判断しました。この一撃は、太平洋戦争におけるアメリカ側の最初の戦闘行為として記録されました。

高速輸送艦

ファラガット級駆逐艦の竣工後、アメリカ海軍は従来型の駆逐艦を他の艦種に移す作業を進めており、ワードもピュージェット・サウンド海軍造船所で高速輸送艦への改装工事を受けました。4インチ砲と50口径機銃は撤去され、代わりに3インチ砲と40ミリ機関砲、20ミリ機銃が装備され、魚雷発射管も撤去され、上陸用舟艇（LCR）4隻が搭載されました。1943年2月6日、APD-16 として再就役し、南太平洋の戦線に赴きました。

南太平洋に到着したワードは、エスピリトゥサント島を拠点に、ガダルカナル島向けの護衛と輸送に任じました。1943年4月7日には、ツラギ島停泊中に「い号作戦」による日本機の空襲を受けましたが、日本機2機を撃墜し、深刻な被害を免れました。その後も船団護衛中に日本の潜水艦の攻撃を受けるなどの被害を受けました。12月からは、ダグラス・マッカーサー陸軍大将率いる南西太平洋軍に編入され、ニューブリテン島やニューギニアへの攻撃に参加し、フィリピン奪還作戦を支援し続けました。

最期

レイテ島の戦いが激戦を繰り広げる中、ワードは12月7日にオルモック湾への上陸作戦に参加し、部隊を上陸させました。哨戒中、日本機を発見し回避行動に移りましたが、陸軍特別攻撃隊「勤皇隊」の二式複座戦闘機「屠龍」の攻撃を受け、陸上部隊居住区とボイラー室付近に被弾、炎上し行動不能に陥りました。駆逐艦「オブライエン」が消火を試みましたが、弾薬と燃料に引火して手に負えなくなり、ワード艦長R・E・パーウェル大尉は、艦の放棄を決定しました。

「オブライエン」は、何とかして鎮火させようと手段を尽くしましたが弾薬と燃料に引火して手が付けられなくなりました。「ワード」の乗組員は火傷による負傷者はいたものの戦死者はおらず、高い士気と義務感からか「ワード」を去ることを好まなかった。しかしながら、輸送船団がオルモック湾から撤収するに伴い、「ワード」の処分が決定しました。

そして、ワードを処分する事になった「オブライエン」の艦長は何の因果か、3年前の同じ日に「ワード」の艦長として特殊潜航艇を撃沈したアウターブリッジ少佐でした。アウターブリッジ少佐は処分命令に少しためらいがあったものの、やがて「オブライエン」からの砲弾が「ワード」に命中し、11時30分に沈没しました。

ワードは、第二次世界大戦の功績により、駆逐艦時代に1個、高速輸送艦時代に8個の計9個の従軍星章を受章しました。

発見

2017年12月、レイテ沖海戦で沈没した艦艇の調査を行っていたポール・アレン率いる調査チームが、ワードの残骸を発見したと発表しました。

関連項目

ワード号事件
第二次世界大戦中のアメリカ海軍の喪失艦一覧
真珠湾攻撃
レイテ島の戦い
* 神風特別攻撃隊

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